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第4章

②終わりの始まり

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「いっぱい動いた後のご飯…染みる~」

沙羅さら、よく食べられるね…ボクはゲッソリして食欲ないや」

夜ご飯は夏野菜カレー。
前回カレーだった日は3番の懲罰があり、まったく味がしなかった。
今日は何事もないし、走り込みや筋トレとかで体が疲れているから…。

もう、スプーンが止まらない!

がっつく子どものように、カレーを口に運び続けた。
でもそれはあたしだけみたいで。

「いっぱい食べないと、体力つかないよ」

「そうだよね」

「美味しいし、一口でもいいから食べなって」

真咲まさきは完全にバテ気味。
カレーを前にしても目を輝かせず、机に突っ伏している。

まぁ、あの運動力はキツいよね。

「あーんしてあげようか?」

冗談で言うと、返事もせず口を開いてスタンバイされた。
ひな鳥みたい。

甘やかしすぎかな。
でも、食べないと明日もバテるの確定だし。

「はい、食べて」

スプーンでカレーを取り、真咲の口へ運ぶ。
まるで子育てみたいじゃん!

「これなら、完食できそう」

フフン、と鼻を鳴らして調子に乗った顔を見せる。

「後は自分で」

「えーん!」

楽しい夕食も過ぎていく。
この調子なら、3ヶ月なんてあっという間に終わるんだけどな。


✢✢✢


「沙羅、ボクのここを触って」

一夜明けて午前の運動時間。
看守からは見えない木陰で、真咲が自分の股を指さして誘ってきた。

「え、なんで?」

まさかまたエッチなことでも考えて…。

「おねがい!」

どうしてそこまで熱心なの? と疑問に思いつつも股をソフトタッチする。
違和感…あ、なるほど。

「貞操帯取れたんだ」

「うん、そうなの。冴木看守が今朝外してくれてね」

「良かったけど、ほんと我慢して!」

真咲はちょっと気まずそうな顔をする。
これだけは釘を刺しておかないと。
また懲罰なんてなったら避けられないし。

「うん、気をつけるよ。後、トイレの実績が評価されたらしくて、今日の午後から掃除してほしい場所があるって言ってた」

「また掃除か~、頑張ろ」


✢✢✢


午後になって連れて来られたのは、面会室だった。
ドラマなんかでよく見るような場所そのもの。

1つの部屋なんだけど、真ん中に仕切りがある。下半分は普通の壁で、上半分はアクリル板だ。

掃除の邪魔だからとパイプ椅子は外に出され、割と広々としたスペースになっている。

ちなみにあたしがいるのは面会しに来た人が入る側。
真咲は囚人側にいる。

「なんか真咲に会いに来た気分」

「ボクはやってない、みたいな?」

「すでに入っちゃてるのよ、2人とも」

アクリル板には会話用の穴があるから、普通に喋りながら作業できそう。

にしても、緊張感のある部屋だ。
灰色の床と白い壁、少し薄暗い照明は身が締まる。

囚人に会いに来た人は、どんな気持ちなんだろう。
少し考えてボーっとしてしまっていた。

「トイレよりはキレイだよね」

真咲の言葉で現実に帰る。

「たしかに…汚れはあんまりない。でも、何だろう。臭い? 変な香りっていうか」

鼻で強く息を吸った時、全身に鳥肌が立った。
知っている。あたしは。

「沙羅どうしたの? 顔怖いよ」

「ま、真咲…これっ」

伝えようとした時。
真咲側のドアが開いて、人が入ってきた。

「嘘でしょ…」

あたしは絶望した。
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