最初のものがたり

ナッツん

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新しい関係

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ツバサくんが帰ったあと、しばらくぼーっとしていた。

告白できた。

失恋できた。

正々堂々とツバサくんにぶつけられた!

不思議、すごく悲しいけど、
罪悪感が消えて気分がいい。

ふと携帯を見ると、
勇磨からメールが来てた。

「色々とごめん。
俺はもうお前とは関わらないから、ツバサに守ってもらえよ。
バイバイ 」

メールを確認してすぐに着替えて外に出た。

きっとあの公園にいる。

息を切らして公園の中に入ると、いつものベンチに勇磨が1人座って、空を仰いでる。

「勇磨!」

私の声に勇磨が振り返り立ち上がる。

「ナナ」

泣きそうな顔をしてる。

「ナナ、外出て大丈夫なのか。
まだ熱あるんじゃ?」

そう言って私のおでこに、自分のおでこをあてる。

でもすぐに離れて

「あ、ごめん、これもダメだ」

何かの線を引いた。
私は黙って勇磨の言葉を聞いた。

「ごめん、俺のせいでまたナナを傷付けた。
守れなかった。嫌な思いもさせた。
俺もつまんない事で意地はってナナを傷つけた。
避けたりガキみたいな事もした。」

黙って聞く私をじっと見つめる勇磨の瞳は真剣だ。

真剣な勇磨はちょっとカッコイイ。

なんて今言ったら怒るかもしれない。

でも、カッコイイ。

「ツバサと上手くいってんだろ。
良かったな。嫌味じゃない。
本当に、ナナがツバサを好きなのはよく知ってるから。
これからはツバサがいるから安心だな。
俺といるとナナは嫌な思いしかしないから、
俺はもうナナとは話さないし近づかない。
今までごめんね、木下さん」

最後はツラそうに笑って言った。

やっぱり、勇磨は勇磨だ。

自分の事よりも人の事を優先する。

そしてなんでも勝手に決める。

決めつける!
こっちの思いも勝手に想像して自分で結果を出す!

やっぱムカつく!

私、ずっと、勇磨に。

なんなの!

「工藤くん」

そう言う私の空気に勇磨が気付いた。

「何?怒ってるの?」

怒ってるよ、すごく!

「ねぇ明日から他人の工藤くん。
いつ、私が守ってくれって頼んだ?
あなたのユーマーズかもしれないけど、
彼女達とのケンカは私との間の事であって、
工藤くんとは全く関係ないと以前にも伝えたハズですが?
守る守れないはあなたの自己満足ですよね?
私は望んでないし、好きにあいつらとケンカさせて欲しいんですけど。
今回はたまたま体調悪くて結果負けたけど、
明日キッチリ借りは返すつもり。
勝手に自分のせいだって酔うのは迷惑だし、
俺といると嫌な思いしかしないと言ったけど、私は工藤くんといると楽しい。
工藤くんと友達でいたいの。
私の気持ちは私しか分からない!
なのに勝手になんでも決めんな!
ナルシスト男!」

呆気に取られ私を眺めている。

「すげぇな」

は?どういう意味?

「俺って自己満足のナルシストだったのか、
初めて言われた。」

今、言われて良かったんじゃないの。

なんでもかんでも自分に繋がると思うなよ

そう言う私をまじまじ見てため息をついた。

「でも、俺がいなくても、ツバサが側にいるんだから」

だから、いないの!

「ふられたの、ツバサくんにさっき」

勇磨がポカンとする。

「え、マジ、本当に?」

えーえーマジですよ。

「なんで、そんなに平気な顔してんの?
強がってんの?泣けよ、いいよ、泣かしてやる」

そう言って私を抱き寄せようとした。
ギリギリのところで逃げた。

やると思った。勇磨の行動見えてきた。

「勇磨に必死だなーとか言われた前日、
もう会わないって言ったんだ。
その時はもう終わりにするつもりだったから、ドン底まで落ちていっぱい泣いた。
今日も告白もしてフラれてまた泣いた。
だから今は自分でも驚くほどスッキリしてる。もう平気」

黙って勇磨は私の話を聞いてくれた。

話させてくれてるんだと感じた。

「思いを伝えられたって事が今は嬉しい。
でも、ツバサくんも罪だよね。
フルなら、おんぶしたり、抱きしめたりしないで欲しい。
期待しちゃうっつうの!」

ケラケラ笑う私を今度はしっかりと
勇磨は抱き寄せた。

やめてってば。

離してよ。

「やだ、離さない。
いいから、もう一回泣けよ。泣いて忘れろ!」

バカ勇磨!

不思議と涙が出てきた。
もう止まらなかった。
ツバサくんとの思い出が次から次へと溢れてまた涙も溢れた。

あんなに泣いたのに。

スッキリしたはずなのに。

不思議。

涙が枯れるまで泣いた。
心が満たされていくのを感じた。

代わりに勇磨のシャツがびしょ濡れになった。

「ナナ、泣きすぎー。俺が風邪引くわ」

Tシャツをパタパタしてふざける。

もう何回こうやって勇磨の胸で泣いたか。

私、もうずっと、こうして欲しかった。

勇磨に助けて欲しかった。

「ごめんね、工藤くん」

そう言う私にデコピンする。

「痛っ何すんの⁈」

私の目を覗き込んで、
ちょっと拗ねた顔をして言った。

「ゆーま」

そう呼べって事?

かわいい。

思わずきゅんとしちゃった事を、
隠すようにふざけた。

え?何?何だって?

そう、からかう私にくすぐり反撃してきた。

きゃーやめてー

必死に抵抗してはずみで勇磨の顔が近づいた。

2人の間に緊張が走る。

「ナナ、俺」

そう言って私を見つめる。
私の両手首を掴む手が熱い。

「2度としないって約束して」

私の言葉に勇磨が固まる。

「私とファンクラブとの間に何かあっても、
勇磨のせいじゃない。
私の気持ちを勝手に想像して決めないで。
勝手に決めつけないで。
勝手に私から離れないで!
勇磨がいなくなるのは、嫌だ。」

瞬間、勇磨の顔が近付き唇が重なった。

驚く私をそのまま抱きしめる。

「好きだ。ずっとナナが好きだ。」

時が止まった。

え、え、ちょっと待って。

今、なんて?

勇磨が、私を好き?

私を?

私を好きになってくれる人っているんだ。

なんていうんだっけ?

捨てる神、拾う神?

違う、そうじゃない。

勇磨が私を?

「気づかなかったろ。
俺がいつもふざけてると思ってたんだろ、どーせ。
俺はいつも本気だったんだけどな」

今までの勇磨の言動がよぎる。
いつもふざけて、私をからかって、好きとか全く感じなかった。
というか妹として扱われてるのかと思ってた。

私を好き?

そんな素振り、分かんなかった。

「中3の妹を抱きしめる高校生はヤバイぞ。
そんな事したらミアンにボコられる。
それに、俺が誰でも構わず抱き寄せると思ってんの!
俺の胸で泣きなーとか変態だろ!
だいたい俺は女嫌いで通ってんだぜ。
ナナ以外とまともに話もしてないだよ。」

いや、そーなんだけど。

それは知ってるんだけど。

「もういいよ。
どうせナナはそんな反応しかしないと思ってたから。
俺の事、好きになったら告ってよ。
待ってるから。
俺はずっとナナが好きだから。
今日はキスだけで許してやる!」

そう言われて気が付いた!

私、初めてだった、キス。

勇磨のバカ!

睨む私に片眉を上げて笑う。

「ナナが悪いんだよ。
俺以外には触らせない約束したのに破ってツバサに」

そこで言葉を切る。

「あームカツク!
ツバサ、なんでナナを抱きしめたんだよ。」

1人でイライラする勇磨。

だからって初キスを奪っていい訳がない。

勇磨の神経、分かんない。

でも。

「約束破ってごめんね。
これからは守るように努力する。」

私のほっぺを両手でひっぱる。

「痛っやめてよ」

「バカナナ!
守るように努力するとか言うやつは守る気ないんだよ。
必ず守れ。いいな。
あと追加な。
俺以外の男を部屋に上げるな」

俺以外。
また中2病出てる。

「言っとくけど中2病じゃない。
俺はナナが好きなんだから、
言う権利がある」

え、そうなの?

だけど、勇磨だって約束破ったじゃん。

「どんな私も嫌いにならないって、
言ったのに勇磨だって約束破ったんだから、
おあいこだからね。」

それには不服だったらしい。

「いや、俺はナナを嫌いにはなってない。
だから怒ったんだ。
ナナはもっと周りをよく見ろ!」

あれ、前にも同じような事を言われたな。

「見てたら俺がナナをどれだけ」

そこでやめて口籠もる。

うん?

何?

ハッキリ言ってよ。

「もう一回チュウさせてくれたら言う」

バカなんだ。

変態勇磨!

キスって、初キスって女の子にとっては一大事なのに。

でも不思議と嫌じゃない。

2回目はダメだけど。

さっき勇磨に言ったのは本当だ。

勇磨がいなくなるのは嫌。

勇磨との約束も守る。

勇磨が大好きだ。

その好きは友達としての好きだと思う。

だけど、初失恋の辛かった今日が、
少し変化した。

新しい何か始まるかもしれない。
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