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社会人
ずっと一緒
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20XX年、春。
「実家隣なのに、一緒に住む意味…ある?」
「いやいや!毎日尚也がいる生活は最高の癒しだから」
春樹は真顔で答えた。
―――
この春から僕たちは就職し、それぞれの職場の中間地点でルームシェアをすることにした。
ルームシェア…同棲とどう違うのか分からないけど、僕は敢えてルームシェアと呼んでいる。
春樹は同棲だ、って言い張るけど。
初めて春樹とセックスしたあの日から、僕たちはただの幼なじみではなくなった。かといって、恋人かと問われると…なんだか違う気もする。
こう…イチャイチャとか、無いし。
なんとなーくいい雰囲気になって、始まってって、乱れ狂って、共に果てる。
今はそんな関係、かな。
仲のいいセフレ?
セフレなんて薄っぺらい言葉では表したくないけど、やってることは一緒かなぁ…。
僕はこの状況に困惑していた。
あれよあれよという間に、春樹が話を進めていって、今に至る。勢いに圧倒されて、身を任せていたらルームシェア。
最初くらい実家にいれば、多少は貯金だってできただろうに。
春樹はなんであんなにルームシェアにこだわってたんだろう…。
―――
慣れない通勤電車、慣れない仕事、疲れることばかり。
帰宅時間はそれぞれマチマチで、どちらが先に帰宅するかはその日次第といったところ。
今日は終業後に勉強会もあり、いつもよりかなり帰宅が遅くなった。春樹はもうとっくに帰宅してる時間だ。
「ただいま~」
灯りの付いた玄関へ入ると、「おかえり~お疲れ!」と笑顔の春樹が出迎えてくれて、そっとハグをし、背中をポンポンと…。
あぁ…これはいい…疲れた体に染み渡る、癒される…。
「ありがと春樹…元気出た」
僕は下を向いて赤くなった顔を見られないようにした。
癒される。でも、同時にドキドキもしてしまうよ…。そんな自分が少し恥ずかしくて、見られたくなかった。
「なんだよぉ、次はただいまのチューの番じゃないの?」
春樹がむくれている。
「いやいや、そんなのしないよ、恋人でもあるまいし…」
「え!?俺尚也の恋人じゃなかったらなんなん!?」
春樹が心底驚いた顔をして聞き返してきた。驚くのは僕の方だよ!!
とりあえずリビング行こ?と不信感丸出しの目をした春樹を引っ張ってソファに腰をおろした。
そこで僕は、初めて胸の内を打ち明けた。
「ただの幼なじみ…だけではなくなったし、友達以上の関係だし…なんだろね?僕たちってセフレ、なのかな?」
「え、ショック…尚也俺のことセフレと思ってたの?ずっと?」
「いや、そうじゃなくて…なんて表したらいいか分からない関係と言いますか…」
「俺はあの日からずっと、尚也とは恋人だと思ってたんだけどなぁ…」
え!?!?
尚也って結構ドライなのな、と付け加えて春樹はしょぼんとしてしまった。
春樹は恋人だと思ってくれてたの!?この数年…僕がモヤモヤしてる、その間に。
「ごめん、でもそんな…言われなきゃ分かんないじゃん…」
「少女マンガかよ~いちいち言わなくても分かるくない!?俺の行動でさ!?愛は伝わってなかったワケ!?」
俺の行動…って、今までのセックスってこと?確かにいつもすごく優しかったけど…恋人、っていたことないから言われなきゃ分かんないよ!
「今までどんな気持ちで俺に抱かれてたの?性欲処理に付き合ってやってる
って感じ…?」
あっ、これはやばいやつだ。
「それは違うよ!元々僕が春樹を巻き込んで始まったことだし、春樹に抱かれるのを夢見てたんだから。毎回抱かれる度に幸せだったよ!!
僕の方こそ、春樹はなんで僕なんかと…って不安に思ってたよ!」
何度となく肌を重ねて、繋がり、乱れ合い、どろどろに絡み合ったというのに、肝心な所がズレていたなんて。
「俺は尚也のこと好きになってた。尚也は…?」
春樹は俯いて、すごく小さな声で告げてくれた。
「僕は春樹よりもっともっと前から、好きだったよ」
中2の夏、春樹がAV片手に興奮して部屋に飛び込んできた所から全ては始まった。
僕の突飛な性癖が開花し、悩みもがき、苦しんで、今晴れて恋人同士になることができた。
初めて春樹と結ばれた日と同じくらい、いやそれ以上に幸せな瞬間だった。こんな幸せがあるだなんて…いつも春樹は僕の心を掻き乱して、狂わせる。
「…僕もこれから同棲って言うね」
「頑なにルームシェアって言ってたの、そーゆー理由?ウケる~」
ホラ、こうやってイチャイチャした恋人っぽい会話にもならないから、恋愛経験値の無い僕は何も察することが出来なかったんだよ。
でもさ…。
そういえばソファに並んで座る時はいつも、手は繋いでたかも。
今気付いた。
自然な行為すぎて特別に思ってなかった。これは春樹なりの愛情表現だったんだよね?
「ごめんね、春樹…」
「は?セフレ扱いしてたことが?」
もうっ!
そういうとこが雰囲気無いって思うんだよね!
でもこんな空気も自分でぶち壊せばいいだけだ。
僕はこの日、初めて自分から春樹にキスをした。
ちなみに、セックス以外でキスするのも初めて。
顔を離すと、春樹は目を見開いて耳まで真っ赤だった。春樹はすぐ赤くなるからかわいいんだよね、今も、アノ時も…。
「恋人なんだから、自然にキスしたっていいんだよね?」
「あ、当たり前だ!でも突然すんなよびっくりすんだろ!」
「春樹って意外とウブでかわいいよね」
「はぁ!?ど、どこが!!」
「言っていの?山ほどあるけど?」
「いや…いい!言わなくていい!!」
「顔が赤くなりやすくてぇ…」
「やめろぉ!!」
―――
やっぱり僕らにはイチャイチャする雰囲気が足りないかもしれないけど、愛のカタチは人それぞれ、ってことでいいよね?
これが、僕たちのスタイルってことで。
そもそも始まりから狂ってるんだから。
恋愛は自由だ。
「実家隣なのに、一緒に住む意味…ある?」
「いやいや!毎日尚也がいる生活は最高の癒しだから」
春樹は真顔で答えた。
―――
この春から僕たちは就職し、それぞれの職場の中間地点でルームシェアをすることにした。
ルームシェア…同棲とどう違うのか分からないけど、僕は敢えてルームシェアと呼んでいる。
春樹は同棲だ、って言い張るけど。
初めて春樹とセックスしたあの日から、僕たちはただの幼なじみではなくなった。かといって、恋人かと問われると…なんだか違う気もする。
こう…イチャイチャとか、無いし。
なんとなーくいい雰囲気になって、始まってって、乱れ狂って、共に果てる。
今はそんな関係、かな。
仲のいいセフレ?
セフレなんて薄っぺらい言葉では表したくないけど、やってることは一緒かなぁ…。
僕はこの状況に困惑していた。
あれよあれよという間に、春樹が話を進めていって、今に至る。勢いに圧倒されて、身を任せていたらルームシェア。
最初くらい実家にいれば、多少は貯金だってできただろうに。
春樹はなんであんなにルームシェアにこだわってたんだろう…。
―――
慣れない通勤電車、慣れない仕事、疲れることばかり。
帰宅時間はそれぞれマチマチで、どちらが先に帰宅するかはその日次第といったところ。
今日は終業後に勉強会もあり、いつもよりかなり帰宅が遅くなった。春樹はもうとっくに帰宅してる時間だ。
「ただいま~」
灯りの付いた玄関へ入ると、「おかえり~お疲れ!」と笑顔の春樹が出迎えてくれて、そっとハグをし、背中をポンポンと…。
あぁ…これはいい…疲れた体に染み渡る、癒される…。
「ありがと春樹…元気出た」
僕は下を向いて赤くなった顔を見られないようにした。
癒される。でも、同時にドキドキもしてしまうよ…。そんな自分が少し恥ずかしくて、見られたくなかった。
「なんだよぉ、次はただいまのチューの番じゃないの?」
春樹がむくれている。
「いやいや、そんなのしないよ、恋人でもあるまいし…」
「え!?俺尚也の恋人じゃなかったらなんなん!?」
春樹が心底驚いた顔をして聞き返してきた。驚くのは僕の方だよ!!
