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僕らは泥を這い蹲るものー3
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「青の6番の人、誰ですか?」
遊大がペアを探す。そこに現れたのは、雨だった。
「青の6番、俺だった」
雨は自分の割り箸を遊大に見せる。
「全身全霊で逃げさせてもらう。年下だからって容赦はしないよ。成績がかかってるんだから」
佰年のもとでナイフを受け取りに行きながら、雨は遊大に宣戦布告した。
こうして一同は、鬼が体育館の舞台側、ナイフ持ちが出口側に整列し、訓練開始の合図を待つ。
「では特別訓練……」
それを横から見る佰年は、突然サングラスをかけた。遊大がそれを不思議がった次の瞬間には、訓練開始の笛が鳴った。
それと同時に体育館全体がまばゆい閃光に包まれる。5番のナイフ持ち、光の仕業だった。
光のユニゾンは光に関するほとんどの現象を操作できる。周囲の光の乱反射で開幕早々目眩ましをしたのだ。そのためのサングラスだったのだ。
光が元通りになった時には、すでにナイフ持ちは全員どこかに行ってしまった。光の不意打ちに便乗したのだ。
まずいと察した遊大は翼を出し、すぐに体育館を出る。
そんな彼の様子を見て佰年は、この訓練、遊大が圧倒的に不利だったと反省した。
この関東支部なのだが、単純な敷地面積は東京ドーム約10個分。渡り廊下や地下通路で各建物は繋がっているうえ、元々あった丘や山の形状をそのまま残し、その上や内部に設備を建てている。例えば、A棟2階から延びる渡り廊下を歩いた先は、B棟3階の廊下に繋がっているといった複雑な構造になっている。入隊して1ヶ月ほどしか経っていない遊大には、この関東支部は迷宮に近い。そのうえ彼の相手は壁や床などを泳ぐように移動できるユニゾン。地の利は雨にあるのだ。
さて、夜空はどう出るか。
佰年がノートパソコンの画面を確認して、遊大の動きを確認する。
それを見て彼女は驚いた。遊大は迷わず体育館下の空間に向かって飛んでいるのだ。
遊大は雨の立場になって考えた。自分があのユニゾンで、あの状況なら、迷わず真下の空間に逃げ込む。そうなれば行動に迷いが生じるはずはなかった。
遊大がペアを探す。そこに現れたのは、雨だった。
「青の6番、俺だった」
雨は自分の割り箸を遊大に見せる。
「全身全霊で逃げさせてもらう。年下だからって容赦はしないよ。成績がかかってるんだから」
佰年のもとでナイフを受け取りに行きながら、雨は遊大に宣戦布告した。
こうして一同は、鬼が体育館の舞台側、ナイフ持ちが出口側に整列し、訓練開始の合図を待つ。
「では特別訓練……」
それを横から見る佰年は、突然サングラスをかけた。遊大がそれを不思議がった次の瞬間には、訓練開始の笛が鳴った。
それと同時に体育館全体がまばゆい閃光に包まれる。5番のナイフ持ち、光の仕業だった。
光のユニゾンは光に関するほとんどの現象を操作できる。周囲の光の乱反射で開幕早々目眩ましをしたのだ。そのためのサングラスだったのだ。
光が元通りになった時には、すでにナイフ持ちは全員どこかに行ってしまった。光の不意打ちに便乗したのだ。
まずいと察した遊大は翼を出し、すぐに体育館を出る。
そんな彼の様子を見て佰年は、この訓練、遊大が圧倒的に不利だったと反省した。
この関東支部なのだが、単純な敷地面積は東京ドーム約10個分。渡り廊下や地下通路で各建物は繋がっているうえ、元々あった丘や山の形状をそのまま残し、その上や内部に設備を建てている。例えば、A棟2階から延びる渡り廊下を歩いた先は、B棟3階の廊下に繋がっているといった複雑な構造になっている。入隊して1ヶ月ほどしか経っていない遊大には、この関東支部は迷宮に近い。そのうえ彼の相手は壁や床などを泳ぐように移動できるユニゾン。地の利は雨にあるのだ。
さて、夜空はどう出るか。
佰年がノートパソコンの画面を確認して、遊大の動きを確認する。
それを見て彼女は驚いた。遊大は迷わず体育館下の空間に向かって飛んでいるのだ。
遊大は雨の立場になって考えた。自分があのユニゾンで、あの状況なら、迷わず真下の空間に逃げ込む。そうなれば行動に迷いが生じるはずはなかった。
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