1 / 11
1
しおりを挟む
きらめくイルミネーションと
浮き足だった人々の流れを、
なんとなく見ていた。
いつもの仲間と、
ダンス終わりのクールダウン。
地元のショッピングモールでさえ、
こんなに華やいでいるんだから、
12月ってすごいなぁ。
そういえば、いつもの観覧車も、
冬バージョンは幻想的だ。
なんでイルミネーションって、
冬だけなんだろう。
「1年中、キラキラしてたらいいのに。」
そう言う私に
「うーん。
夏は陽が沈むのが遅いからか?
19時でも明るいもんな。
それに照明で余計暑苦しいだろ」
トモの意見は、なんかヤダ。
トモは同じ高校に通うダンス仲間だ。
歳だって同じなのに、
なんかいつも冷静で上から目線なんだよな。
でも、冷めてるように見えて、
実はダンスには人一倍熱い男。
彼女にも熱い男だった!
彼女のアヤノもまた
私のダンス仲間で幼なじみだ。
アヤノといる時は、
デレデレだったりするのかなぁ。
まぁ、どうでもいいか。
そんなバカバカしい事を考えながら
時間を潰し、勇磨を待っていた。
遅いなぁ、勇磨。
またファンクラブに囲まれてるのかなぁ。
同じクラスで隣の席の勇磨。
初めはそのコミュ力の無さと
感じ悪さとで苦手なタイプだった。
ケンカも何回もした。
でも色々あって、
今は勇磨のいない世界なんて考えられない。
私にとっては大切だ。
勇磨も私を好きだって言ってくれた。
でも、勇磨、モテるから。
アイドルみたいに、いつも注目されるから、
私のヤキモキが止まらない。
いつか誰かに取られちゃうんじゃないかって。
そんな事、考えても仕方ないのに。
なんか最近、特に怖い。
怖くて怖くてうまく隠せなくて、
嫌な態度をとってしまう。
今日は、ケンカしたくない。
大好きな彼を待っているのに。
キレイなイルミネーションの中で。
恋人をまっているのに、心が重い。
怖い。
「お待たせ」
その声に弾かれ現実に戻った。
白い息を吐きながら、笑う勇磨。
その笑顔に一瞬で不安がふっとんだ。
いつもは前髪が眉を隠してるのに、
今日は乱れておでこが見える。
茶色いサラサラな髪と、
同じ色の瞳はくっきり二重で、
まつ毛なんて私より長いんじゃない?
猫みたい。
ヤバ。
久しぶりに会うから、余計に素敵度が増す!
勇磨達、バスケ部は大会続きで、
しかも勝ち抜いてるらしく、1週間公欠した。
3年生も引退した今、
1年生の勇磨もかなりの戦力らしく、
練習にも熱が入っているのが伝わる。
頑張ってほしい、本当に応援してる。
来週からは期末テストが始まる。
それが終われば冬休み。
また勇磨に会えない。
でも、やっと会えた。
なんかドキドキする。
息を切らして空を仰ぐ勇磨、
走って来てくれたんだ。
本物だ、夢じゃない。
ずっと会いたかったよ。
でも我慢してた。
「勇磨、あのね、ダンスで、」
はしゃぐ私とは正反対に、
勇磨が眉を寄せて私の全身を見渡した。
「ナナ、スゲェ服。俺、その服、キライ」
うん?服?
何?いきなり?どういうこと?
その一言で途端にピンクの空気が消え失せる。
確かに、前も言ってたな。
ダンスの服、派手でイヤって。
まぁ、確かに派手だよね。
特に私はカタチから入りたいから、
奇抜なデザインとか、カラフルなのが好き。
だけどさぁ、これって私の自由じゃん!
なんだよ、久々に会えたのに!
そんな事、言わなくてもいいじゃん!
せっかく、楽しく過ごそうと思ったのに。
「別に勇磨の為に着てるんじゃないし。
自分が好きで動きやすいし、気持ちが上がるから着てるの!」
私の反論にあからさまにムッとする。
「コートは?」
?
ああ、コートね。
横に置いておいたコートを羽織った。
羽織って気がつく。
クールダウンしすぎた、寒いっ。
私のコートの襟を持って、しっかりと前を閉めて着せ直す。
ダンスチームの仲間に冷やかされ、恥ずかしさが増す。
もう、こどもじゃないんたからっ。
やめてよ。
まだムッとしたままの勇磨が、上目遣いで睨む。
「なぁ、露出しすぎじゃねぇか。
肩とか落ちてるし、かがむとこの辺が見える。」
自分の胸元をたたく。
慌てて私も胸元を押さえたけど。
え、でも待って!
「下にタンクトップ着てるんですけど!