とりあえずリビング行こ?と不信感丸出しの目をした春樹を引っ張ってソファに腰をおろした。
そこで僕は、初めて胸の内を打ち明けた。
「ただの幼なじみ…だけではなくなったし、友達以上の関係だし…なんだろね?僕たちってセフレ、なのかな?」
「え、ショック…尚也俺のことセフレと思ってたの?ずっと?」
「いや、そうじゃなくて…なんて表したらいいか分からない関係と言いますか…」
「俺はあの日からずっと、尚也とは恋人だと思ってたんだけどなぁ…」
え!?!?
尚也って結構ドライなのな、と付け加えて春樹はしょぼんとしてしまった。
春樹は恋人だと思ってくれてたの!?この数年…僕がモヤモヤしてる、その間に。
「ごめん、でもそんな…言われなきゃ分かんないじゃん…」
「少女マンガかよ~いちいち言わなくても分かるくない!?俺の行動でさ!?愛は伝わってなかったワケ!?」
俺の行動…って、今までのセックスってこと?確かにいつもすごく優しかったけど…恋人、っていたことないから言われなきゃ分かんないよ!
「今までどんな気持ちで俺に抱かれてたの?性欲処理に付き合ってやってる
って感じ…?」
あっ、これはやばいやつだ。
「それは違うよ!元々僕が春樹を巻き込んで始まったことだし、春樹に抱かれるのを夢見てたんだから。毎回抱かれる度に幸せだったよ!!
僕の方こそ、春樹はなんで僕なんかと…って不安に思ってたよ!」
何度となく肌を重ねて、繋がり、乱れ合い、どろどろに絡み合ったというのに、肝心な所がズレていたなんて。
「俺は尚也のこと好きになってた。尚也は…?」
春樹は俯いて、すごく小さな声で告げてくれた。
「僕は春樹よりもっともっと前から、好きだったよ」
中2の夏、春樹がAV片手に興奮して部屋に飛び込んできた所から全ては始まった。
僕の突飛な性癖が開花し、悩みもがき、苦しんで、今晴れて恋人同士になることができた。
初めて春樹と結ばれた日と同じくらい、いやそれ以上に幸せな瞬間だった。こんな幸せがあるだなんて…いつも春樹は僕の心を掻き乱して、狂わせる。
「…僕もこれから同棲って言うね」
「頑なにルームシェアって言ってたの、そーゆー理由?ウケる~」
ホラ、こうやってイチャイチャした恋人っぽい会話にもならないから、恋愛経験値の無い僕は何も察することが出来なかったんだよ。
でもさ…。
そういえばソファに並んで座る時はいつも、手は繋いでたかも。
今気付いた。
自然な行為すぎて特別に思ってなかった。これは春樹なりの愛情表現だったんだよね?
「ごめんね、春樹…」
「は?セフレ扱いしてたことが?」
もうっ!
そういうとこが雰囲気無いって思うんだよね!
でもこんな空気も自分でぶち壊せばいいだけだ。
僕はこの日、初めて自分から春樹にキスをした。
ちなみに、セックス以外でキスするのも初めて。
顔を離すと、春樹は目を見開いて耳まで真っ赤だった。春樹はすぐ赤くなるからかわいいんだよね、今も、アノ時も…。
「恋人なんだから、自然にキスしたっていいんだよね?」
「あ、当たり前だ!でも突然すんなよびっくりすんだろ!」
「春樹って意外とウブでかわいいよね」
「はぁ!?ど、どこが!!」
「言っていの?山ほどあるけど?」
「いや…いい!言わなくていい!!」
「顔が赤くなりやすくてぇ…」
「やめろぉ!!」
―――
やっぱり僕らにはイチャイチャする雰囲気が足りないかもしれないけど、愛のカタチは人それぞれ、ってことでいいよね?
これが、僕たちのスタイルってことで。
そもそも始まりから狂ってるんだから。
恋愛は自由だ。
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