カゴの中のツバサ

九十九光

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#5-2

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して授業に出続けるしかなくなった。
 しかしそんな状態で授業に参加しても、まったく身にならないのは言うまでもなかった。気がつくと一限目の授業が始まり、ふと前を見ると、教壇上の教師が白板に何か書きながらおうし座の話を熱心に行い、何の気なしにシャープペンシルを手にした時には、授業終了のチャイムが鳴った。ツバサは時間の経過がいつもより早くなっているように感じた。
 そんな時でも容赦することなく、同級生たちはツバサへの嫌がらせを続けていった。ツバサが白っぽいタイルが敷かれたトイレから、まだ表面のニスが日光で黒くなっていない教室に戻ってくれば、机に黒い油性ペンで『死ね』と大きく書かれ、さらにその机の中に手を入れると、そこにあるはずの教科書やノートが大量のチリやほこりに変わっており、逆に教科書やノートがごみ箱の中に棄てられていた。それらをゆっくりとした足取りで確認するツバサを後ろから見て、首謀者と実行犯の少年たちは面白そうに大きな声を上げて笑っていた。
 しかしツバサは、それをされたことを理由に、相手を睨みつけたり「どうしてこんなひどいことするの!」といったことを言い放ったりすることはなかった。以前カナコからもらった助言で心無い行為にいちいち反応しなくなった、というわけでもなかった。
 何を見て、何を聞き、何をして、何をされても、あの下腹部に来る不思議な重量感とともに頭の中に出現するのは、一糸まとわぬ年上の女子高生の姿だけ。そんな恐怖と幻想的な雰囲気だけが巡回している光景の前では、後先や他人の気持ちを考えることが苦手な子供のいたずらも、たいしたことではないように感じられた。
 そしてツバサはごみ箱に棄てられたものを回収し、自分の席に座ると、筆箱から消しゴムを取り出し、それで油性ペンの落書きをこすり始めた。鏡面仕上げされている机の油性ペンの汚れが消しゴムで落とせることは、ツバサは今までの経験で知っていた。
 だがここまで何の反応も示さずに、流れ作業のように後始末をされると、かえってやった側が困惑することになる。首謀者と共犯者たちは教室の隅で、「あいつ何か変だぞ。」と、声を細めて気味悪そうに話し合っていた。
 保健の授業で習った気がする。
 清掃作業を続けるツバサは、自分の体の変化に対してこの程度の解釈しかできなかった。
 誰かに相談することもできなかった。学校の先生や塾の先生などの身近な大人に相談すれば、確実に母の耳に入るだろう。キャラクターTシャツすら許さないようなあの人が、自分とカナコの関係を許してくれるとはとても思えなった。問題の原因であるカナコ本人に
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