84 / 379
醜い劣等感が 汚い嫉妬が 僕にー12
しおりを挟む
ラストバトルは何も言い返せなかった。自分の存在はどうでもいいが、自分の一存で人陰を巻き込むような真似はできなかった。
「見て見てー!」
その横を遊大が飛ぶ。彼が見下ろす先には、1枚のトタン板が立っていた。
「くらえ! 夜空ちゃんドロップキーック!」
遊大はトタン板に向かって急降下する。周囲に轟音が響き、真っ二つになった板が吹き飛ぶ。
「ああー! 足を! 足をくじいてしまったー!」
その場で足を押さえて転がり回る遊大。すぐに光が駆けつけて、「大変だ。これは重症だ」と感想を述べる。
「人陰。悪いが、遊大を医務室に運ぶのを手伝ってくれ」
突然名指しされた人陰は、一瞬戸惑って返事が遅れるが、「ああ、分かった」と了承した。
光と人陰は遊大の両肩を支えて、教官棟の医務室に向かう。
坂美は考えた。医務室に行くのはかえって好都合だと。あそこなら人の目は最小限で済み、監視カメラもない。自分も肩が少し痛むとか言って残り、遊大か医務室の教官に乗り移ればいい。
遊大を支えながら坂美は思考を張り巡らす。これ以上不便な体にいてたまるかという思いも、その考えを加速させた。
その時だった。
遊大が2人の支えを振りほどき、自分の足で3歩歩いた。
「ゆ、遊大君? 足をくじいたんじゃ」
「演技に決まってるでしょ。西後さんを洗脳している誰かさん」
遊大は人陰のほうに向き直り、彼をにらみつける。
「あれだけ探りを入れたが、一向に諦めないからな。強行策に出させてもらった」
光も遊大の横に立ち、人陰をにらみつける。
「……! 俺が洗脳されてるって? それは気のせいじゃ」
「こないだの調整日にどこ出かけた。嘘を言っても周辺の監視カメラを調べればすぐにバレるぜ。なんにせよお前、詰めが甘いぜ。一度革命隊の侵入を許した施設だから自分でもいけると思ったか?」
人陰は何も言い返せず、ただ黙って2人の目を交互に見ることしかできなかった。
「あなたの口から言えないなら、ラストバトルを出してください。何があったのか、あれに聞きます。」
「見て見てー!」
その横を遊大が飛ぶ。彼が見下ろす先には、1枚のトタン板が立っていた。
「くらえ! 夜空ちゃんドロップキーック!」
遊大はトタン板に向かって急降下する。周囲に轟音が響き、真っ二つになった板が吹き飛ぶ。
「ああー! 足を! 足をくじいてしまったー!」
その場で足を押さえて転がり回る遊大。すぐに光が駆けつけて、「大変だ。これは重症だ」と感想を述べる。
「人陰。悪いが、遊大を医務室に運ぶのを手伝ってくれ」
突然名指しされた人陰は、一瞬戸惑って返事が遅れるが、「ああ、分かった」と了承した。
光と人陰は遊大の両肩を支えて、教官棟の医務室に向かう。
坂美は考えた。医務室に行くのはかえって好都合だと。あそこなら人の目は最小限で済み、監視カメラもない。自分も肩が少し痛むとか言って残り、遊大か医務室の教官に乗り移ればいい。
遊大を支えながら坂美は思考を張り巡らす。これ以上不便な体にいてたまるかという思いも、その考えを加速させた。
その時だった。
遊大が2人の支えを振りほどき、自分の足で3歩歩いた。
「ゆ、遊大君? 足をくじいたんじゃ」
「演技に決まってるでしょ。西後さんを洗脳している誰かさん」
遊大は人陰のほうに向き直り、彼をにらみつける。
「あれだけ探りを入れたが、一向に諦めないからな。強行策に出させてもらった」
光も遊大の横に立ち、人陰をにらみつける。
「……! 俺が洗脳されてるって? それは気のせいじゃ」
「こないだの調整日にどこ出かけた。嘘を言っても周辺の監視カメラを調べればすぐにバレるぜ。なんにせよお前、詰めが甘いぜ。一度革命隊の侵入を許した施設だから自分でもいけると思ったか?」
