1 / 64
はじまり
しおりを挟む
長い坂道
桜並木
今年は春が遅れたから、
4月の今も桜がちらほら残ってる。
風に揺られ花びらがはらはらと舞う。
「キレイだよね、私、この坂道好きだなぁ」
隣を歩く今井チカに話しかけた。
チカは中学からの親友だ。
2人で同じ高校に行こうねって約束した。
念願叶って今、こうして登校している。
高校1年15歳の春!
何かいい事が起こりそうな、そんな季節だ。
「ナナミ、部活入らないの?」
うーん。
と生返事。
部活かぁ。
やりたい事ないしな。
「ナナミって運動神経ないしね。
かと言って芸術センスもないしね。」
チカが笑う。
でも、その通りだ。
「ひどいなぁ。で、チカは?
またテニスするの?」
中学の時は軟式テニスの部長だったチカ。
高校生になったら、
硬式テニス部に入りたいって、
ずっと言ってたもんね。
にっこり笑って、チカがピースサインをする。
「今日、仮入部してくる」
そっか、チカ、部活始まるんだ。
ちょっと寂しい。
「でもナナミ、ツバサと遊べばいいじゃん。
最近またよく会ってるんでしょ」
ニヤニヤして私の脇腹をつつく。
「うん、まぁ」
私もニヤニヤする。
ツバサくんは中学の同級生で、
高校は別々だけど時々2人で会う。
友達だけど、友達じゃない。
私がずっと好きだから。
もう3年も想ってる。
「早く告っちゃいなよ。どーせOKなんだろうし。」
そう言ってチカは背中を押してくれるけど、
たぶん、ツバサくんは私を友達としか見てない。
ツバサくんって恐ろしいくらい
恋愛に疎くて鈍い。
毎日に近いくらいメールしてるし、
電話でも話す。
時々会いに来てくれたり、
ツバサくんが行きたい所に付き合う事も多い。
だけど、それには恋愛感情は絡んでない。
ツバサくんに1番近い私がよく分かる。
ツバサくんは私を女の子としてさえ見てないかも。
でも今はこれでいいんだ。
友達でいいの。
近くにいられるから。
近くにいたい。
好きだって伝えて距離ができるのは何よりも怖いから。
「じゃあまたね」
そう言ってクラスの前で別れた。
チカは隣の3組だ。
私は2組の教室に入り、
窓際の1番後ろの席に座った。
ここは特等席だ。
誰もが座りたいでしょ、窓側、1番後ろ!
だから他の子もみんな羨ましいって言う。
まだ深く話した事のない子にも
「木下さんって窓側の1番後ろの席だよね、いいな」って言われるから。
アタリなんだ。
それにしても、
そんなに皆に羨ましがられる程、
景色がいい訳でもないけどね。
席に座ってカバンを掛ける。
ポケットに軽い振動を感じて
携帯を取り出した。
ツバサくんからメールだ。
―おはよ、なぁな、今日暇?―
思わず笑みが浮かぶ。
暇だよ、というか暇じゃなくても暇にする!
暇だよって打った所で、
椅子を引く音がした。
顔を上げて横を見ると隣の席の工藤くんだ。
「おはよう」
そう挨拶をした。
だけど、彼は今日も無愛想。
こちらを見もしないで
「ああ」
と答える。
ホント、この人陰気。
いつも暗くてなんか感じ悪い。
こんなにいい席なのに、なんなの、この人。
これだけはツイてない。
私は窓の外に目を向けて、
放課後、ツバサくんと会える幸せをかみしめた。
隣の陰気野郎の事は忘れよう。
おはようって挨拶は基本だよね。
人間としてどうなの?
あーイラつく。
桜並木
今年は春が遅れたから、
4月の今も桜がちらほら残ってる。
風に揺られ花びらがはらはらと舞う。
「キレイだよね、私、この坂道好きだなぁ」
隣を歩く今井チカに話しかけた。
チカは中学からの親友だ。
2人で同じ高校に行こうねって約束した。
念願叶って今、こうして登校している。
高校1年15歳の春!
