22 / 81
#5-2
しおりを挟む
して授業に出続けるしかなくなった。
しかしそんな状態で授業に参加しても、まったく身にならないのは言うまでもなかった。気がつくと一限目の授業が始まり、ふと前を見ると、教壇上の教師が白板に何か書きながらおうし座の話を熱心に行い、何の気なしにシャープペンシルを手にした時には、授業終了のチャイムが鳴った。ツバサは時間の経過がいつもより早くなっているように感じた。
そんな時でも容赦することなく、同級生たちはツバサへの嫌がらせを続けていった。ツバサが白っぽいタイルが敷かれたトイレから、まだ表面のニスが日光で黒くなっていない教室に戻ってくれば、机に黒い油性ペンで『死ね』と大きく書かれ、さらにその机の中に手を入れると、そこにあるはずの教科書やノートが大量のチリやほこりに変わっており、逆に教科書やノートがごみ箱の中に棄てられていた。それらをゆっくりとした足取りで確認するツバサを後ろから見て、首謀者と実行犯の少年たちは面白そうに大きな声を上げて笑っていた。
しかしツバサは、それをされたことを理由に、相手を睨みつけたり「どうしてこんなひどいことするの!」といったことを言い放ったりすることはなかった。以前カナコからもらった助言で心無い行為にいちいち反応しなくなった、というわけでもなかった。
何を見て、何を聞き、何をして、何をされても、あの下腹部に来る不思議な重量感とともに頭の中に出現するのは、一糸まとわぬ年上の女子高生の姿だけ。そんな恐怖と幻想的な雰囲気だけが巡回している光景の前では、後先や他人の気持ちを考えることが苦手な子供のいたずらも、たいしたことではないように感じられた。
そしてツバサはごみ箱に棄てられたものを回収し、自分の席に座ると、筆箱から消しゴムを取り出し、それで油性ペンの落書きをこすり始めた。鏡面仕上げされている机の油性ペンの汚れが消しゴムで落とせることは、ツバサは今までの経験で知っていた。
だがここまで何の反応も示さずに、流れ作業のように後始末をされると、かえってやった側が困惑することになる。首謀者と共犯者たちは教室の隅で、「あいつ何か変だぞ。」と、声を細めて気味悪そうに話し合っていた。
保健の授業で習った気がする。
清掃作業を続けるツバサは、自分の体の変化に対してこの程度の解釈しかできなかった。
誰かに相談することもできなかった。学校の先生や塾の先生などの身近な大人に相談すれば、確実に母の耳に入るだろう。キャラクターTシャツすら許さないようなあの人が、自分とカナコの関係を許してくれるとはとても思えなった。問題の原因であるカナコ本人に
しかしそんな状態で授業に参加しても、まったく身にならないのは言うまでもなかった。気がつくと一限目の授業が始まり、ふと前を見ると、教壇上の教師が白板に何か書きながらおうし座の話を熱心に行い、何の気なしにシャープペンシルを手にした時には、授業終了のチャイムが鳴った。ツバサは時間の経過がいつもより早くなっているように感じた。
そんな時でも容赦することなく、同級生たちはツバサへの嫌がらせを続けていった。ツバサが白っぽいタイルが敷かれたトイレから、まだ表面のニスが日光で黒くなっていない教室に戻ってくれば、机に黒い油性ペンで『死ね』と大きく書かれ、さらにその机の中に手を入れると、そこにあるはずの教科書やノートが大量のチリやほこりに変わっており、逆に教科書やノートがごみ箱の中に棄てられていた。それらをゆっくりとした足取りで確認するツバサを後ろから見て、首謀者と実行犯の少年たちは面白そうに大きな声を上げて笑っていた。
しかしツバサは、それをされたことを理由に、相手を睨みつけたり「どうしてこんなひどいことするの!」といったことを言い放ったりすることはなかった。以前カナコからもらった助言で心無い行為にいちいち反応しなくなった、というわけでもなかった。
何を見て、何を聞き、何をして、何をされても、あの下腹部に来る不思議な重量感とともに頭の中に出現するのは、一糸まとわぬ年上の女子高生の姿だけ。そんな恐怖と幻想的な雰囲気だけが巡回している光景の前では、後先や他人の気持ちを考えることが苦手な子供のいたずらも、たいしたことではないように感じられた。
そしてツバサはごみ箱に棄てられたものを回収し、自分の席に座ると、筆箱から消しゴムを取り出し、それで油性ペンの落書きをこすり始めた。鏡面仕上げされている机の油性ペンの汚れが消しゴムで落とせることは、ツバサは今までの経験で知っていた。
だがここまで何の反応も示さずに、流れ作業のように後始末をされると、かえってやった側が困惑することになる。首謀者と共犯者たちは教室の隅で、「あいつ何か変だぞ。」と、声を細めて気味悪そうに話し合っていた。
保健の授業で習った気がする。
清掃作業を続けるツバサは、自分の体の変化に対してこの程度の解釈しかできなかった。
誰かに相談することもできなかった。学校の先生や塾の先生などの身近な大人に相談すれば、確実に母の耳に入るだろう。キャラクターTシャツすら許さないようなあの人が、自分とカナコの関係を許してくれるとはとても思えなった。問題の原因であるカナコ本人に
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~
蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。
職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。
私はこんな人と絶対に関わりたくない!
独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。
それは……『Dの男』
あの男と真逆の、未経験の人。
少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。
私が探しているのはあなたじゃない。
私は誰かの『唯一』になりたいの……。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる