人生、黒歴史しかない

さよならPC

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    いやだ    やめて   したくない

    おねがいです

    ぼくに

    かまわないで    チカヅナイデ

    コトバ    ヲ     ムケルナ

    






    クラスメイトが一人この世から消えたという事実に反応は様々であったが、概ね世間一般で言えば『死を悼む』雰囲気を醸し出していた、昼休みまでは。

    昼休み開始早々いつも騒音認定ボーダーラインギリギリを攻める女子五人が集まって桐沢の死を悼む会なるものを帰りにカラオケでしようとイベントとして取り扱いそれに賛同し集まり出す他のクラスメイト達。もう悼むぶっ飛ばしてお祭り騒ぎ、ブラジル人も真っ青のカーニバルである。これが若さか。

    僕?あれれおかしいな僕は生きてるよー

    まぁいつも通りなんですけどね

    さて桐沢の死因なのだが刺殺絞殺毒殺惨殺エトセトラ、ミステリー小説に出てくるであろう殆どの殺害方法には該当せず。

    交通事故

    早朝、障害物が欠片もない見通しの良い道路で高齢者が運転する車に轢かれそのまま車の下敷きとなり死んだと興奮しながら誰かが話していたのが鼓膜を自然と嫌でも揺るがし脳に刻み込んだ。

    二年間まともに会話らしい会話することなく昨日やっとこさ出来たというのにこの展開は酷く呆気ない。悲しんだりあるいは泣いたりする自分は居らずただ普段通りに過ごしている。多分好感度が足りなかったんだなゲーム脳万歳。

「ボンヤリしているなそういう時は野球をするのがいいぞ」

    そう声をかけてきたのは阿部だった。

「する事ないからね。飯は食い終ってるしあと野球はしない」

「あー、みたいだな。でもなぁ」

    いい淀む阿部に心に小さなささくれが刺さる何が言いたいんだと声に苛立ちを滲ませそうになって辛うじて飲み込んだ。

「らしくないじゃん阿部いつものあんたなら『うぇへへぃそれでも野球しよーぜぃぃ』って気持ち悪いノリと存在でくるのに」

「待てそんなことはしていないぞ矢車」

    前の方から矢車がこちらに向かってくる。僕も矢車に同意である何がとは言わんけど。

「いや普段のあんたそのものよ、何なら昨日こいつに絡んでた時も」

「なんと」

    目を見開き二歩下がる阿部。えっそんなにショックなのか?

「な、んと・・・」

    遠目で見たら老人と勘違いされても違和感ない姿勢と足取りで自分の席へ戻っていた。いや、そんなにショック受けんでも。僕は気にして・・・まあ程々にしてくれればいいよ。いやホントに。

「あんまし桐沢と話したこと無いけどさ、あんな風にの口実にせれて喜ぶタイプではなかったわね」

    集まりという単語に隠しきれてない含みがあったので誰だってそうじゃない?と言えば「世界には文字通りのお祭り騒ぎで葬儀する所があるから一概には言えないわよ」と知識を披露された。

「どうしてそう思うんだ?」

「だってネクラだったじゃんあの娘」

    ・・・大概である

「というのもあるけど」

    こちらの視線を鬱陶しそうに顔を背けて付け加える。

「あの娘の家がめんどくさいし」

「めんどくさい?」

「何その反応・・・ちっ、あんた知らない人か。うんそれなら今言ったこと忘れて。桐沢の事をカワイソーと思うなら」

    随分な言い草だなと思いながらも亡くなった人のプライバシーにズガズカと入り込むつもりは毛頭無i━誰だ元から無いだろって言った奴、怒らないから正直に名乗りなさい。


    色々整えて(髪とか髪とか)


    もどかしい空気を振り払う為に話題をふろうとして、遮られた。死を悼む会のメンバーが矢車にも参加しないかと声をかけてきたのだ。僕?相も変わらずお声は掛からない。

    矢車と死を悼む会のやり取りから目を離し頬杖ついてぼんやりと時間を潰す。ホントは腕を枕にして寝たいけど矢車の発言が気になって寝れない。

    家がめんどくさい

    どこのどんな家庭にも一つや二つ小さいものから大きい問題があるのは歴史が証明なんなら問題がでかくなりすぎて戦争にもなったり。もし無い家庭があるとすれば表面化されていないだけで燻ってるんだろうなぁと邪推。ただそれが死ぬ原因となるのだろうか。

    正直日々過ごしていると死にたくなる瞬間は日々瞬きする回数位僕はある。実行する気はビビりだからしないのと中途半端に失敗して死ぬまでの間苦痛に蝕れながら死ぬのが嫌だしこれこそ万が一失敗して生き残ってしまった未来を想像しただけで身体から頭から何かが抜ける感覚に襲われる、要するにしねーえわけです。死にたくないと思っていても死んでしまうパターンもあるわけで。だから桐沢もそうではなかったのかなと。妄想だけど。少なくとも帰り道で盛大に笑っていたあの時の桐沢は死ぬ気なんてさらさら無かっただろう。


    いやこれも妄想か


「ぬっ、矢車はどこに行った?」

    阿部が戻ってきた復活はえーな。

「桐沢を悼む会メンバーの所に行ったというか連れ去られたよ。ほらあそこに」

「悼む会?ああ、アレか俺の所にも来たぞ。断ったがな」

「野球の練習があるから?」

「いや野球は関係ない。ただ桐沢の事と関係している。あいつの家近所だから葬式の手伝いにいかないといけないのだ」

「それは葬式業者がしてくれるんじゃないの?というか桐沢と知り合いだったのか」

「前者に関してはそういう風習なんだよ。うちのひい祖父さんが死んだときも近所の人達が手伝ってくれたんだがみんなそうじゃないのか?後者については小さい頃からの顔馴染みの1人だったからだ他にもこの学校にいるぞ」

    引っ越してきたから知らなかったと言おうとして止めた。阿部とはそれなりの付き合いから余所者アレルギーを持っていないと判断していたが阿部の周りがそうとも限らない。昔の人も言ってたよな沈黙は金って。あと後者にはふーーんと相槌をうって流した。前者が気になってしまって。

「生憎生まれてから身近で人が亡くなった事はなくてね。あっても県外にいる親戚が亡くなったのが一回きり」

「ああそれじゃ知らんよな。まあ何処にでもあるその土地独自ルールだ。俺もネットで自分たちがしてきた事がマイナーなのを知った時は驚いたもんだ」

    阿部はその後もマイナー講義をし続けるのを適度に適当に相槌をうつ中作業の間も頭の中を占めるのはしばらく消えそうにないクラスで話題人物の発言。



    桐沢ロスは自分で思うよりも深刻だった。








    帰りのホームルーム、担任は普段よりも長く重たい口調で進めていく。当然といえば当然だろうけど。仮に担任が悼む会のテンションではっちゃけてたら明日から長あぁぁぁいお休みを取ることになるか新しい職場に行くかのどっちかだ。断定的なのは中学時代似た案件を見たから。元気にしてるかなあの縞パン先生。

    いつもより真剣味を小匙一杯程度を含ませた日直の挨拶によりホームルームが終わる。クラスのテンションはlawより。理由は昼休みの企画が担任の耳に届きそれにこんこんとやる意味と世間の反応をそりゃもう重石を乗せるように説明してきた。これで悼む会を実行しようというのなら大したもんだよ・・・別に誘われなかった事に根を持ったわけではない間違いなく力一杯言わせてもらう、いやホントに。

    死んだ人を理由にしてはいけない、彼らはもう何も出来ないのだから。言い聞かせるというよりは訴えかける担任。個人的な感情がどっぷりと入ってたと思う。僕らより当然人生経験があるから死者に対しての考え方が丁重になるわなー。それが果たして彼らに浸透していたかは不明だけど。

