毎日記念日小説

百々 五十六

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8月19日 俳句の日 まぁ、なんとかなった

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最近、パイナップルに、米に良い話題続きだなぁ。
今日も、良い話題になりますように。
楽しく雑談がしたいんです。
苦労はしたくないんです。
手放しで楽しい雑談がいいんです。
今の段階では、祈ることしかできないからなぁ。
今日もいい日。今日もいい日。
マインドを整えながら俺は、『雑談部屋』に入っていった。




今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。


”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”

やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
やっぱ、修正しないかぁ。
修正してくれないかなぁ。
毎回同じこと思ってるなぁ。
ある意味、これがルーティーンみたいなところあるしなぁ。
再びアナウンスが鳴った。


”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『良い感じの和室』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『九条様』『佐藤様』『村山様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『俳句』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスがやんで、光に包まれた。
俳句か。
俳句かぁ…
昨日よりはちょっとだけ難しそうな話題。
だけど、全体から見ればだいぶイージーよりな感じがする。
まぁ、祈っといてよかったって感じかな?
俳句かぁ…
あんまり詳しくはないけど、どういうものかはある程度分かるみたいな感じ。
ルールだけ知ってるプロスポーツみたいな感じで、誰がすごいとか、これがすごいとかは、全然分からない。
さすがに、今日はテーマの一つでも携えていくべきな気がするなぁ。
三人が、俺より俳句に無知だった場合大変なことになるし、一つくらいテーマ出しとくかぁ。


テーマってどうやって出してたっけ?
何日かしてないから、身体が忘れちゃってる。
俳句…俳句かぁ…うぅん…俳句…俳句かぁ…
あっっ!!!!
あぁ…

まぁ、無難に、好きな俳句があるのかどうかを聞けばいいかな?
よし、このテーマでいっか。
まぁ、このテーマで十分だろ。
心の準備もテーマの準備もできたところで、光が収まった。


うわぁ、きれいな庭。
心が洗われるようなきれいな風景。
みんなが雑談を忘れて庭に見入っていた。
あぁ、これ始まらない奴だ。
まぁ、せっかくテーマを乗ってきたんだし、このじんわりとした雰囲気は壊しちゃうけれど、俺から雑談を始めよう。
久しぶりに俺スタートの雑談が始まった。

「話題の『俳句』にあった、めちゃくちゃいい庭だな。みんなって好きな俳句とかってある?しいて言えばとかでもいいけど。ちなみに俺は、種田山頭火の『分け入っても分け入っても青い山』ってやつかな。理由は、初めて教科書で見たときに衝撃的だったからかな」

最初に話すとやっぱり話題に触れたくなっちゃうよなぁ。
最初のあいさつとかがないから、あいさつ代わりに言っちゃうんだよなぁ。
皆、庭に奪われていた心が戻ってきたみたいで、俺の話を聞いてハッとしていた。
たぶん、ここが『雑談部屋』だということを忘れていたんだろうなぁ。
それからみんなが考えこむように畳の方を向いてしまった。
その間、手持ち無沙汰になってしまったので、じっくりと庭を眺めることにした。
それにしても、立派な枯山水だなぁ。
これを現実でやったら、管理する職人さんとか大変そうだなぁ。
その立派な枯山水と合わせても違和感のない立派な庭石とさらに奥を彩る木と苔。
灰色と緑と茶色という派手さのない色でまとまっているからか、妙に落ち着くような雰囲気がある。
西洋とかのビカビカした奴もたまにはいいけれど、日本の和な感じの方が落ち着くから好きなんだよなぁ。
庭を見ていると、考え事をしていた三人がタイミングを合わせてビクンッっとした後顔を上げて、順番に話し出した。
もはや、これは会話として成立しているのか?というくらいの間を相手の出来事でちょっとだけ苦笑いをしてしまった。
まずは、何をそんなに考えることがあったんだってくらい普段は直感的に生きている九条が話し出した。

「俺は俳句とかよく分からないけど、あれ好きだよ、あれ!!!芭蕉の古池やのやつ!!!あれ、俳句の中で一番最初に教科書で出てきたから、覚えてたんだ!!!」

元気いっぱいな九条は予想通り王道も王道まっすぐに有名なやつを選んだ。
すごく九条っぽい。
素直な感じが。
続いて、佐藤が話し出した。

「俺は、俳句にあまり興味はないけど、しいて言うならあれが好きかな…正岡子規の『柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺』ってやつ…あれ、なんか語感が好きなんだよねぇ…」

佐藤は、意外にも有名どころをいった。
九条並みに王道のチョイス。
多分本当に詳しくなくて、有名な奴しか知らないんだろう。
最後に村山が話し出した。

「僕もあまり俳句とかを知らない方だと思う。好きな俳句は、しいて言うなら河東碧梧桐の『赤い椿白い椿と落ちにけり』かなぁって思う。この俳句の面白いところは、解釈の仕方が分かりやすく複数あるところだと思う」

村山も割と有名な方の俳句を選択。
村山のやつはあれだな、教科書で言うとちょっとだけ後ろの方に載ってるやつだ。
佐藤とか、九条のやつが、俳句のところの最初にバンバンと書いてあって、俺とか村山の選んだやつが、他にもいろいろな作品がありマスみたいなところに乗ってる感じのやつだなぁ、たぶん。
それにしてもあれだな。
俺が、テーマを持ってきてなかったら、割とちょっとした地獄みたいな感じになってたんじゃないかな?
誰もあんまり俳句に興味がなくて知識とかもない感じで、熱量があるわけでもない。
なんとなくで、テーマを選んでおいてよかったぁ。
さっきの俺ファインプレーすぎ。
それと、皆も露骨に一人一人話を振らなくても何となく順番で話してくれて、良かったぁ。
話題の内容に興味のない人がいても、雑談を楽しめるようになったから、これって無敵じゃない?
皆の熱量が合わなくたって楽しめるんだから、無敵なのでは?
自画自賛をしているとアナウンスが鳴った。






”29分23秒52が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。




たまには、興味のない人に話を振ることも面白いですよ。
すごく離れたところから面白いアイディアと出会わせてくれるかもしれませんよ。
でも、授業に対して興味がないとか言っていたら駄目ですよ。
きちんと授業に興味をもって、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”

アナウンスが止んだ。

教室に戻ってきた。
いやぁ、今日は話題は簡単だったけど相性が悪かったのかな?それともある意味相性が良かったのかもなぁ。
こういうちょっとだけ空振り気味の日も楽しいなぁ。
やっぱり雑談って楽しいなぁ。

そろそろ授業かぁ。
まぁ、授業もぼちぼち頑張りますかぁ。



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