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工藤くんの提案で映画の後は、
海で遊ぶ事になった。

ナナちゃんへの違和感が消えず、
海への道のりで話しかけた。

私、ライバルの事、何も知らなかった。

嫌な子、気が多い子、
ツバサくんにツライ思いをさせる子、
かまってちゃん。男好き。
としか思ってない。

もしかしたら、
私の勘違いだったのかもしれない。

だって、
工藤くんを、ファンクラブを利用しない。

ツバサくんがこんなに頼りにしてる。

そんな彼女だから、知りたい。
ツバサくんが、あなたのどこに、
そんなに特別なものを感じているのか。

私と全く違う感覚を知らないと、
ツバサくんの1番になれない!

「ナナちゃん、少し、話、してもいい?」

そう話しかけた。

工藤くんが警戒した顔で私を見たけど、
そんな工藤くんを安心させるように、

「うん、私も香澄ちゃんと話したいと思ってたぁ」
と、必要以上に明るく答えた。

工藤くんとツバサくんの後ろを、
2人で歩きながら聞いた。

「あの、さっき、映画館で、女の子達が
ナナちゃんに何か言ってるの、聞こえた?」

デリカシーなかったかも、私。

でも、ナナちゃんは、
ああ、と気にも留めない様子。

「うん、ブスとかムカツクとか言ってたね。
こっちこそ、ムカツクよぉ。でも、
ブスは言われる程じゃないと思うんだけど。」

そう言ってケラケラと笑う。

「でも、それって、工藤くんと仲良しだから、
嫉妬されて意地悪されてるんだよね?」
「だったら、工藤くんに助けてもらったら、
いいんじゃないかな?」

私の言葉に吹き出して笑い出した。

なんで、何がおかしいのか、わからない。
でも、ナナちゃんは笑う。

「勇磨に?なんで?
関係ないもん、勇磨は。
私のしたい事にムカツクんだから、
私の問題だよぉ。
それに、守られる必要ないし」

え、なんで?

「だって、守ってもらいたいでしょ。
工藤くんに守ってもらえたら、
嬉しいよね?」

あの、工藤くんだよ!
みんなが、大好きな工藤くんだよ!

「私が勝手にケンカしてるのに、
勇磨に守ってもらうなんて、変だよぉ。
守ってもらうくらいなら、
ケンカすんなって話だし。」

また笑う。

なんなの?
どういうこと?

「私、勇磨といると楽しいんだ。
友だちだから一緒にいるのに、
それをうるさく言われたら、
私だってムカツクもん。
しかも、うるさい子はみんな、
勇磨の外見に騙されてるんだよ。
中身はその辺の高校生と同じアホなのに!
外見なんて、おじいちゃんになったら、
しわくちゃなのにね。笑える!」

なんだろ。
ツバサくんに似てるのかな。

考え方が独特で、空気とか読まなくて
自分の信念みたいな、そんなのを大切に
している感じ。

私、やっぱり、誤解していたかもしれない。

ナナちゃんなら、
気を引く為に、工藤くんに
泣きつくと思ってた。

ツバサくんにも、
工藤くんのファンが怖いって、
泣きつくと思ってた。

両方、欲しいんだから。
なんでも欲しいから、逃さないと思ってた。

でも、それをしない。

工藤くんとツバサくんに対して、
ナナちゃんは何の小細工もしてない?

普通の子ならするところですら、しない。
思いつきもしない。

工藤くんの外見とか、オーラとか。
スペックとか、地位とか。
そんなのは見てないのかもしれない。
考えにくいけど、でも、
「ナナは天然」
って工藤くんも言ってた。

それは工藤くんの付加価値じゃなくて、
本体、中身が好きで友だちなのかもしれない。

そんな、人の価値を見れるなんて。
心が素直で広くて優しくて。
強くて。
頼りがいがあって。

そんな彼女が、全力でツバサくんを
支えようとしてる。

ダメだ。

勝てない。

勝てる気がしない。
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