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九十九光

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仇花すっかり舞い散る季節ー12

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 小麦は植物の小麦を、糸美は指先からクモの糸を出し、暴れる園児たちを絡めて動きを封じる。残りの子供たちも、王子が強化プラスチックの壁で囲い、逃げるのを防止した。

「な、なんでアイツらまで……!」

「君のユニゾンは、周囲の人に格下だと確信した相手にいじめをさせるユニゾン。それは言い換えると、周囲の人は自分が格上だと確信した相手にいじめられるのに抵抗できないっていうユニゾンだということ」

 遊大は一人取り残された和紋の前に立ち、説明を始める。

「闇雲にユニゾンを振り回すだけの幼稚園児なら、ユニゾンさえ使えれば格上なんて思わないんだよ」

「……! でもこれは重大な問題だ! 子供をユニゾンで押さえつけるなんて!」

「無論、ただ押さえつけるだけじゃない。そうですよね、皆さん」

 遊大は後方にいる先輩3人に視線を向ける。

「分かってますよ、夜空君」

「お楽しみはこれからだぜ、ガキども!」

 そう言うと王子は精製したビニールを波のように動かし、運動場中央付近にいた子供たちを端へと動かす。そして強化プラスチックで巨大な建造物を作り出した。そこには一部、糸美が作り出した、鉄より丈夫で柔軟性もあるクモの縦糸によるネットの足場やトンネルなども作られる。

 ものの1分ほどで建築が終わると、拘束されていた子供たちは即時解放される。そんな彼彼女らの前には、今まで見たことがない物が出来上がっていた。

「ユニゾン100%の、全長10メートルの巨大アスレチック! 君たちにプレゼントだぜ!」

 そんなものを見せられた子供たちの目が、輝かないわけがなかった。

 名家の出身者ばかりのこの幼稚園の子供たちは、このような遊具のある公園に行ったことがなかった。入園先にはブランコのひとつもない。遊具というものにふれること自体が、子供たちにとっては初めての体験だったのだ。

 園児たちは我先にとアスレチックに群がっていった。人をいじめることなど忘れるくらいに夢中になった。

「そんな……! あんなプラスチックの塊に僕のユニゾンが負けるわけが……!」

 和紋が地上から遊具を見て唖然としていると、遊大が彼を後ろから抱き抱えて飛んだ。
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