何かいい事が起こりそうな、そんな季節だ。
「ナナミ、部活入らないの?」
うーん。
と生返事。
部活かぁ。
やりたい事ないしな。
「ナナミって運動神経ないしね。
かと言って芸術センスもないしね。」
チカが笑う。
でも、その通りだ。
「ひどいなぁ。で、チカは?
またテニスするの?」
中学の時は軟式テニスの部長だったチカ。
高校生になったら、
硬式テニス部に入りたいって、
ずっと言ってたもんね。
にっこり笑って、チカがピースサインをする。
「今日、仮入部してくる」
そっか、チカ、部活始まるんだ。
ちょっと寂しい。
「でもナナミ、ツバサと遊べばいいじゃん。
最近またよく会ってるんでしょ」
ニヤニヤして私の脇腹をつつく。
「うん、まぁ」
私もニヤニヤする。
ツバサくんは中学の同級生で、
高校は別々だけど時々2人で会う。
友達だけど、友達じゃない。
私がずっと好きだから。
もう3年も想ってる。
「早く告っちゃいなよ。どーせOKなんだろうし。」
そう言ってチカは背中を押してくれるけど、
たぶん、ツバサくんは私を友達としか見てない。
ツバサくんって恐ろしいくらい
恋愛に疎くて鈍い。
毎日に近いくらいメールしてるし、
電話でも話す。
時々会いに来てくれたり、
ツバサくんが行きたい所に付き合う事も多い。
だけど、それには恋愛感情は絡んでない。
ツバサくんに1番近い私がよく分かる。
ツバサくんは私を女の子としてさえ見てないかも。
でも今はこれでいいんだ。
友達でいいの。
近くにいられるから。
近くにいたい。
好きだって伝えて距離ができるのは何よりも怖いから。
「じゃあまたね」
そう言ってクラスの前で別れた。
チカは隣の3組だ。
私は2組の教室に入り、
窓際の1番後ろの席に座った。
ここは特等席だ。
誰もが座りたいでしょ、窓側、1番後ろ!
だから他の子もみんな羨ましいって言う。
まだ深く話した事のない子にも
「木下さんって窓側の1番後ろの席だよね、いいな」って言われるから。
アタリなんだ。
それにしても、
そんなに皆に羨ましがられる程、
景色がいい訳でもないけどね。
席に座ってカバンを掛ける。
ポケットに軽い振動を感じて
携帯を取り出した。
ツバサくんからメールだ。
―おはよ、なぁな、今日暇?―
思わず笑みが浮かぶ。
暇だよ、というか暇じゃなくても暇にする!
暇だよって打った所で、
椅子を引く音がした。
顔を上げて横を見ると隣の席の工藤くんだ。
「おはよう」
そう挨拶をした。
だけど、彼は今日も無愛想。
こちらを見もしないで
「ああ」
と答える。
ホント、この人陰気。
いつも暗くてなんか感じ悪い。
こんなにいい席なのに、なんなの、この人。
これだけはツイてない。
私は窓の外に目を向けて、
放課後、ツバサくんと会える幸せをかみしめた。
隣の陰気野郎の事は忘れよう。
おはようって挨拶は基本だよね。
人間としてどうなの?
あーイラつく。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
アクセサリー
真麻一花
恋愛
キスは挨拶、セックスは遊び……。
そんな男の行動一つに、泣いて浮かれて、バカみたい。
実咲は付き合っている彼の浮気を見てしまった。
もう別れるしかない、そう覚悟を決めるが、雅貴を好きな気持ちが実咲の決心を揺るがせる。
こんな男に振り回されたくない。
別れを切り出した実咲に、雅貴の返した反応は、意外な物だった。
小説家になろうにも投稿してあります。
イケメンエリート軍団の籠の中
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
唯一の女子、受付兼秘書係が定年退職となり
女子社員募集要項がネットを賑わした
1名の採用に300人以上が殺到する
松村舞衣(24歳)
友達につき合って応募しただけなのに
何故かその超難関を突破する
凪さん、映司さん、謙人さん、
トオルさん、ジャスティン
イケメンでエリートで華麗なる超一流の人々
でも、なんか、なんだか、息苦しい~~
イケメンエリート軍団の鳥かごの中に
私、飼われてしまったみたい…
「俺がお前に極上の恋愛を教えてやる
他の奴とか? そんなの無視すればいいんだよ」
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる