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なんで、ツバサくんが、ナナちゃんを
特別に思うのか。

ナナちゃんは気持ちを隠してまでも、
ツバサくんのいい友だちでいて、
今まで支えてきた。

一緒に遊んで笑って励まして、寄り添って。
女の子だからこそ、
細かい配慮もできたから、
ツバサくんも居心地がいいんだ。

だから、離れられない。
ずっと友だちだ。

あの女嫌いで、無愛想で、
高い壁を作る工藤くんが、
なんで、ナナちゃんには心を許すのか。

きっとナナちゃんは、
工藤くんの中の何かを見つけて、
それで友だちになった。
工藤くんだから、じゃなくて、
友だちになるプロセスがあったんだ。
だから、工藤くんもナナちゃんを認めた。

なんで2人ともナナちゃんが好きなのか、
ハッキリと分かった。

私はナナちゃんとは全く違う。

私じゃツバサくんの1番になれない。

ダメだ、敗北感。

「おい、ナナ、コーヒー買いに行くぞ」

そう言って、
工藤くんが、ナナちゃんを連れて
海を臨むカフェに向かった。

きっと、私から離したかったんだな。
工藤くんはナナちゃんが好きなんだろう。

いいなぁ、ナナちゃんは。
みんなに好かれて。
私の好かれてるのとは違う。

「香澄ちゃん?どうしたの?元気ないね」

ツバサくんが心配そうに言った。

あ、いや。
あの‥。

何も言えずにいる私に

「香澄ちゃんが元気ないと、
オレも元気になれない。」

そんな事言われても‥。

そのまま表情に出たのか
「あ、いや、ごめん。香澄ちゃんだって、
元気ない日もあるよね。
いや、オレの勝手な願望であって。
香澄ちゃんはいつも明るくて、
オレに色々と教えてくれるし。
ちゃんと怒ってくれるし。
だから、その。」

思わず笑っちゃった。
何を言っているの?

私の様子にホッとしたような顔をする。

「あ、笑った!良かった」

その優しい笑顔を私だけに向けて欲しい。
ナナちゃんみたいにできないけど。

「ナナちゃんはすごいね。
優しくて広いよね。
だから、ツバサくんも、
ナナちゃんが特別なんだね。
私は、ずるいし狭いから‥。」

あの返事はもういらない。

そう言おうと思って口籠った。

瞬間、頬にツバサくんの指が触れた。

「砂、ついてる」

なんだ、砂か。

がっかりしたのに、

「うそ、触りたかった、ごめん」

その一言で、ドキドキが止まらなくなった。
ど、ど、ど、どういう、こと?
ツバサくんって、そういうタイプじゃ
ないよね?

「だ、いじょ、うぶ」

やっとのことで絞り出した答えに

「ごめん、オレ、最近、なんか変で。」
そう言って頭をかく。

「いや、違うな、オレのことはいいんだ。
香澄ちゃんはなぁなと違うよ。全く。
正反対くらい違う。」

その言葉に心がえぐられる。
うん、思い知ったよ。
だから、返事は‥。

「だから、いいんだよ。オレ、
なぁなといると頼ってだらしないんだけど
でも、安心できてね、ホッとする。
香澄ちゃんといると、
ちょっとドキドキしちゃって
オレらしくない事思っちゃったり、
したり、でも、オレ‥。」



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