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しおりを挟む「ようこそいらっしゃいました。」
空間の歪みが収まりしばらく目を開けると目の前にはティーカップとお菓子をトレーに置き持っているネーベルス神官長が居た。
クラシックな机や椅子が置いてあり、部屋の大きさは先程のユリアの自室より些か小さく感じる。そこにネーベルスがいる、と言うことはここは神殿の一室なのだろう。
「お招きいただきありがとうございます。」
驚いたものの淑女として一応の挨拶をとるユリア。一方ヌータはユリアの左手足にピッタリとくっつき離れない。
小さな淑女の挨拶を見てネーベルスが微笑む。
「突然の招きで申し訳ありません。しかしこの機だと思い使いを出しました。」
どうぞかけてください、そう言いユリアが席に着き調べが行われた。
机にはティーカップが2つとクッキーのお菓子が入ったお皿と他に分厚い本が数冊置かれていたが、肝心の水晶は置かれていなかった。
「早速ですが本題に入りたいと思います。貴女は無属性のみですね。」
「むぞくせいですか。だからすいしょうが変わらなかったのかー。」
無属性、つまりは生活魔法のみということである。別に属性魔法を使わなくても日常生活を過ごすには差し支えない。職業選択の幅は狭まるがそれでも高官職になる場合もあるから特に魔法が使えなくても構わないし、ユリアは伯爵家の1人娘であり将来の事で困ることはない。(滅多な事が起こらない限りだか)
かと言って子供の頃は誰しも魔法というものを使いたいものだ。それはユリアも例外ではない。
ー水とか出してみたかったのにな。
意味もなく手の腹を見て握ったり広げる動作を繰り返す。その行動を見ていたヌータはワフン、とひと吠えし頭を膝に擦り付ける様にじゃれついた。
その一連の行動を和やかに見守っていたネーベルスが小さく咳払いをし口を開いた。
「属性こそは有りませんが、貴女には神眼というスキルを持っています。」
「しんがん?聞いたことありませんわ」
「えぇ。まずはスキルという言葉を聞いたことはありますか?」
「はい。かるくですが知っています。」
スキルとは魔法とはまた違う能力のことである。遺伝的なものは一切なく、一個人特有のもので多種多様だ。
スキルには先天性と後天性があり、両者は質の違いはあるものの、種類によっては磨けばより強くなるものもありあまり両者の差は関係ない。
「神眼とは神の御言葉を理解する者のことですね。磨けば神と謁見する事になります。」
神眼は後天性も取得できるスキルで、見習い神官達はこのスキル取得のため修行する。
また、スキルを得ても全てを理解している訳でないのでこれまた鍛錬する。
先天性と後天性の違いはその後の神への謁見権利だ。自動的に得られるものではなく、先天性スキル持ちも修行しなければできないが、後天性はどんなに優秀な人物でも微かに声を聴くのみであり、神官長のネーベルスしか謁見することが出来ず、後継者として神殿では喉から手が出る程先天性神眼スキルを望んでいる。‥らしい。
「神のみことば、ですか。」
「えぇ、まず此方をご覧下さい。」
ユリアの前に出されたのは先程から机に置いてあった本だった。
「『神言の初歩』?」
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