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eスポーツ部誕生
3 校長
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校長の荒波渡は長身で、教員というよりビジネスマンという雰囲気がある。事実、元銀行マンの民間出身の校長である。
メガバンクでエリート街道を歩んできたが、ベンチャー企業への融資が失敗し、左遷での出向である。
荒波が校長をする前の伝馬高校はサッカーでこそ有名だったが、少子化の影響をもろに受け、偏差値が40近くまで低下してしまった。それと同時に定員割れした事も問題だった。
起死回生のため、前校長がやったのが校舎改修とサッカーグランドの拡張だった。しかし、これが仇となった。多額の借入金の返済が困難となり、前校長は辞任してメガバンクから荒波が校長として送り込まれた。
荒波はここで剛腕を発揮する。着任してわずか5年で偏差値は50までV字回復し、学校経営が安定した。
荒波がやったのは、教師の意識改革と部活コーチの雇用だった。それまで教師が片手間でやっていた部活の指導を専属コーチによる指導に切り替えた。効果はすぐに表れた。サッカー部、バスケ部、チアダンス部が全国大会に出場した。これにより一気に伝馬高校の名前が全国に知られるようになり、同時に偏差値も上がっていった。
佐藤も荒波による引き抜きだった。専門学校での指導実績を買われ、荒波自ら佐藤を口説いた。佐藤は荒波の期待にしっかり応える事ができ、情報処理の国家試験でも、プログラミングコンテストでも全国有数の結果を出した。それだけに自分が指導する電算部をeスポーツなどにかき混ぜられたくなかったのだ。
速人はチャンスだと思い校長へ向け叫んだ。
「校長先生、聞いてください! 1年4組の光田速人です。電算部でeスポーツをする事を認めてほしいのです」
すかさず佐藤は速人の声を遮った。
「今、電算部で指導している内容と違いすぎるので、考え直すように説得していたところです」
荒波は一瞬で状況を飲み込み、ゆっくり応えた。
「佐藤先生、生徒の前向きな気持ちをないがしろにしては駄目ですよ。しっかり聞いてあげないと」
「しかし、校長……」
「光田君だったね。実を言うとすでにeスポーツ部を作る事を検討していたのですよ」
「えっ?!」
佐藤と速人は同時に言った。
「今、コーチを探しているところなので、次年度から部活を立ち上げようと思っていました。一年間待てませんか?」
「一年も待てません。今年からやりたいんです」
「う~ん、それは困りましたね……。
ひとつ確認したいんですが、eスポーツの高校生を対象とした全国大会はあるのですか?」
「はい、あります。まだ歴史は浅いですが全国大会があって、ネットだけでなくTV中継もされています」
「TV中継もですか……。じゃあ、こうしましょう。部活確定日の四月末までに、部活最低人数の5名を確保する事ができたら、eスポーツ部を認めてあげます。そしてぜひとも全国大会出場を目指してほしいです。でも、5名集まらなかった時は、電算部の部員として頑張ってくださいね」
「ありがとうございます!」
速人はお礼を言い、これ以上ないというぐらい晴れやかな笑顔で職員室を出て行った。
「校長がeスポーツ部を検討しているなんて初めて知りました」
少し驚いた顔で佐藤が言った。
「本当は今さっき決めたんです」
「じゃあ、コーチを探しているって言うのも?」
「そう、彼が本当に5名集められたら探してみますよ」
そう言うと荒波は、にやりと笑った。
メガバンクでエリート街道を歩んできたが、ベンチャー企業への融資が失敗し、左遷での出向である。
荒波が校長をする前の伝馬高校はサッカーでこそ有名だったが、少子化の影響をもろに受け、偏差値が40近くまで低下してしまった。それと同時に定員割れした事も問題だった。
起死回生のため、前校長がやったのが校舎改修とサッカーグランドの拡張だった。しかし、これが仇となった。多額の借入金の返済が困難となり、前校長は辞任してメガバンクから荒波が校長として送り込まれた。
荒波はここで剛腕を発揮する。着任してわずか5年で偏差値は50までV字回復し、学校経営が安定した。
荒波がやったのは、教師の意識改革と部活コーチの雇用だった。それまで教師が片手間でやっていた部活の指導を専属コーチによる指導に切り替えた。効果はすぐに表れた。サッカー部、バスケ部、チアダンス部が全国大会に出場した。これにより一気に伝馬高校の名前が全国に知られるようになり、同時に偏差値も上がっていった。
佐藤も荒波による引き抜きだった。専門学校での指導実績を買われ、荒波自ら佐藤を口説いた。佐藤は荒波の期待にしっかり応える事ができ、情報処理の国家試験でも、プログラミングコンテストでも全国有数の結果を出した。それだけに自分が指導する電算部をeスポーツなどにかき混ぜられたくなかったのだ。
速人はチャンスだと思い校長へ向け叫んだ。
「校長先生、聞いてください! 1年4組の光田速人です。電算部でeスポーツをする事を認めてほしいのです」
すかさず佐藤は速人の声を遮った。
「今、電算部で指導している内容と違いすぎるので、考え直すように説得していたところです」
荒波は一瞬で状況を飲み込み、ゆっくり応えた。
「佐藤先生、生徒の前向きな気持ちをないがしろにしては駄目ですよ。しっかり聞いてあげないと」
「しかし、校長……」
「光田君だったね。実を言うとすでにeスポーツ部を作る事を検討していたのですよ」
「えっ?!」
佐藤と速人は同時に言った。
「今、コーチを探しているところなので、次年度から部活を立ち上げようと思っていました。一年間待てませんか?」
「一年も待てません。今年からやりたいんです」
「う~ん、それは困りましたね……。
ひとつ確認したいんですが、eスポーツの高校生を対象とした全国大会はあるのですか?」
「はい、あります。まだ歴史は浅いですが全国大会があって、ネットだけでなくTV中継もされています」
「TV中継もですか……。じゃあ、こうしましょう。部活確定日の四月末までに、部活最低人数の5名を確保する事ができたら、eスポーツ部を認めてあげます。そしてぜひとも全国大会出場を目指してほしいです。でも、5名集まらなかった時は、電算部の部員として頑張ってくださいね」
「ありがとうございます!」
速人はお礼を言い、これ以上ないというぐらい晴れやかな笑顔で職員室を出て行った。
「校長がeスポーツ部を検討しているなんて初めて知りました」
少し驚いた顔で佐藤が言った。
「本当は今さっき決めたんです」
「じゃあ、コーチを探しているって言うのも?」
「そう、彼が本当に5名集められたら探してみますよ」
そう言うと荒波は、にやりと笑った。
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