Night Sky

九十九光

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醜い劣等感が 汚い嫉妬が 僕にー11

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「人陰が缶コーヒーでもおごってくれるなら踊ってもいいかな」

 手を挙げたのは光だった。人陰が「え?」と返すと、光は彼に詰め寄り、こう迫った。

「なんだ? 1200円のステーキを自分用に買う金はあるのに、自販機で150円もしない缶コーヒーを同期におごる金はないのか?」

「い、いや、言い出しっぺは俺じゃないし」

「陽キャならOKだよな? Shall we dance?」

「あ、I would love to」

 坂美は結局断れなかった。遊大と光は朝食の準備をすると言って厨房の奥に消えた。

 坂美は考えた。あの2人は間違いなく人陰の中身が変わっていることに気づいている。こちらの重大なミスを誘うために、わざとあんなことをしているのだと。そうだとすると、一刻も早く別の人間に乗り移ることが最優先事項。乗っ取りは人質を一人取るのと同義なので、その後の人陰への口封じはそこまで難しくない。問題は人選だ。今度は元の状態と望む状態に大きな乖離が起きない人間に乗り移り、正体に気づいている遊大と光から逃げる必要がある。そうなると誰が一番望ましいか。

 そんなことを考えているうちに、その日の午前の訓練が始まった。場所は第6グラウンド。廃材の山を的や障害にしてユニゾンの訓練をするのが目的だった。

「出てこい、ラストバトル!」

 人陰は影を立体化させ、ラストバトルを呼び出す。ラストバトルは特に何かを訴えることはせず、人陰の命令通り彼を抱えて空中へと体を伸ばした。

 伸縮自在なラストバトルは、必ず影が地面についてなければいけないという制約はあるが、こうして体を伸ばして人陰を抱えて移動することもできるのだ。

「そろそろこの体を出ていこうと思う」

 人陰の体を借りた坂美はラストバトルに小声で打ち明けた。

「……! モウ教官ニ移ル算段ガツイタノカ」

「いや、理想と現実ができるだけ離れていない別の訓練生に乗り移る。遊大と光がこちらの存在に気づき始めているらしいからな。一度撹乱をする」

「……! ジャア相棒ハ」

「無論、無事に返すさ。そういう約束だからね。ただし、君共々私の存在は黙っててもらうよ。次に乗っ取る奴を人質にしてね」
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