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秘密のピアス
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予想通り悠は、ファーストピアスにすぐには気付かず、穴が安定した頃にそれに気付いた。
「穴開けたの?」
「うん…つけたいピアスあって」
秋頼に買ってもらった深い緑のピアスはビンテージガラスを使用したクラシカルなデザインのものだ。
「これがつけたかったピアス?何の石?」
「石じゃないよ…ビンテージガラス」
「ビンテージガラス?」
「昔作られたガラスを再利用して作られてるの!」
秋頼も石を勧めてきたが、彼が誕生した年に生産されたこのガラスを身につけたかった。それを、秋頼に伝えたら照れていてその姿が可愛かった。
「なるほどな…絢聖、クラシカルとか、アンティークとか、ビンテージとかそういうの昔から好きだもんな…。だけど緑とか珍しくない?」
「えっ?」
悠が自分の好みを把握している…予想外だ。
「えっ…て何だよ。違った?」
「違わないけど、よく知ってたなって」
「わかるよ…旅行行く時、クラシカルホテルとか選ぶでしょ?だから、そういうの好きなんだろうなって」
「確かに…よく憶えていたね」
「憶えてるよ。色だってそうだよ…淡い色好むじゃん…シャーベットカラーっていうの?何ていうか、やわらかくてよくわかんない色」
「よくわかんない?」
「繊細な色っていう意味。俺、パキッとした色しか理解出来なくて。いつもなら薄い色を選ぶのに、深緑とか身につけるの珍しいなって…どうしたの?好み変わった?」
今日の悠はやたらと話す…僕のことも聞いてくる。それに妙に鋭い。
「変わったわけじゃないけど…たまには良いかなって。もうすぐ三十歳だし、深みのある色も身につけてみようかなって」
流石に秋頼のことを伝えるわけにはいかない。だが、たまには違う色を身につけたいとも思ったことに嘘はない。
「なるほどね…そういう繊細な楽しみ方いいかも。年齢とか季節とか細かな楽しみ方が出来ないからな俺。絢聖が羨ましい」
「どういう意味?」
自分の繊細さを否定されているようで不快だ。ついキツく言い返してしまう。
「あっ…悪い意味じゃないよ。あんまり俺、感性豊かじゃないから…絢聖みたいになれたら、もっと情緒豊かに生きれたんだろうなって」
「情緒豊か過ぎるのも苦労するよ…」
「そっか、ないものねだりなのかな」
否定されたわけではないらしい。悠は自分を真っ直ぐ見てくれているのに、自分は彼のことを歪んで認識してしまっている。
お互い、違うところに惹かれたはずなのに、その違いに淋しさを感じている。悠は僕の繊細さを羨ましいというけれど、自分は悠の鈍さに嫌気が差している。最初はそこも含めて好きだったはずなのに…。
秋頼の、細かなことに気付いてくれる優しさに満たされてしまっている。
「そうかもよ?あのさ…ピアス開けたの怒らないの?」
「怒らないよ…傷がついたのは嫌だけど、それは俺だけの気持ちだし。お互い大人なんだからそこまで干渉しないよ」
「そっか…ありがとう」
「開けた時、痛かった?」
「あんまり痛くなかったかな…秋頼さん開けるの上手なのかも」
「親父が開けたの?」
「うん…ほら、職場に秋頼さんが迎えに来てくれた日あったでしょ?あの時約束して、それで開けてもらった」
「あぁ…あれか。親父と飲んで帰ってきた日ね」
悠の機嫌が悪くなる。そもそも、悠が迎えに来る予定だったのだ。自分から約束を破っておいて、その態度は酷い。
「悠だって、友達と食事してた」
「まぁ、そうなんだけど。ごめん」
めずらしく悠の態度がやわらかい。どうしたんだろう。
「別に、前のことだからもう気にしてない」
「そっか。まぁ、穴が化膿しなかったならよかった」
