Night Sky

昔の自分が見たら褒めてくれるかなー７

「１人の人間の脳です」

　仁以外の特級兵士４人全員が言葉を失った。

「……。誰のものかは分かっているのか」

　穂花が恐る恐る尋ねる。咲は画面を切り替え、淡々と説明した。

「DNA検査の結果、個人を特定することができました。脳の素体は福島県で５年前に行方不明になった、嘘味粒粒(ウソアジ　ツブツブ)、当時32歳の会社員です。登録されているユニゾン名はフィクサー。口から自身の1/2サイズの分身を排出するユニゾンです。しかし、嘘味氏のユニゾンは、同時に出せる分身の数は１体までと決まっていました。自我の喪失だけでなく、ユニゾンそのものにも強化がかかっていたと考えるべきです」

　そう説明する咲に、ナナツが質問する。その表情は、今まで見せたことがないほど険悪なものだった。

「その情報、無論誰にも公表しませんよね。国民全体にはもちろん、討伐した訓練生にも、嘘味さんの親族にも」

「だが商学君。革命隊がロイドの素体目当てで一般人を拉致している可能性が高い以上、国民に啓発をする必要は」

「できるわけないでしょ！」

　正義の言葉を遮りながら、ナナツが机を叩く。

「なんの罪もない一般人を殺したと訓練生が知ったら！　自分の家族がテロリストに改造人間にされたって知ったら！　立ち直れないのが普通でしょ！　そんな残酷なこと、やっていいわけがない！」

　しばらくの静寂が室内を包む。均衡を破ったのは咲だった。

「無論、公表はしません。ただ、全国の行方不明者のリストを作成、そのユニゾンを調べあげる作業は行います。万が一に備えて」

「だがもし、これからロイドを見かけたら、破壊してもいいんだな。どっちみちあれは死んだ人間を機械で改造しただけの存在なんだから」

　穂花の確認に、咲は「構いません」とだけ答えた。

「おい、灰色」

　それまで黙って話を聞いていた太郎が、仁に声をかける。仁が太郎のほうに視線を向けると、太郎は話の続きをした。

「早急に連中の信頼を勝ち取れ。そして奴らのあらゆる情報を丸裸にしろ」

「そんなに急いでどうするんです？」

　仁のその質問に、太郎はこう答えた。

「１匹残らず叩き潰す」