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第3章

③必要とされること

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「ちょ、どうしたの?」

後ろから抱きついてきた真咲まさきは、あたしの後頭部に顔を埋めて深呼吸している。

「なんか、安心するんです。初めて見た沙羅さらは、ボクのことをいじめる嫌な人かと思った。けど、優しくて。可愛くて」

泣いてる。震えている。
言葉に怯える感情が乗っていた。

そっか。
『ボクはずっと1人で食べてたから、とても嬉しいです』

食堂での言葉を思い出す。
ここに入ってから孤独に過ごしていたんだよね。

あたしも1人だったら…仲良く話せる子がいなかったら。

もう心が折れていたかもしれない。

「うん、いいよ。しばらく抱きついていても」

心の支えか…。
誰かに必要とされるのも、悪くない。

外にいた頃、あたしは必要とされていたんだろうか。

真咲は甘えるように、ずっと離れなかった。


✢✢✢


足音が近づいてくる。
多分、真咲の看守だ。

「来るよ、離れて」

「うん」

2人で離れて座って身構える。
やっぱりそうだ。

33番真咲、出ろ」

「はい!」

真咲は立ち上がり、開けられたドアから出ていく。
トイレ掃除の時とは逆だ。

友達が目の前で手錠をかけられる、そんな光景はちょっと心に来る。
拘束し終えた看守はこちらを向いた。

37番沙羅

「え、はい?」

「私は冴木さえきだ。今後は33番とペアで行動する機会が増える。くれぐれも間違いがないように」

「はい」

威圧的な態度で、なんか釘を刺された。
んで、冴木ね。

覚えておこうか、一応。


✢✢✢


2回目の消灯時刻になった。
昨日は拘束されるわ、おもらしするわで最悪だったけど。

今日は何もされないよね?

…。

……。

来ないし! いや、来なくていいのか。

面倒だし、ウザいから。
とりあえず布団入るかぁ…。

いや、トイレしておこう。
まだバケツに入るよね。

ズボンを脱ぐと、もう全然濡れてはいなかった。
それにムラムラ感のようなものもない。

完全に薬の効果が抜けたのかな。

バケツの上でしゃがみ、おしっこをする。

なんか、コレに慣れるっていうのも負けた気がする。
トイレ以外の場で出すなんて、外にいた時は考えられなかったもん。

「わ、ギリギリ…」

あと少しでおしっこがバケツから溢れるところだった。
でも、明日になればトイレへ行ける。

おしっこで満タンになったバケツも用済みだ。
貞操帯を拭いてズボンを履き、布団へ入った。

今日は良く眠れそう…。


そう、思ってたのに。
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