    まあ、外面を変えるだけなら誰でも出来る。人間じゃなくてもドーブツでもね。

   ホームルーム終了後昨日より格段に静かな教室、うん、これはこれで良いもんだとしみじみしながら教室を出る。


    ちょっとした違和感を拭うには幸先が良いもんだ


    学校を出て気持ち真っ直ぐ現実曲がり角あり谷あり小山ありの道を徒歩で進んで行けば着きました事故現場。ひび割れしたアスファルトに白チョークで大小の丸が数ヶ所書かれている。申し訳程度に作られた車避けには真新しい花束、ジュース、お菓子等が数点手向けられてる。幸いなことに日はまだ暮れかけなので視界は許容範囲。オレンジ色の景色の中に延びる影を動かす。うん視界を塞ぐ障害物は見当たらない。お陰で遠くからやってくる自転車が薄目にしても丸見え。国道と呼ばれるこの道の周囲はTHE・田んぼで囲まれ強いて障害物を無理やり捻り振り絞って出して人の視線程の高さで滑空するカラスが二羽。尚、人との距離は二百メートルほど。うーーんこのど田舎ofど田舎。でもここより北の地は田舎という文明ワードが消し飛ぶと元北の地の住人が言ってた。信じられるか?ドア開けたら月の輪熊とキッスする世界。勿論人間がされる側な。

    下校前、購買で買った駄菓子をリュックから取り出し花束の群れに加える。好きだったかどうかは知らんけど。未来永劫金欠が人様の為に一円の得にもならないお供えとお祈りという微々たる自己満足を実行。

    黙祷する事十秒得られたのは自己満足ではなく手先の温度を下げる冷気だった。これも負の遺産と言えるのかなぁとしみじみ。

    チリーチリーーンとベルが鳴らされた。先程見た自転車がやってくる。歩道を走る辺り交通ルールを知らねぇ輩だなと思いつつ怪我をさせられたら敵わないので道の端による。シャーと流れるように去っていくのを視認しようとして失敗した。自転車はすぐ横で止まったのだ。

    自転車のブレーキ音とサイドスタンドをたてるバネの音。相手がやってくる。

    地元の中学生。何で解るかって?三年間お世話になった母校の制服を着ていたからだ。僕よりも頭一つ分低い背丈の中学生はこちらを一瞥して頭を軽く下げてきたので「ど、どもぉ」挨拶モドキをした。所謂失敗何処からどう見ても聞いても失敗である。家に帰ったら枕に顔を埋める作業をする計画をたててる間に中学生はスクールバックからジュースとお菓子を取り出しお供えして手を合わせ始めた。

    桐沢の知り合いかなと思いつつ邪魔にならんように静かに離れながら辺りを、事故が起きた箇所を見回す。ああ違和感が濃くなる。

    視界を遮る物はなく当時目も開けられない程の豪雨や濃霧は一切無く妨げになるとすれば日が昇りきってない暗さが残る景色。その景色に同化する色合いの服装をしていたならば運転手が気付くのが遅れてしまうだろう。

    
    事故ならば


    運転手が気付かなくても被害者の桐沢は気付かない事があるのだろうか。夢遊病や若年性痴呆症を患ってたならあり得たかも知れんけど。昨日の様子を見る限りでは無さそう。ただ疲れきってはいた。


    死にたくなるくらいには





    いや人の気持ちを決めつけるのは最低な事だ

    自分がされて嫌な事を人にするのは異常者がする事

    僕はあいつらと違う



     はあぁ、違和感を拭うつもりで来たら何故か自分のメンタルにダメージを負う結果に。いいボディブローだぜぃ。

    そんでも胸中に燻る違和感が違和感でなくなったから来て良かったのだ。自己満足も出来たことだし。

    そうして満足感で頭の中を浸していた

    だから気付かなかった


    みられていることに
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