Night Sky

九十九光

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遠い夏の思い出ー3

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「2人ともそんなんじゃダメですよ。もっと子供たちと距離を縮められる話題をしなければ。あ、私、原資理科雄(ゲンシ リカオ)と申します」

 氷助と鉛をたしなめるように、メガネの男が自己紹介する。続いて理科雄は、第一部隊の面々に質問する。

「ところで皆さん、好きなアニメとかありますか?」

 唐突に兵士とは関係ない話。戸惑う一同の中、切り込んだのは文活だった。

「俺はミリタリー物の作品が好きですかね。特殊能力が出てこない、銃や戦車、戦闘ヘリなどのみで戦う作品が」

 文活のその答えに、「なるほど。君の年頃らしい回答だ」と理科雄は返した。

「ちなみに……」

 そう言って理科雄は迷彩の上着のジッパーを開け、インナーのシャツを見せる。それを見て女性陣はゾッとした。

「私は『ケミストリー・ガールズ』に出てくるアルゴンちゃん一筋ですー!」

 理科雄のインナーはお盆に乗せたジュースを倒してしまった貧乳で和服の少女のアニメイラストがプリントされたシャツだった。

「最新フィギュアが出れば布教用観賞用保存用で3つ買うのは当たり前! コラボカフェやソシャゲ、映画やスピンオフ小説も完全制覇! ですが声優の四宮美琴さんのサインを手に入れてない……。早く手に入れて私も二流から一流のファンになりたいものです!」

 ガッツリとしたアニオタ。それも女性陣が一番理解から遠い、美少女しか出てこない作品のファン。女性陣がもっとも理解しにくい系統のアニオタだった。

「皆さん子供受けが下手くそですねー。そんなんじゃ怖がるだけですよー」

 そう言い出したのは、左手の親指と人差し指で円を作り、メガネのように当てている女性兵士だった。

「私、得星玉玲(ウルセイ ダマレイ)という者ですー。よろしくお願いしますー」

 何事もなく自己紹介する間も、玉玲は指メガネをやめることなく全員の顔を見る。「その指、なんです?」と風雅が勇気を出して切り出すと、こんな答えが返ってきた。

「あ、お気になさらずー。別にこうしてると相手の思考や記憶を映像として見れるとかそういうのまったくないんでー」
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