療育で救われた母親の話

桜花

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第七章 幼稚園選び

行かなきゃ良かった、A園

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最後に、家から最寄りの幼稚園、A園の見学に行きました。

自宅近くにはA園の系列園ばかり。
ビシバシお勉強園、プレから入らないと行けない園で有名でした。

一応…念の為…と思い、見学に行きましたが、これが大失敗。


門まで出迎えてくれたのは園長先生、年配の男性でした。
男性、特に年配の方が苦手だったそーすけは、門の時点で入るのを拒み始めました。

危険な空気をまといつつ、職員室へ案内してもらい、お茶を出してもらいました。

個別見学のせいか、今までの園との対応の違いに少々驚いていましたが、それ以上にそーすけがもう大変で…。

まず、職員室にも怖がって入れませんでした。
若い保育士さん2人がかりでおもちゃで釣ってなんとか入室。

なんと、そーすけとポニョにまでお茶を頂いたので、静かに飲んでいる間に話を聞きました。

やはり、プレからの繰り上がりで定員が埋まっていること、一般で入れるのは毎年早朝から並んだ1.2名ということ。

噂は本当なんだな~、なんて、他人事のように感じていました。
だって、ここまでのそーすけの様子を見るだけでも、この園には合わない、そぐわないから…。

本当は今すぐにでも帰りたかったけど、園長先生から園内の見学に誘って頂いたので行くしかありませんよね。

当のそーすけは、今度は出されたおもちゃから離れられず、泣いて暴れたため職員室へ置いていくことになりました。

この時、保育士さんのそーすけを見る目…忘れられません。

『何この子…』

暴れるそーすけを、まるでこんな子供見たことがない、信じられない、といった感じで、完全に引いていました。

あぁ、この園には泣いて暴れて癇癪を起こす子は誰一人としていないんだろう…そう思うとより一層逃げたくなりました。

ポニョを抱っこ紐に入れたまま、園内の見学に向かいました。

プレの教室、つまりそーすけと同学年のクラスを覗くと、みんな姿勢よく着席していて目玉飛び出るかと思いました。

こちらは療育でシートベルトをしながら着席させているというのに。


極めつけは、

「この子たちは週2しか来てないからちょっと落ち着きのないクラスなんだけどね」

との園長先生の発言。

これのどこが!?
大人しく座ってみんな前向いて話聞いてる!!

…カルチャーショックでした。

では週3のクラスはもっと落ち着いているのでしょうか…想像もできません。

それに、プレの子たちも普通のお箸で給食を食べるそうです。
開いた口が塞がりません。


そして就園児たちのクラスからは、挨拶や歌声が聞こえてきます。
どこのクラスも遊んでいません。
中庭にも誰もいません。

みんな、教室でお勉強をしているのでしょう。


ここは、選ばれしエリートたちの通う幼稚園だ…そう思いました。

現実とかけ離れすぎている。


ちなみに療育から来た子は誰もいない、と。
トイレのことも一応聞いたけど、時々漏らす子は居るけど…とのこと。
オムツなんて以ての外。
ですよねー。
愚問でした。


一歩一歩進む度に絶望を味わいながらの見学が終わり、職員室へ戻ると、機嫌を直したそーすけが楽しそうに遊んでいました。

保育士さんたちも、笑顔で迎えてくれました。
てすが、私はあの時の、信じられない物を見るような顔が忘れられませんでした。

あんないい子ちゃんたちと毎日触れ合っていれば、そーすけなんてバケモノのようなもの…。

世間の偏見を目の当たりにしたというか、とにかく悲しい園内見学でした。

どうせ入園できないことは分かってた。
入るつもりもなかった。
正直、数稼ぎに見学に来たようなもの。


…それなら来なければよかった。


車に戻って泣きそうだった。
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