カゴの中のツバサ

＃９－３

っている映像が流れ始めた。さらに場面が変わると、黒い服を着たおにいちゃんのママが、白と黒のリボンで飾られたおにいちゃんの写真を持ちながら、後ろが金色の車が目の前を通りすぎるのを見て泣いている映像に切り替わった。
　カナコはすぐにチャンネルを変えた。しかしどこに変えても、おにいちゃんの死亡事故に関する話しかしていない。どこに変えても、おにいちゃんのパパとママ、おにいちゃんが動いている映像が流れるだけだった。
　その日以来、カナコの目は真っ赤に充血することが多くなった。
　今までのカナコは、この話を思い出すだけで泣きたい気持ちに襲われるはずだった。しかし今は、まるでそんな気持ちにならなかった。
　カナコがカーテンを開けると、のぼったばかりの太陽の光が部屋の中に差し込んできた。窓の向こうには、緑色の葉を大量につけた落葉樹の林が見えている。
　ホーム画面では、いつかゲームセンターのプリクラで撮った、ツバサとのツーショットの写真が光を出していた。
　カナコには、その少年とツバサの顔がどこか似ているように感じられた。