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第十七話
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それから数週間が経過した。
毎日セロは花屋の仕事に精を出しながら、懸命に訓練をしていたし、スリナも文句を言いながらもよく協力をした。
オードもできる限りセロに丁寧に指導をしたつもりだった。
「何度やったらうまくできるわけ?」
「ごっ、ごめんなさい。」
師弟と師匠補佐の三人で議論を交わしあったのだが、こういう小さなことができないことにはどうしようもないということで、できるようになるまで蝋燭に火を灯す修行を行っているのだが…。
セロの必死の努力も全く実らず、いくらやっても火はつかなかった。
本日もここまで4回術を使ったのだが、1回目は弱弱しい風が三人の間をすり抜け、2回目は蝋燭の上に盛大な水を降らせた。3回目は周囲に光の玉があふれ、瞬時に消えて終わり、4回目は再び風が三人の間をすり抜けていった。
「ここまで才能ないのも、一種才能よね。」
「口調は優しいけれど、言っていることは大概厳しいと思うな、それ。」
穏やかな口調で会話を交わす師匠補佐と師匠。
最近はスリナも怒鳴ることに疲れ、オードもいちいちフォローを入れなくなっている。だが、その二人に挟まれて、ただ一人、初日から変わらず、撃沈しているセロ。
「ううっ…。」
唸り声を発しながら、しかし、諦めた様子のないその姿には、もはや脱帽ものだ。
「妖精の血が濃いからなぁ。こうなるのも仕方ないのかもしれない。」
妖精術士は、妖精術士同士か、妖精術士と妖精の間の子どもとして生まれる確率が高い。普通の人間同士の間に生まれた子どもにも生まれる場合もあるのだが、普通の人間と妖精の間の子である『混ざり者』にその資質を得た子どもが生まれたことはこれまでなかったと記憶している。
混血児でありながら、妖精術士の力を有しているというだけでも貴重すぎる存在なのだ。それだけでありがたいと思うべきなのかもしれない。
……実用に問題があるとしても。
「う~ん。どうしたものか。」
打ちひしがれるセロのためにも打開策を何か考えなければ。第一、蝋燭一本に時間がかかりすぎている。これではいつまでたっても前に進めない。
「…オード。」
考え込むオードの耳に、低いスリナの声が聞こえた。
それは緊張を含む声で、同時に注意を促す声だった。その呼びかけとほぼ同時に、オードの背に悪寒が走った。腕を見てみると、鳥肌が立っている。
「とうとう、きたのねぇ。」
緊張感の無い声が聞こえた。でも、それは意識的に出された声で、その奥には、悲しい響きだった。
「スリナ。」
「えぇ。分かっているわ。」
突然周囲に走った緊張感に、思わず身体を固めてしまったセロの肩から、スリナはオードの肩へと移動した。
「セロ。」
「うぇ!?はいっ!!」
やけに穏やかな声が響いた。それが彼の師匠ではなく、普段、厳しい口調でしか接してこない師匠補佐の声だったので、セロは思わず反応することに遅れをとってしまった。
「妖精術の一端をこれから見せるわ。自分が使おうとする術がいかなるものか、その目に焼き付けておきなさい。」
穏やかな笑顔を向けてきたスリナ。その笑顔が、どこか悲しそうに見えるのは、セロの気のせいなのだろうか。
「返事は!?」
「わっ!!はっ、はい!!」
直後にくだされた厳しい口調に、セロは姿勢を正して返事をする。
一瞬感じた、なんともいえない不安感や、焦燥感…。
そういうものがかき消される一喝だった。
「よろしい。しっかり見ていなさいよ。私とオードの力をね。」
ふふん、と鼻で笑い、自信たっぷりな笑顔を見せるスリナ。その顔はいつも通りの顔で。
「…はい。」
「じゃあ、そっちの茂みに隠れていて。」
「はいっ!!」
そんなスリナとセロを見るオードの顔も、いつも通り穏やかなものに見えた。
「スリナ、ありがとう。」
「礼を言われるほどのことじゃないわ。…くるわよ、オード。」
だから、この二人の、小声の会話に注意を向けることはなかった。
毎日セロは花屋の仕事に精を出しながら、懸命に訓練をしていたし、スリナも文句を言いながらもよく協力をした。
オードもできる限りセロに丁寧に指導をしたつもりだった。
「何度やったらうまくできるわけ?」
「ごっ、ごめんなさい。」
師弟と師匠補佐の三人で議論を交わしあったのだが、こういう小さなことができないことにはどうしようもないということで、できるようになるまで蝋燭に火を灯す修行を行っているのだが…。
セロの必死の努力も全く実らず、いくらやっても火はつかなかった。
本日もここまで4回術を使ったのだが、1回目は弱弱しい風が三人の間をすり抜け、2回目は蝋燭の上に盛大な水を降らせた。3回目は周囲に光の玉があふれ、瞬時に消えて終わり、4回目は再び風が三人の間をすり抜けていった。
「ここまで才能ないのも、一種才能よね。」
「口調は優しいけれど、言っていることは大概厳しいと思うな、それ。」
穏やかな口調で会話を交わす師匠補佐と師匠。
最近はスリナも怒鳴ることに疲れ、オードもいちいちフォローを入れなくなっている。だが、その二人に挟まれて、ただ一人、初日から変わらず、撃沈しているセロ。
「ううっ…。」
唸り声を発しながら、しかし、諦めた様子のないその姿には、もはや脱帽ものだ。
「妖精の血が濃いからなぁ。こうなるのも仕方ないのかもしれない。」
妖精術士は、妖精術士同士か、妖精術士と妖精の間の子どもとして生まれる確率が高い。普通の人間同士の間に生まれた子どもにも生まれる場合もあるのだが、普通の人間と妖精の間の子である『混ざり者』にその資質を得た子どもが生まれたことはこれまでなかったと記憶している。
混血児でありながら、妖精術士の力を有しているというだけでも貴重すぎる存在なのだ。それだけでありがたいと思うべきなのかもしれない。
……実用に問題があるとしても。
「う~ん。どうしたものか。」
打ちひしがれるセロのためにも打開策を何か考えなければ。第一、蝋燭一本に時間がかかりすぎている。これではいつまでたっても前に進めない。
「…オード。」
考え込むオードの耳に、低いスリナの声が聞こえた。
それは緊張を含む声で、同時に注意を促す声だった。その呼びかけとほぼ同時に、オードの背に悪寒が走った。腕を見てみると、鳥肌が立っている。
「とうとう、きたのねぇ。」
緊張感の無い声が聞こえた。でも、それは意識的に出された声で、その奥には、悲しい響きだった。
「スリナ。」
「えぇ。分かっているわ。」
突然周囲に走った緊張感に、思わず身体を固めてしまったセロの肩から、スリナはオードの肩へと移動した。
「セロ。」
「うぇ!?はいっ!!」
やけに穏やかな声が響いた。それが彼の師匠ではなく、普段、厳しい口調でしか接してこない師匠補佐の声だったので、セロは思わず反応することに遅れをとってしまった。
「妖精術の一端をこれから見せるわ。自分が使おうとする術がいかなるものか、その目に焼き付けておきなさい。」
穏やかな笑顔を向けてきたスリナ。その笑顔が、どこか悲しそうに見えるのは、セロの気のせいなのだろうか。
「返事は!?」
「わっ!!はっ、はい!!」
直後にくだされた厳しい口調に、セロは姿勢を正して返事をする。
一瞬感じた、なんともいえない不安感や、焦燥感…。
そういうものがかき消される一喝だった。
「よろしい。しっかり見ていなさいよ。私とオードの力をね。」
ふふん、と鼻で笑い、自信たっぷりな笑顔を見せるスリナ。その顔はいつも通りの顔で。
「…はい。」
「じゃあ、そっちの茂みに隠れていて。」
「はいっ!!」
そんなスリナとセロを見るオードの顔も、いつも通り穏やかなものに見えた。
「スリナ、ありがとう。」
「礼を言われるほどのことじゃないわ。…くるわよ、オード。」
だから、この二人の、小声の会話に注意を向けることはなかった。
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