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僕らは泥を這い蹲るものー5
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雨はそのまま天井の上、つまりスタート地点の体育館に戻った。
「ずいぶんと苦戦しとるようじゃのう。第一部隊での機動力最強の男」
どこかからパイプ椅子を持ち出し、そこに腰かけている佰年が雨に話しかける。
「夜空の奴、実砂並みにめちゃくちゃやってくる! ついこないだまで攻撃力のなさにウジウジしてた奴の行動じゃない!」
雨が佰年に愚痴をこぼすと、彼女はニヤニヤしながらこうアドバイスした。
「アイツを破天荒だと思ったのなら、すぐにここから出るべきじゃと思うがな」
佰年がそう助言したのもつかの間、雨がいるすぐ近くの足場の様子がおかしくなった。フローリングが外れ、組み合わさり、ひとつの木の塊になったのだ。その範囲は2メートルほどの円形だった。
すべてを察した雨が体育館を出て登り階段のほうへと向かう。その頃には遊大は、天井及び床を材料別まで戻して作った穴から飛び出してきた。
雨は全速力で泳ぎながら、どこに逃げるべきか考えていた。
分厚い壁や床の中に潜伏し続ける作戦は不可能。潜っている間呼吸ができないからだ。かといって先ほどのような障害物だらけの環境では、それを材料別まで戻して強引に広いスペースを確保される。そうなれば打つ手はひとつだった。
雨はC棟3階の廊下や階段を泳ぎ回る。物によって狭くなっている環境がダメなら、建物の構造で狭くなっている廊下や階段をメインに逃げ続ければいい。廊下の幅はどう考えても2メートルもない。そこを素早く飛んで追いかけるなど不可能。そういう作戦だった。
しかし遊大は諦めが悪い。
雨がふと後ろを振り返ると、体を横向きにして、翼が縦になるようにして追いかけていた。
ユニゾン共生社会で、平気で身長が2メートルオーバーの人間が増えているこの社会では、床から天井の高さが2.5メートルほどあるのが当たり前。廊下の幅は問題ではなかった。
「鳥の飛び方超越してんだろ!」
戦闘機のアクロバット飛行のような飛び方をする遊大に雨が怯む。そこに遊大が右の拳を追い越し様にぶつけた。
「ずいぶんと苦戦しとるようじゃのう。第一部隊での機動力最強の男」
どこかからパイプ椅子を持ち出し、そこに腰かけている佰年が雨に話しかける。
「夜空の奴、実砂並みにめちゃくちゃやってくる! ついこないだまで攻撃力のなさにウジウジしてた奴の行動じゃない!」
雨が佰年に愚痴をこぼすと、彼女はニヤニヤしながらこうアドバイスした。
「アイツを破天荒だと思ったのなら、すぐにここから出るべきじゃと思うがな」
佰年がそう助言したのもつかの間、雨がいるすぐ近くの足場の様子がおかしくなった。フローリングが外れ、組み合わさり、ひとつの木の塊になったのだ。その範囲は2メートルほどの円形だった。
すべてを察した雨が体育館を出て登り階段のほうへと向かう。その頃には遊大は、天井及び床を材料別まで戻して作った穴から飛び出してきた。
雨は全速力で泳ぎながら、どこに逃げるべきか考えていた。
分厚い壁や床の中に潜伏し続ける作戦は不可能。潜っている間呼吸ができないからだ。かといって先ほどのような障害物だらけの環境では、それを材料別まで戻して強引に広いスペースを確保される。そうなれば打つ手はひとつだった。
雨はC棟3階の廊下や階段を泳ぎ回る。物によって狭くなっている環境がダメなら、建物の構造で狭くなっている廊下や階段をメインに逃げ続ければいい。廊下の幅はどう考えても2メートルもない。そこを素早く飛んで追いかけるなど不可能。そういう作戦だった。
しかし遊大は諦めが悪い。
雨がふと後ろを振り返ると、体を横向きにして、翼が縦になるようにして追いかけていた。
ユニゾン共生社会で、平気で身長が2メートルオーバーの人間が増えているこの社会では、床から天井の高さが2.5メートルほどあるのが当たり前。廊下の幅は問題ではなかった。
「鳥の飛び方超越してんだろ!」
戦闘機のアクロバット飛行のような飛び方をする遊大に雨が怯む。そこに遊大が右の拳を追い越し様にぶつけた。
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