そう言いながらも、悠が面白くなさそうにしている。その意味がわからなくて、ただ戸惑うことしか出来なかった。
「穴開けたの?」
「うん…つけたいピアスあって」
秋頼に買ってもらった深い緑のピアスはビンテージガラスを使用したクラシカルなデザインのものだ。
「これがつけたかったピアス?何の石?」
「石じゃないよ…ビンテージガラス」
「ビンテージガラス?」
「昔作られたガラスを再利用して作られてるの!」
秋頼も石を勧めてきたが、彼が誕生した年に生産されたこのガラスを身につけたかった。それを、秋頼に伝えたら照れていてその姿が可愛かった。
「なるほどな…絢聖、クラシカルとか、アンティークとか、ビンテージとかそういうの昔から好きだもんな…。だけど緑とか珍しくない?」
「えっ?」
悠が自分の好みを把握している…予想外だ。
「えっ…て何だよ。違った?」
「違わないけど、よく知ってたなって」
「わかるよ…旅行行く時、クラシカルホテルとか選ぶでしょ?だから、そういうの好きなんだろうなって」
「確かに…よく憶えていたね」
「憶えてるよ。色だってそうだよ…淡い色好むじゃん…シャーベットカラーっていうの?何ていうか、やわらかくてよくわかんない色」
「よくわかんない?」
「繊細な色っていう意味。俺、パキッとした色しか理解出来なくて。いつもなら薄い色を選ぶのに、深緑とか身につけるの珍しいなって…どうしたの?好み変わった?」
今日の悠はやたらと話す…僕のことも聞いてくる。それに妙に鋭い。
「変わったわけじゃないけど…たまには良いかなって。もうすぐ三十歳だし、深みのある色も身につけてみようかなって」
流石に秋頼のことを伝えるわけにはいかない。だが、たまには違う色を身につけたいとも思ったことに嘘はない。
「なるほどね…そういう繊細な楽しみ方いいかも。年齢とか季節とか細かな楽しみ方が出来ないからな俺。絢聖が羨ましい」
「どういう意味?」
自分の繊細さを否定されているようで不快だ。ついキツく言い返してしまう。
「あっ…悪い意味じゃないよ。あんまり俺、感性豊かじゃないから…絢聖みたいになれたら、もっと情緒豊かに生きれたんだろうなって」
「情緒豊か過ぎるのも苦労するよ…」
「そっか、ないものねだりなのかな」
否定されたわけではないらしい。悠は自分を真っ直ぐ見てくれているのに、自分は彼のことを歪んで認識してしまっている。
お互い、違うところに惹かれたはずなのに、その違いに淋しさを感じている。悠は僕の繊細さを羨ましいというけれど、自分は悠の鈍さに嫌気が差している。最初はそこも含めて好きだったはずなのに…。
秋頼の、細かなことに気付いてくれる優しさに満たされてしまっている。
「そうかもよ?あのさ…ピアス開けたの怒らないの?」
「怒らないよ…傷がついたのは嫌だけど、それは俺だけの気持ちだし。お互い大人なんだからそこまで干渉しないよ」
「そっか…ありがとう」
「開けた時、痛かった?」
「あんまり痛くなかったかな…秋頼さん開けるの上手なのかも」
「親父が開けたの?」
「うん…ほら、職場に秋頼さんが迎えに来てくれた日あったでしょ?あの時約束して、それで開けてもらった」
「あぁ…あれか。親父と飲んで帰ってきた日ね」
悠の機嫌が悪くなる。そもそも、悠が迎えに来る予定だったのだ。自分から約束を破っておいて、その態度は酷い。
「悠だって、友達と食事してた」
「まぁ、そうなんだけど。ごめん」
めずらしく悠の態度がやわらかい。どうしたんだろう。
「別に、前のことだからもう気にしてない」
「そっか。まぁ、穴が化膿しなかったならよかった」
そう言いながらも、悠が面白くなさそうにしている。その意味がわからなくて、ただ戸惑うことしか出来なかった。
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