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番外編(悠side⑥)
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絢聖の流されやすさに、こんなに感謝したことが、かつてあっただろうか。
「綺麗…すっごい、ぷっくりしてて可愛い」
花束を抱える絢聖の表情は明るく、テンションが高い。まるで、初恋に騒ぐ女学生のようだった。
「よかった…今日、スズランの日だから。お前に似合いそうな花だなって…そう思ったら、買ってた」
「悠が?スズランの日って、フランスの習慣だよね?それも、日本にはあんまり浸透してないと思うけど」
疑われても仕方ない。俺が知ってる花は、マグノリア、薔薇、桜、百合、ポインセチアぐらいだ。
「いや…その花屋でフェアみたいのやってて」
苦し紛れの嘘だが、秋頼のアドバイスとは言えない。
「あぁ…都心のフラワーショップなら、たまに売り出してるよね」
「そうなんだよ!買ってよかった」
「もう、急に洒落たことしてくれるから、秋頼さんに、気を遣われたのかと思った」
「えっ?」
「だって、あの人、パートナーに花ぐらいやったらどうだ?とか言いそうだし…ロマンチストだしさ」
ロマンチストなのは、絢聖もだろ。だけど、俺はこいつの夢見がちなところを軽視し過ぎていた。こんなに喜んでくれるなら、マメに気に掛ければよかった。
「やっぱさ…こういうのって嬉しいの?俺さ…正直、親父とか、絢聖みたいな情緒を持ち合わせてないタイプだから…その…ごめん」
「気にしなくていいよ。何だろ…もらえるのはもちろん嬉しいんだけど、自分の為に選んでくれた、その時間、僕のことを考えてくれたっていう事実に…すごく満たされた気分になるというか…だから、無理してするもんでもないでしょ?」
「えっ?」
「お花嬉しかったよ。でも、今までこういうことをあまりしなかったのって、してあげたいという気持ちが沸かなかったって事でしょ?だったら仕方ないじゃない…謝る必要なんてない」
彼なりの気遣いなんだろうが、発言が心に刺さる。そんな風に思わせてしまっていたのか。
「僕だって、前と同じ熱量で、悠にご飯作ってあげれてないし、お互い気楽でいようよ。お花…花瓶に挿してくるね」
リビングに消える絢聖の背中を再び抱き締めることが、俺には出来なかった。
「綺麗…すっごい、ぷっくりしてて可愛い」
花束を抱える絢聖の表情は明るく、テンションが高い。まるで、初恋に騒ぐ女学生のようだった。
「よかった…今日、スズランの日だから。お前に似合いそうな花だなって…そう思ったら、買ってた」
「悠が?スズランの日って、フランスの習慣だよね?それも、日本にはあんまり浸透してないと思うけど」
疑われても仕方ない。俺が知ってる花は、マグノリア、薔薇、桜、百合、ポインセチアぐらいだ。
「いや…その花屋でフェアみたいのやってて」
苦し紛れの嘘だが、秋頼のアドバイスとは言えない。
「あぁ…都心のフラワーショップなら、たまに売り出してるよね」
「そうなんだよ!買ってよかった」
「もう、急に洒落たことしてくれるから、秋頼さんに、気を遣われたのかと思った」
「えっ?」
「だって、あの人、パートナーに花ぐらいやったらどうだ?とか言いそうだし…ロマンチストだしさ」
ロマンチストなのは、絢聖もだろ。だけど、俺はこいつの夢見がちなところを軽視し過ぎていた。こんなに喜んでくれるなら、マメに気に掛ければよかった。
「やっぱさ…こういうのって嬉しいの?俺さ…正直、親父とか、絢聖みたいな情緒を持ち合わせてないタイプだから…その…ごめん」
「気にしなくていいよ。何だろ…もらえるのはもちろん嬉しいんだけど、自分の為に選んでくれた、その時間、僕のことを考えてくれたっていう事実に…すごく満たされた気分になるというか…だから、無理してするもんでもないでしょ?」
「えっ?」
「お花嬉しかったよ。でも、今までこういうことをあまりしなかったのって、してあげたいという気持ちが沸かなかったって事でしょ?だったら仕方ないじゃない…謝る必要なんてない」
彼なりの気遣いなんだろうが、発言が心に刺さる。そんな風に思わせてしまっていたのか。
「僕だって、前と同じ熱量で、悠にご飯作ってあげれてないし、お互い気楽でいようよ。お花…花瓶に挿してくるね」
リビングに消える絢聖の背中を再び抱き締めることが、俺には出来なかった。
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