中、見えないし。下に着てるんだから、
肩が見えてもいいじゃん!」
その言葉に更に炎上する。
「本気で言ってんの?
俺、何回も言ってるよな。女は簡単に見せるな」
はあ?
何、女って?
この時代にその発言、アウトなんですけど。
目の前でイライラして怒る勇磨に、全く納得いかない。
「見せてないし」
見えちゃうのと見せるのは意味が違う!
「そういう問題じゃないの!
他の奴に想像されるのも、変な目で見られるのも、俺がイヤだって言ってるの!」
自分の頭をかきむしる勇磨。
何それ、それ、そっちの問題じゃん。
私は関係ない。
押し付けないで。
だけど。
勇磨はいつも、こうだ。
私を心配して、私を大切にしてくれている。
俺以外はダメって色々と約束をさせられる。
親以外に心配される事に慣れない私は、
ちょっとうるさくも感じる。
私の事なのに、押し付けるなってイライラもする。信用しろって思う。
だけど、でも、私も同じ事、思うから。
信用してても、私以外の子に近付いて欲しくない。
だから。
不本意だけど、納得いかないけど、一旦、折れる。
「分かった」
それだけいう私に満足して、手を繋いでくれた。
「よし、分かればいい。じゃあ帰るか」
横を歩く勇磨を見上げた。
会いたかったな、ずっと。
やっと会えた。
今日はこのまま、ケンカしないで過ごしたい。
イルミネーション見て、それから。
浮き足だった人々の流れを、
なんとなく見ていた。
いつもの仲間と、
ダンス終わりのクールダウン。
地元のショッピングモールでさえ、
こんなに華やいでいるんだから、
12月ってすごいなぁ。
そういえば、いつもの観覧車も、
冬バージョンは幻想的だ。
なんでイルミネーションって、
冬だけなんだろう。
「1年中、キラキラしてたらいいのに。」
そう言う私に
「うーん。
夏は陽が沈むのが遅いからか?
19時でも明るいもんな。
それに照明で余計暑苦しいだろ」
トモの意見は、なんかヤダ。
トモは同じ高校に通うダンス仲間だ。
歳だって同じなのに、
なんかいつも冷静で上から目線なんだよな。
でも、冷めてるように見えて、
実はダンスには人一倍熱い男。
彼女にも熱い男だった!
彼女のアヤノもまた
私のダンス仲間で幼なじみだ。
アヤノといる時は、
デレデレだったりするのかなぁ。
まぁ、どうでもいいか。
そんなバカバカしい事を考えながら
時間を潰し、勇磨を待っていた。
遅いなぁ、勇磨。
またファンクラブに囲まれてるのかなぁ。
同じクラスで隣の席の勇磨。
初めはそのコミュ力の無さと
感じ悪さとで苦手なタイプだった。
ケンカも何回もした。
でも色々あって、
今は勇磨のいない世界なんて考えられない。
私にとっては大切だ。
勇磨も私を好きだって言ってくれた。
でも、勇磨、モテるから。
アイドルみたいに、いつも注目されるから、
私のヤキモキが止まらない。
いつか誰かに取られちゃうんじゃないかって。
そんな事、考えても仕方ないのに。
なんか最近、特に怖い。
怖くて怖くてうまく隠せなくて、
嫌な態度をとってしまう。
今日は、ケンカしたくない。
大好きな彼を待っているのに。
キレイなイルミネーションの中で。
恋人をまっているのに、心が重い。
怖い。
「お待たせ」
その声に弾かれ現実に戻った。
白い息を吐きながら、笑う勇磨。
その笑顔に一瞬で不安がふっとんだ。
いつもは前髪が眉を隠してるのに、
今日は乱れておでこが見える。
茶色いサラサラな髪と、
同じ色の瞳はくっきり二重で、
まつ毛なんて私より長いんじゃない?
猫みたい。
ヤバ。
久しぶりに会うから、余計に素敵度が増す!
勇磨達、バスケ部は大会続きで、
しかも勝ち抜いてるらしく、1週間公欠した。
3年生も引退した今、
1年生の勇磨もかなりの戦力らしく、
練習にも熱が入っているのが伝わる。
頑張ってほしい、本当に応援してる。
来週からは期末テストが始まる。
それが終われば冬休み。
また勇磨に会えない。
でも、やっと会えた。
なんかドキドキする。
息を切らして空を仰ぐ勇磨、
走って来てくれたんだ。
本物だ、夢じゃない。
ずっと会いたかったよ。
でも我慢してた。
「勇磨、あのね、ダンスで、」
はしゃぐ私とは正反対に、
勇磨が眉を寄せて私の全身を見渡した。
「ナナ、スゲェ服。俺、その服、キライ」
うん?服?
何?いきなり?どういうこと?
その一言で途端にピンクの空気が消え失せる。
確かに、前も言ってたな。
ダンスの服、派手でイヤって。
まぁ、確かに派手だよね。
特に私はカタチから入りたいから、
奇抜なデザインとか、カラフルなのが好き。
だけどさぁ、これって私の自由じゃん!
なんだよ、久々に会えたのに!
そんな事、言わなくてもいいじゃん!
せっかく、楽しく過ごそうと思ったのに。
「別に勇磨の為に着てるんじゃないし。
自分が好きで動きやすいし、気持ちが上がるから着てるの!」
私の反論にあからさまにムッとする。
「コートは?」
?
ああ、コートね。
横に置いておいたコートを羽織った。
羽織って気がつく。
クールダウンしすぎた、寒いっ。
私のコートの襟を持って、しっかりと前を閉めて着せ直す。
ダンスチームの仲間に冷やかされ、恥ずかしさが増す。
もう、こどもじゃないんたからっ。
やめてよ。
まだムッとしたままの勇磨が、上目遣いで睨む。
「なぁ、露出しすぎじゃねぇか。
肩とか落ちてるし、かがむとこの辺が見える。」
自分の胸元をたたく。
慌てて私も胸元を押さえたけど。
え、でも待って!
「下にタンクトップ着てるんですけど!
中、見えないし。下に着てるんだから、
肩が見えてもいいじゃん!」
その言葉に更に炎上する。
「本気で言ってんの?
俺、何回も言ってるよな。女は簡単に見せるな」
はあ?
何、女って?
この時代にその発言、アウトなんですけど。
目の前でイライラして怒る勇磨に、全く納得いかない。
「見せてないし」
見えちゃうのと見せるのは意味が違う!
「そういう問題じゃないの!
他の奴に想像されるのも、変な目で見られるのも、俺がイヤだって言ってるの!」
自分の頭をかきむしる勇磨。
何それ、それ、そっちの問題じゃん。
私は関係ない。
押し付けないで。
だけど。
勇磨はいつも、こうだ。
私を心配して、私を大切にしてくれている。
俺以外はダメって色々と約束をさせられる。
親以外に心配される事に慣れない私は、
ちょっとうるさくも感じる。
私の事なのに、押し付けるなってイライラもする。信用しろって思う。
だけど、でも、私も同じ事、思うから。
信用してても、私以外の子に近付いて欲しくない。
だから。
不本意だけど、納得いかないけど、一旦、折れる。
「分かった」
それだけいう私に満足して、手を繋いでくれた。
「よし、分かればいい。じゃあ帰るか」
横を歩く勇磨を見上げた。
会いたかったな、ずっと。
やっと会えた。
今日はこのまま、ケンカしないで過ごしたい。
イルミネーション見て、それから。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【短編】婚約者に虐げられ続けた完璧令嬢は自身で白薔薇を赤く染めた
砂礫レキ
恋愛
オーレリア・ベルジュ公爵令嬢。
彼女は生まれた頃から王妃となることを決められていた。
その為血の滲むような努力をして完璧な淑女として振舞っている。
けれど婚約者であるアラン王子はそれを上辺だけの見せかけだと否定し続けた。
つまらない女、笑っていればいいと思っている。俺には全部分かっている。
会う度そんなことを言われ、何を言っても不機嫌になる王子にオーレリアの心は次第に不安定になっていく。
そんなある日、突然城の庭に呼びつけられたオーレリア。
戸惑う彼女に婚約者はいつもの台詞を言う。
「そうやって笑ってればいいと思って、俺は全部分かっているんだからな」
理不尽な言葉に傷つくオーレリアの目に咲き誇る白薔薇が飛び込んでくる。
今日がその日なのかもしれない。
そう庭に置かれたテーブルの上にあるものを発見して公爵令嬢は思う。
それは閃きに近いものだった。
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】旦那様は元お飾り妻を溺愛したい
春野オカリナ
恋愛
デビュタントでお互いに一目惚れしたコーネリアとアレクセイは5年の婚約期間を終えて、晴れて結婚式を挙げている。
誓いの口付けを交わす瞬間、神殿に乱入した招からざる珍客せいで、式は中断・披露宴は中止の社交界を駆け巡る大醜聞となった。
珍客の正体はアレクセイの浮気相手で、彼女曰く既に妊娠しているらしい。当事者のアレクセイは「こんな女知らない」と言い張り、事態は思わぬ方向へ。
神聖な儀式を不浄な行いで汚されたと怒った神官から【一年間の白い結婚】を言い渡され、コーネリアは社交界では不名誉な『お飾り妻』と陰口を叩かれるようになる。
領地で一年間を過ごしたコーネリアにアレクセイは二度目のプロポーズをする。幸せになりたい彼らを世間は放ってはくれず……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる