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九十九光

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仇花すっかり舞い散る季節ー2

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「私もお手伝いさせてください。子供、好きですし」

 王子につられるように糸美も手を挙げた。

「みんなやる気満々だね。私はどうしようかな」

 一人迷っている様子の小麦。そこに花子が餌を出す。

「触れ合いタイムは午前中だけで、午後からは菓子屋横丁観光する予定なんだけどな~」

「行きます」

「とんでもなく現金だな!」

 信也が全霊で突っ込んだ。



 そして幼稚園訪問の日。軍服姿の遊大、王子、糸美、小麦、花子は、花子の運転で川越の幼稚園にやって来た。そこで訓練生たちは幼稚園の外装を見て愕然とする。

 幼稚園は大学のキャンパスかと思うほど敷地が広く、建物も巨大、運動場もサッカーグラウンドほどあることが、外から見てもよく分かった。

「あの……。本当にここなんですか?」

 小麦が質問すると、花子がニヤニヤしながら答えた。

「ここは聖マリア大日本幼稚園関東支部。日本中の一流企業や政治家が出資して作った財団法人が運営する、金持ちの子供のための幼稚園。未来の兵士候補生や政治家の卵、グローバル企業の重役候補たちが通ってる。そこにテレビも来るんだ。くれぐれも、問題を起こさないように」

 花子は路肩に車を止めて、幼稚園に電話する。

「もしもし。阿玉ですけど。今お宅の前に来たんですけど、どっから入ればいいですかね?」

 一同、先行きの不安を感じた。

 車は幼稚園の裏手にある駐車場に駐車した。駐車場には確かに埼玉のローカルテレビ局のロゴが入ったバンが停まっており、今日が特別な日であることが目に見えて分かった。

「皆さん、お待ちしてました」

 眼鏡をかけた中年くらいの女性の園長が一同を出迎える。

「引率の阿玉です。んで、このちっこいのがご所望の」

「夜空遊大君ですよね。テレビで見ましたよ。今日はよろしくお願いしますね」

 園長は遊大の両手を握る。遊大は「こちらこそ、よろしくお願いします」と、少し戸惑いがちに返した。

「んで、残りのおまけが」

「石脂王子です!」

「八脚糸美です」

「秋晴小麦です」

 花子のおまけという言葉に少し傷つきながらも、3人は自己紹介をした。
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