Night Sky

九十九光

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醜い劣等感が 汚い嫉妬が 僕にー8

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「先生、ちょっといいですか」

 坂美はさっそくその日の最後の授業、古文の座学の終了後に、古文担当にして第二部隊の教官である、細田神介(サイダ シンスケ)に声をかけた。

「おう、どうしたんだ? 西後」

 筋骨隆々な大男である神介が振り返る。「今日の授業でいくつか分からないところがあったんで、個別に聞きたいんですけど」と人陰が言うと、神介に異変が起こった。

 彼は廊下の白い天井を見上げ、溢れる涙をこらえきれなかった。

「細田先生?」

「俺は嬉しいぞ、西後」

 神介は人陰に抱きつき、溢れる思いをぶちまけた。

「最近の10代は消極的な奴が多い。俺は常日頃、授業中でも授業後でも遠慮せず質問や悩みをぶつけてくれって言っている。だがこの支部に配属されてから、そんな経験一度もなかった。今日が初めてだった。しかもそれが、内向的な性格だったお前。だから嬉しいんだ……。俺の思いが通じたことが嬉しいんだぁぁぁぁぁ!」

 ついに感情を抑えきれなくなった神介が号泣する。寮に戻ろうとした第一部隊の一同が驚いた様子で振り返る。

「それで……、つきましては……、仮眠室とかで二人きりで」

「第一部隊のお前ら! 西後が俺に質問してくれた! お前らはどうだ! 今夜は悩みや質問を徹夜で聞いてやるぞぉぉぉぉぉ!」

 廊下に神介の声が響き渡る。遊大がそれに唖然としていると、彼の背中を後ろから叩く人物がいた。

 照州光だった。

「遊大、ちょっといいか」

 言われるまま人気のない踊り場に案内された遊大。光は単刀直入にこう切り出した。

「人陰の奴、明らかにおかしい。おそらく昨日の外出先で精神干渉系のユニゾンの影響を受けたんだ」

「僕もそれ、考えました。どんなユニゾンにかかったんでしょう?」

「性格を変えるだけのユニゾンにかかったってケースはまずないだろうな。アイツ、普段はビビりだから、100円で陽キャにしてもらえると言われてもその先を怖がって断るだろう」

 光は断言した。この人の中で西後さんはどんな扱いなんだと思いながら、遊大は話を進める。
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