カゴの中のツバサ

九十九光

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#11ー5

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引き戸から出ていったのだ。
「あ! 待て! 違う! マジな意味で言ったんじゃないんだ! 戻れ、ツバサ!」
 アイダは慌ててツバサを呼び止めに廊下に飛び出した。ほかの教室からは騒ぎを聞きつけた生徒や教師が顔をのぞかせ、一昔前の日本の喜劇のような展開に注目した。エキストラの笑い声が入らないため、決して面白おかしい話にはならなかった。
 そんな問題を起こしたアイダだが、これほどのツバサの変化の原因が分からないわけではなかった。
 最近になって突然現れて、毎日のように彼を迎えにくるあの女子高生。ツバサに兄弟姉妹がいない以上、家族や身内というのも考えにくい。これだけ知っていれば彼女がツバサの変化の原因だということくらい、学力の向上と上司との接し方以外大して努力してこなかった彼にも理解できた。
 七月二十三日。A学院小学校の五年生たちの期末テストの前日。その下校時のことだった。
 ホームルームを終えて生徒たちが一斉に昇降口へ向かうと、アイダは普段通り職員室へは行かず、生徒と一緒に昇降口へ向かって歩いた。視線は生徒全体ではなく、自分の前数メートル先を行くツバサ一人に向けられていた。
 目的はもちろん、今月になって急にツバサの前に現れた、あの女子高生の正体を探ることだった。彼女を問い詰め、ツバサへの悪影響を断ち切るためだった。
 そして案の定、この日も目標の少女は現れた。
 アイダが昇降口のガラス戸の内側から外を見ていると、白いカッターシャツに赤いネクタイ、紺色のプリーツスカートを穿き、髪を後ろで束ねてポニーテールにしている女子高生が、校門前でツバサに向かって手を振っているのが見えた。それを見たツバサは、それまで無表情だった顔に笑顔を灯して彼女の下へ駆け寄った。監視していた担任も見たことがなければ、4年生の担任からの引継ぎ時にも聞いたことがない、子供らしい自然で明るい笑顔だった。
「君、ちょっといいかな。」
 すぐにアイダは二人の下へ駆け寄り、ツバサの手と恋人つなぎしているその少女に声をかけた。
「君、ツバサ君の親戚とかじゃないよね。ここ最近、いつもツバサ君を迎えに来てるけど、どこの誰なんだい。」
 担任はストレートな言い回しを使い、真顔で少女の顔を見つめながら質問をした。
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