カゴの中のツバサ

九十九光

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#7-2

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はどこにもいなかった。
 ツバサには分からなかった。
 どうして今までできていたはずのことが、急にできなくなったんだろう。そして、どうしてカナコお姉ちゃんとだけ、あんなにも楽しく話をすることができるのだろうか。
 ツバサは思考の蜘蛛の巣にとらわれてしまった。授業中の疑問やカナコ以外の人々の反応すべてが、カナコに対する不思議な気持ちと変化の前では、まるで道端で錆び切ったヘアピンのように無価値なものに感じられてしまう。まったく気にならないわけではないが、どんな反応が返ってこようと、それをいちいち反芻して記憶にとどめない自分がいた。
 もっと長く、お姉ちゃんと話がしたい。もっと長く、お姉ちゃんの傍にいたい。
 ツバサは思考の蜘蛛の巣から見た自分に、そんな考えに固執している自分を見つけた。
 そして6月も終わりを迎えようとするころには、カナコにも変化が訪れた。
 それまでゲームセンターでのUFOキャッチャーとの格闘の日々や、美味しいスイーツの紹介のような話題の中に、恋愛小説の紹介が出てきたのだ。
『この あなたとシンクロするという摩訶不思議な現象 って本 めちゃくちゃよかったよ~♪ 今度持ってくるから、読んでみてよ~☆』
 ある日突然、ツバサがいつものように自宅学習をしている最中に、一冊の本の写真とともに、こんな文章がLINEに流れてきた。絵の具のような色合いで、一本の木の下で男女らしき人影が抱き合う様が描かれた表紙の本だった。今までツバサが見てきた本の中には、このようなデザインを表紙に採用する本はなかった。
そして翌日、ツバサは星ヶ丘のホームでその本をカナコから手渡されたのだ。
「ツバサ君、この前新しい本がほしいって言ってたでしょ? ツバサ君にプレゼント。」
 ツバサは困惑しながらも、笑顔でそう言うカナコから問題の本を受け取った。
 ツバサは確かに、以前新しい本がほしいと、何の気なしに口にしたことはあった。だがこの『あなたとシンクロするという摩訶不思議な現象』という本は、明らかに自分が知っている傾向の本とは大きく違う内容だということを、ツバサはページを開かずとも感じ取っていた。出版社とレーベルも、今までツバサが読んできた、教科書や学級文庫などのどの本にも当てはまらなかった。
 家に帰ったツバサが本を開いてみると、この本が恋愛小説だということが分かった。複数組の男女のいくつものシチュエーションの恋愛模様がオムニバス形式で描かれており、そのすべてが、身分の違いや周囲の反対、転勤などの社会的な障害を乗り越えて恋を成就させ
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