Night Sky

裸踊りで大笑いー９

　節句は薄毛の頭頂部を遊大に向けると、ショッキングピンクと呼ぶにふさわしい色合いのガスを遊大に向けて出した。

「今度のはさっきとは違うぞ！　吸い込んだら最後、頭の中ピンク一色！　時場所場合問わず発情する猿になるのだ！」

　勝ち誇った顔で語る節句。遊大を包むガスが晴れるのを今か今かと待っていた。

　そして１分ほどでガスが晴れた。

　遊大は何事もなく立っていた。

「あ？　なんで……。なんで効かないんだ？」

「街中を歩いていて気づいたんだ。赤ん坊や幼稚園児、小学校低学年くらいの子供たちは、周囲で何が起きているのか分からないでいる様子だった。つまりその子達には、ガスが効かなかったんだ」

　遊大が勝ち誇った顔で説明する。

「僕の仲間の言葉を借りれば、このガスが効くのは性に関心がある人間だけ。だから僕には効かないのさ」

　その言葉は節句には衝撃だった。「お前、10歳なんだろ？　つまり小４か小５くらいだろ？」と、うろたえた様子を見せた。

「なんでその年で性に関心ねえんだよ！　俺は小２で目覚めたんだぞ！　小４なら女子のおっぱいとか気になる年だろ、普通！　てめえ去勢済みか、玉なし野郎！」

　節句が罵詈雑言を遊大にぶつける。すると節句が背後から透明な何かに襲われ、組み伏せられた。

「いい加減にしろ、変態野郎」

　節句を組み伏せた光が透明化を解除する。その顔には交番から借りたガスマスクがつけられていた。

「今ガスマスクをつけた警察がこっちに向かってる。罪を軽くしたけりゃ、ガスを吸った奴らを元に戻す方法を言え。ノーと言う度にその幸薄な頭に火傷跡ができるぞ」

　そう脅す光の指先には、集光したレーザーがいつでも撃てる状態になっている。

　マスクのせいで表情はよく分からなかったが、明らかにキレていることは遊大にも理解できた。

＊

　小麦が目を覚ますと、目の前には見覚えのある天井があった。それが自分の住んでいる寮の天井だと気づくのに数秒かかった。

　彼女は支部の寮の自分の部屋で、ベッドに仰向けにされていた。窓の景色は夜だった。