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The Greatest Show On Earthー4
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「半世紀以上前に初版で絶版になって、100部も売れなかった本なら、なんで灰色はバッグいっぱいにそれを持ってたんだ?」
颯天がストレートな感想を述べる。
「あれだよ、あれ。先生はその野良竹輪って人に会えて、大量に売れ残ってた在庫を布教用に引き取ったとかで……」
「それじゃ経年劣化の問題や印刷された時期との矛盾が生じるだろ」
小麦の意見を颯天はバッサリ切り捨てる。
「……。本の内容はどうなんだ?」
光が話題を変えるために人陰に質問する。
「いわゆる隠謀論を絡めたオカルト話だよ。空白の10年と中露半島を交えたね」
空白の10年と中露半島。その言葉を聞いて信也が、「懐かしいなー! 小さい頃その辺のオカルト物のテレビ番組よく見たわー!」と返した。
空白の10年。それはユニゾンの発現時期とされる1950年代の歴史に関するオカルトだった。この時期は歴史の授業だと、とにかく世界各地でユニゾンによる混乱や暴動が起きたとしか説明されず、その時期の詳細な記憶を覚えている人間もいないという始末。一応1952年に、太平洋戦争の敗戦で一度解体した日本軍をユニゾン持ちを中心に組み直したということだけは明記されているが、それ以外何も分からない。そういうオカルトだった。
中露半島は、中国とロシアの国境と接し、日本とも海を跨いですぐそばにある半島のことである。固有の生態系が形成されているという理由で、開発も上陸も国際条約で禁止されている場所である。南極はいいのになぜここはダメなのかという謎が残り、多くのオカルト話を生む場所だ。
「その2つが繋がってるって話か? また突拍子もない内容だな」
大樹が本を覗き込みながら確認する。
「かいつまんで説明すると、中露半島にはかつて国があり、空白の10年の間に人類はそこで何か非人道的なことをしたということだ。誰も空白の10年や中露半島の文明について覚えてないのは、全人類の記憶を改竄するユニゾンを使ったからだと締めている」
「はっ。バカバカしい。それがそんな大層なハードカバー本で書く内容かよ」
光は濡れた髪をタオルで拭きながら笑い飛ばす。
颯天がストレートな感想を述べる。
「あれだよ、あれ。先生はその野良竹輪って人に会えて、大量に売れ残ってた在庫を布教用に引き取ったとかで……」
「それじゃ経年劣化の問題や印刷された時期との矛盾が生じるだろ」
小麦の意見を颯天はバッサリ切り捨てる。
「……。本の内容はどうなんだ?」
光が話題を変えるために人陰に質問する。
「いわゆる隠謀論を絡めたオカルト話だよ。空白の10年と中露半島を交えたね」
空白の10年と中露半島。その言葉を聞いて信也が、「懐かしいなー! 小さい頃その辺のオカルト物のテレビ番組よく見たわー!」と返した。
空白の10年。それはユニゾンの発現時期とされる1950年代の歴史に関するオカルトだった。この時期は歴史の授業だと、とにかく世界各地でユニゾンによる混乱や暴動が起きたとしか説明されず、その時期の詳細な記憶を覚えている人間もいないという始末。一応1952年に、太平洋戦争の敗戦で一度解体した日本軍をユニゾン持ちを中心に組み直したということだけは明記されているが、それ以外何も分からない。そういうオカルトだった。
中露半島は、中国とロシアの国境と接し、日本とも海を跨いですぐそばにある半島のことである。固有の生態系が形成されているという理由で、開発も上陸も国際条約で禁止されている場所である。南極はいいのになぜここはダメなのかという謎が残り、多くのオカルト話を生む場所だ。
「その2つが繋がってるって話か? また突拍子もない内容だな」
大樹が本を覗き込みながら確認する。
「かいつまんで説明すると、中露半島にはかつて国があり、空白の10年の間に人類はそこで何か非人道的なことをしたということだ。誰も空白の10年や中露半島の文明について覚えてないのは、全人類の記憶を改竄するユニゾンを使ったからだと締めている」
「はっ。バカバカしい。それがそんな大層なハードカバー本で書く内容かよ」
光は濡れた髪をタオルで拭きながら笑い飛ばす。
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