Night Sky

かつては無邪気に笑えた人ー４

「それは聞いてた以上ですねー」

「怖がりのくせに兵士を目指す奴の指導なんてどうすればいいのやら。こんなケース日本史上初じゃないのか」

「でも対策は簡単ですよー。こういうのは飴と鞭ですよー」

「飴と鞭？」

「辛い仕事をしたらそれ相応の報酬が手に入る。人のやる気を引き出す一番の方法ですよー。某IT企業の社長も言ってたんで間違いないですー」

「……。具体的に何をすればいいんだ？」

「中３の頭の中なんてエロエロなことでいっぱい。１週間頑張ったら隊長のパンティあげるとか言えば」

「貴様ら！　今日から休憩時間にアイスクリームおごってやる！　好きなフレーバー教えろ！」

　穂花は玉玲との通話を切って、自分なりに考えた飴を提示する。第一部隊の多くの者は声をあげて喜んだ。だが信也は喜ぶ様子を見せなかった。

　こうして千代田の詰所に到着し、信也は予定通りスリーマンセルに監督一人の体制にねじ込まれる。理科雄を監督とし、太陽ともしもの回復担当の遊大と組まされた。

「あの……。逃げたりしないんで、これ外してくれませんか？」

　信也は理科雄が手綱を握る、長さ10メートルほどのクモの糸のリードを指差しつつ、首に巻かれた輪をどうにかしてほしいと嘆願する。

「私もそうしたいのは山々なんですけどねー……。隊長にダメだと言われたらねー……」

　理科雄は困った様子でそう語る。これではもしもの時に動けないのは明白。かえって危険なのではと思うというのが理科雄の本音だった。

　そしてその悪い予感はすぐに的中した。

　季節の花が咲いている花壇や緑の街路樹がある通りを歩いていると、４人の前からセーラー服姿の少女が歩いてくる。補導するかどうかはともかく、どう見てもの職務質問の対象だった。

「丼息君、手始めにあの子に職質しましょうか。一緒に行きますよ」

「え……。でも……」

「大丈夫ですって。話は私がしますんで、横で聞いてるだけでいいですよ」

　こうして理科雄につれられて、信也は花壇の真横で少女と対峙した。