毎日記念日小説

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8月29日 焼き肉の日 匂いなし

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昨日も楽しかったぁ。
何て言うか、毎日楽しいなぁ。
こんな幸せでいいんだろうかと思っちゃうくらい楽しいなぁ。
今日はどんな話題かなぁ。
最近は、話題を知らないとかないし、気分よくできるよね。
不安がないっていいね。
じゃあ、今日も頑張って雑談しますかぁ。
俺はのほほんとした気分のまま、『雑談部屋』に入っていった。



今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。


”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”

やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
やっぱ、修正しないかぁ。
修正してくれないかなぁ。
毎回同じこと思ってるなぁ。
ある意味、これがルーティーンみたいなところあるしなぁ。
そう考えると、意味があるのかなぁ?
意味、あったのかな…
再びアナウンスが鳴った。


”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『焼き肉屋の個室』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『九条様』『関様』『大久保様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『焼き肉』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスがやんで、光に包まれた。
焼き肉か。
焼き肉かぁ…
飯系の話題ってめっちゃお腹がすくんだよなぁ、シチュエーションがすごくリアルだから。
焼き肉ね。
やりやすいんじゃないかな?
何を話すんだろう?
好きな焼き肉屋の話かな?
それとも好きなメニューの話かな?
それともあるあるの方に行くのかな?
まぁ、いろんな選択肢が取れそうだから、話題には事欠かないはず。
テーマは…持っていかなくてもいっか。
難しい話題じゃないし、その場で話すことの1つや2つくらい思いつくだろ。
余裕たっぷり!!
余裕かましていると、光が収まった。


俺たちは、4人で網を囲んでいた。
網で焼かれているのは、これはタンかな?
ちょうどいい感じの焼け具合、今が食べごろなタン。
まぁ、食べれないんだけど。
これ、このまま話を進めるのにすごく気が散りそう。
このタンが焦げないか、はらはらしながら話すことになりそうだなぁ。
俺がおいしそうなタンが焦げないか、はらはらしていると、いつも通り元気な九条が話し始めた。

「今日の話題は『焼き肉』だよ!!!!焼き肉だよ!!焼き肉!!!このお肉とか見てるだけでお腹がすいてくるね!!!皆って焼き肉とか行ったりする?俺は、肉大好きだから、何かいいことがあったら基本焼き肉に行くよ!!!!皆はどう?」

今日の九条は、いつも以上にテンションが高いな。
九条が焼き肉大好きなのも、何となく分かる。
多分そうなんだろうなぁって雰囲気があるよね。
肉を目の前にして、よだれを垂らす九条の姿が簡単に想像できる。
元気っ子で肉大好きとか、すごくキャラのまんまだなぁ。
もしかして、そっちの方向に寄せてってるのかな?
九条について邪推していたら、関に先を越されてしまった。
最近、話すことを思いついているのに考え事をしていて、他の人に先を越される場面が増えた気がする。

「私は、はい、お肉は好きですけど、体重を気にしちゃって思いっきり食べれないので、普段はあまり行かないですね。でも、やけくその時は、やけ食い、暴飲暴食をするために、焼き肉に行くことが多いですね、はい」

「私は、逆に、食べる、量を、調整、しやすい、から、焼き肉、好きだよ。自分の、ペースで、食べれるし、食べる、量を、細かく、注文、できるから」

関の言っていることに深く共感をしていたら、大久保にも置いていかれてしまった。
今日も俺が最後かぁ。
考える前にしゃべった方が良いのかなぁ?
次はそうしてみるかぁ。
反省しながら俺も最後に会話に参加していった。

「俺も焼き肉好きだぞ。だけど、肉ばっかり食ってると飽きちゃうから、俺は焼き肉に行くとサイドメニューの方への寄り道の方が多いかな。ビビンバとか、ナムルとか、塩キャベツとか、フルーツとか」


それから滞りなく会話は進んでいった。
網で焼かれたタンが焦げることはついぞなかった。
どんなに会話が盛り上がっていても頭の一部を占有し続けた網の上のタン。
今日一番印象に残ったのは確実に焦げないタンだろう。
煙とかもある程度出ていたけど、煙臭くなるとかいうこともなく楽しく雑談ができた。
服の臭いを確認していると、アナウンスが鳴った。




”33分46秒28が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



服に着いた臭いってなかなか取れませんよね。
だからといって何か、匂いつきの柔軟剤とかを入れて選択すると臭い同士が混ざって、最悪な匂いになりますよね。
勉強も、一度見に着いたらなかなか忘れないものです。
一生モノの知識を今、手に入れるため、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”

アナウンスが止んだ。

教室に戻ってきた。
あ、服が臭くなってない。
けど、焼肉屋のあの雰囲気は楽しめた。
あのシチュエーションだけを売っても十分売れるんじゃないだろうか?
やっぱ、最新の技術ってすごいわ。
感心しながら、俺は次の授業の用意を始めた。









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