Night Sky

九十九光

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私がいなきゃダメだからー5

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「……。すまん。やり過ぎた」

「夜空君、立てるようになったら受け身の練習からしましょうか」

 その後、昼休憩と午後の座学を終えて、この日の訓練は終わった。寮に戻った一同は夕食の準備をしたり湯船にお湯を張ったりしていた。

「ねーねー、糸美ちゃん」

 教官に提出する記録をパソコンでまとめていた糸美に、小麦が話しかける。

「今日の座学で分からない部分がいくつかあったんだけど……、それが終わったらでいいから教えてくれる?」

「私でいいんですか?」

「勉強ができる糸美ちゃんにしか頼めないよ~。夜の自由時間に教官が寮にいるなんてまずないし~」

 それを聞いた糸美は顔を赤くしながらも、どこか嬉しそうな雰囲気を出していた。

「いいですとも! 記録提出して夕食が終わったら復習をしましょう! 他の皆さんもどうですか!? 分からないところがあれば遠慮なくおっしゃってください!」

 糸美が興奮して全体に伝える。おだてられて喜ぶのはやはり素と見えた、と一部のメンバーは考えた。

「糸美、それよりあれはいいのか?」

 窓から外の様子を見ていた雨が、糸美に声をかける。なんのことかと糸美も外を見る。

 そこには木に枕を縛りつけ、そこに向かって拳を打ち続ける遊大がいた。

「どこにもいないなと思って探してみたら、なんかやってたんだ。パンチの練習か?」

 雨の言葉を途中まで聞いて、糸美は外に出た。それに対して遊大はすぐには気づかず、ひたすらパンチの練習を続けていた。

「やり過ぎはかえって毒ですよ」

 糸美のその言葉で、遊大はようやく彼女の存在に気づいた。

「でも……。僕はまだ……」

「そんなに慌てなくても、力はそのうちつきますから。それとも今日、私何か焚きつけるようなこと言っちゃいましたか?」

 糸美が赤くなった遊大の手を心配しながら確認する。遊大は少し考えるように黙り込んでから、こう答えた。
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