人陰は何も言い返せず、ただ黙って2人の目を交互に見ることしかできなかった。
「あなたの口から言えないなら、ラストバトルを出してください。何があったのか、あれに聞きます。」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
異能力と妖と
彩茸
ファンタジー
妖、そして異能力と呼ばれるものが存在する世界。多くの妖は悪事を働き、異能力を持つ一部の人間・・・異能力者は妖を退治する。
そんな異能力者の集う学園に、一人の少年が入学した。少年の名は・・・山霧 静也。
※スマホの方は文字サイズ小の縦書き、PCの方は文字サイズ中の横書きでの閲覧をお勧め致します
スペースウォーリャーズ
大和煮の甘辛炒め
SF
(仮)
巨大な戦闘ロボ、アーマードスーツに乗って宇宙を駆けるゲーム『スペースウォーリャーズ』。
平凡な男子大学生として生きてきた花鷺(はなさぎ)誠也(せいや)は友人から誘われて『スペースウォーリャーズ』の世界に脚を踏み入れる。
花鷺はプレイヤーネーム《ハナサギ》として数々の戦闘をこなし、秘められた才能を開花させていく。
仲間たちと共に闘うハナサギは『スペースウォーリャーズ』最強のプレイヤーに気に入られたり、チーターと戦ったり運営から目をつけられたりと、とにかく目まぐるしい『スペースウォーリャーズ』ライフを送ることになる。
数々の戦いを経験してきたハナサギ達はゲーム内に存在するS(シンギュラリティ)の存在へと近づいていく。
シンギュラリティとはなんなのか?
何故そんな要素が実装されているのか?
その謎が明かされる時、『スペースウォーリャーズ』は大きな転換を迎えることになる。
※更新はできるだけ早くします。
⭐️⭐️⭐️は場面転換です。
一人称と三人称が切り替わるところがありますが、ハナサギ視点だけが一人称です。
追加6月11日
一応完結させましたが、また連載再開します。
追加6月30日
連載再開しました。
主人公が変わっています
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
妄想聖書
丸我利伊太
SF
僕の思考に浮かぶとめどない宇宙、神の存在を
思うがままに書き綴ってゆきたいと思います。
この世界は何故、存在しているのでしょう、
旧約聖書、新約聖書、
僕は、第三の聖書をつたないけれど、創造したいのです。
リアゼノン・オンライン ~プレイ中のゲームから異世界に連行された俺は、多くの人に学ぶ中で最強を目指す。現在地球は大変だそうです
八ッ坂千鶴
SF
レベルアップするとステータスの数値が減少するデスゲーム
〈リアゼノン・オンライン〉
そんなゲームにログインしたのは、要領が悪い高校1年生宮鳥亜蓮十六歳。
ひょんなことから攻略ギルド【アーサーラウンダー】へ参加することになり、ギルド団長ルグア/巣籠明理に恋をしてしまう。
第十層で離れ離れになっても、両思いし続け、ルグアから団長の座をもらったアレン。
スランプになりながらも、仲間を引っ張って行こうとしていたが、それは突然崩されてしまった。
アレンはルーアという謎の人物によって、異世界【アルヴェリア】へと誘拐されて行方不明に……。
それを聞きつけてきた明理は、アレンを知っているメンバーと共に、異世界から救出するため旅に出る。
しかし、複数の世界が混じり合い、地球が破滅の一途に進んでいたとは、この時誰も知らなかった。
たった一人を除いて……。
※なろう版と同じにしている最中なので、数字表記や記号表記が異なる場合があります
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる