Night Sky

九十九光

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心が悴む前にー9

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「俺の両親は兵士だった。俺が兵士向きのユニゾン持ちだと分かると、物心つく前から俺に英才教育をしてきた。兵士に必要不可欠なあらゆる要素を叩き込まれた。俺が心が折れそうになると、二人はこう言ってきた。お前は選ばれた人間だ、あなたは誰よりも強い兵士になる権利がある、って。でも中等部に入って、段々思い知らされたよ。俺より優秀な奴はゴロゴロいるって。俺は人並み以上の努力と苦痛に耐えて、ようやく半人前だって。挙げ句の果てには俺ができなかった飛び級をお前がやって、配属早々世間の注目の的。羽田空港では俺ができなかった警官隊の救出をお前は一人でやって、今回もお前がいなきゃ俺は死んでた。俺は最強にならなきゃいけないのに……!」

 颯天が膝から崩れ落ちる。

「俺はいつになったら一人前になれるんだ!」

 颯天は泣いてはいなかった。だが悔しさは誰が見ても分かるレベルでにじみ出ていた。

 遊大は颯天と視線を合わせ、語り出した。

「おばあちゃんが言ってました。この世の人間はみんな半人前。違う個性を持つ人同士が力を合わせてやっと一人前だって」

 颯天が顔を上げる。遊大が続ける。

「自転車は自動車より速度が出ないから自動車の下位互換ですか? 狭い道を通る時には自動車は自転車の下位互換になりますよね。だから自転車と自動車を組み合わせれば、どんな道でも走れる。僕らが力を合わせれば、きっとあのロボットも倒せる。まあ、僕自身には策はないんですけど」

 そこまで遊大が語った時だった。

 轟音がしたかと思うと、花子が本体のロボットに吹き飛ばされ、近くのスーパーマーケットに突っ込んだ。

「まずい! 阿玉先生がやられた!」

「落ち着け。あの女は人より頑丈にできてる。あの程度じゃくたばらねえよ。それより」

 颯天が立ち上がってロボットを見上げる。

「俺らが力を合わせれば、あれをぶちのめせるって言ったな」

「え、まあ、はい」

 急に落ち着きを取り戻した颯天に、遊大は困惑する。颯天は遊大に向き直り、こう言った。

「策ならある」
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