カゴの中のツバサ

九十九光

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#15ー2

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に囲まれており、コンクリートで固められた敷地の面積は、すぐそばのアパートの面積より一回り広かった。自動車教習所の車から角を削ったような、滑らかな形状の車が二台止められており、四角形の屋根をした白い三階建ての住宅。駅からのアクセスの悪さを、広い土地で相殺している物件だった。
 周辺の景色とは少しミスマッチなほどお金のかかった空間に、ツバサは少し委縮して背中を丸くしてしまう。カナコはそんなツバサの手を左手で握ったまま、慣れた手つきで家のカギを開けた。
「さ、入って。」
 ツバサはカナコに促されるまま、スニーカーを玄関で脱ぎ、奥のリビングへと進んでいく。玄関に入ってすぐのところに、宅配便で届けられた小さな段ボール箱があかれていた。ツバサの実家なら、こんなものがあった時点で玄関は足の踏み場のない空間になってしまうだろう。しかしカナコの家では、その段ボールが邪魔にならずに、二人同時に靴を脱いで家に上がることができた。明らかに自分の家とは比べ物にならないくらいお金がかかっていることが、ツバサには想像できた。二階と三階が吹き抜けになっているリビングも、カナコの父親の富の象徴になっていた。他人の家に入った経験自体がないツバサは、ここまで広い空間に案内されただけで緊張してしまう。
「晩ご飯作るから少し待ってて。そこのソファに座って、テレビでも見ててよ。」
 そんなツバサを見かねてか、ダイニングにたたまれていたエプロンを手に取りながら、カナコが気さくに声をかける。他人に預けられた飼い猫の気持ちになっているツバサは、その指示に従って黒いソファに腰を下ろした。
 ソファの前には、一つのガラステーブルが置かれていた。黒いプラスチック製のテレビのリモコン、使った形跡のないガラスの灰皿、女子高生向けのファッション雑誌など、ほんの一部だが、カナコの一人暮らしの様子がうかがえるようなものが、その上には置かれていた。
 ツバサはリモコンを手に取り、赤いボタンを押して電源を入れると、10番のチャンネルが付いた。どこかで見たことのあるタレントが、水が抜かれた池から大量の亀を無造作にカゴに放り込んでいく映像が映し出された。
「はい、どうぞ。」
 カナコがツバサの後ろから現れ、ガラスのコップに入ったカルピスを差し出した。
「あ……。ありがと……。」
「ツバサ君、元気ないねえ……。もうちょっと笑いなよ。せっかく初めて二人きりで一晩過
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