カゴの中のツバサ

九十九光

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♯11ー7

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 そしてその翌日、全五教科を二日に分けて行う期末テストの初日が行われた。この日の科目は、国語、算数、英語の三科目。行われたテストは、全科目の答案と今期の通知表とともにまとめて返却される予定であった。
 しかしツバサはその日の放課後にアイダによって職員室へと呼び出され、今日行った三科目の答案をその場で返却されることになった。
「一体どうしたんだ! いくらなんでもお前らしくないぞ!」
 今回のアイダは、怒りではなく驚きと疑問で声を張り上げていた。ツバサはそれを、やはり何を考えているのか分からない無表情で、聞いているのかも分からない様子で椅子に座っていた。
 ツバサはこの日の三科目の答案すべてを、解答どころか名前すら書かない、消しゴムで消した跡もまるで見られない、配った時のままの完全な白紙の状態で提出したのだ。
 この学校始まって以来の異常な事態には、他学年を担当するほかの教員たちも物珍し気な顔をして視線を送っていた。そんな複数の好奇の目にさらされながら、ツバサはアイダの顔を見事なポーカーフェイスで見上げている。つい先日の帰り際にカナコに見せた笑顔とは百八十度違った表情だった。アイダもほかの教師たちも、ここまで自分の気持ちを表に出さない小学生を初めて目にした。
 そんなツバサに少し気圧されそうになりながらも、アイダはどうにかツバサから話を聞きだそうと試みる。
「気持ちは分からんでもないぞ、確かに。ほかの子からいじめを受け続けてきて、つらかったことも分かる。けれどな、それをテストに持ち込むのは間違ってるだろ? いじめはいじめでつらいけど、テストはテストで、いじめのことは関係なしに頑張らないとダメだろ? 分かるか?」
 A学院小へ来る前の職場も含めれば十年以上教師を続けてきたこの男だったが、やはりツバサほどのイレギュラーに対してどのように接するのが正解かまでは分からなかった。まさかツバサが、「こんな奴らのする話も押し付けてくる課題やテストもどうでもいい。それより早くカナコお姉ちゃんに会って楽しい話がしたい。」としか考えていないなど、あの程度のヒントで分かるはずがなかった。
 アイダはこの日も、ツバサの中で起きている変化の根本に触れることはできなかった。
 その日の晩、アイダはほかの教師数人にまじって職員室に残り、固定電話から電話を掛けた。相手はツバサの母親の携帯電話だった。
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