Night Sky

窓を見たら外は春先ー５

「所属と目的を言え！　貴様の目的はなんだ！」

　立ち上がった大樹が男に叫ぶ。男も支部内全体に伝えるかのような声でこう返した。

「俺はユニゾン革命隊の戦士！　ただただ暴れるだけだぁ！」

　今度は男が大樹に向かって突進する。大樹はそれを正面から受け止める。最初は２本の腕で受けたが、それでも後方に押される。慌ててもう２本の腕も防衛に追加し、男はなんとか止まった。

「なぜこんなことをする！　薬を盛られた時点で貴様は組織に捨て駒にされている！　寿命を削ってまでここで戦うことになんの意味がある！」

　大樹が男に問う。男も声を荒げて言い返した。

「俺は生まれてからずっと、この頭のキノコのせいでいじめられてきた！　なんとか菌だの病気が移るだの！　そのせいで小４で不登校になって大人になっても引きこもった！　仕事だってろくにしたことねえ！　でも革命隊は、シャルル総督は違った！　俺のユニゾンを素晴らしいと言ってくれた！　俺にしかできない仕事があると言ってくれた！　俺はあの人の理想のためなら死ねる！　てめえらみてえな、恵まれた環境と社会の明るい部分しか知らない奴には分からねえだろうよぉ！」

　男の言葉に、一瞬大樹の力が緩まる。しかしすぐに緑色をした２本の右腕に力を込め、男の頬と脇腹を殴りつけた。

「何が恵まれた環境だ！　社会の明るい部分しか知らないだ！」

　その後も大樹は３つの目でにらみつけ、男を殴り続けながら語り続ける。

「差別！　偏見！　いじめ！　不平等！　挫折！　どんな人間だろうとそれを味あわない人間はいないんだ！　ましてや人間の選別が当たり前で、異形型のユニゾン持ちが差別される世の中！　そんな話はありふれている！　大切なのはそれらをはね除ける勇気！　自分の力を見極める努力！　それを正しいことに使う判断！　貴様の過去がどんなものだろうと！　今多くの人々を危険にさらしていい理由にはならないんだぁ！」

　大樹の拳が男の頬をとらえる。男はきりもり回転しながらキノコまみれのグラウンドを転がり、林の木の１本に盛大に背中をぶつけ、動かなくなった。