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7月29日 福神漬けの日
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今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『良い感じの町定食屋』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『林様』『芦田様』『村山様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『福神漬け』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスがやんで、光に包まれた。
福神漬けかぁ…
うまくいくかな?
カレーの話から広がる気がしないんだけどなぁ。
最近渋い話題が多いなぁ。
その前は、難しい話題が結構あったけど、渋いほうもやりやすくはないからなぁ。
何となく不安を抱きながら、光が収まった。
沈黙の時間が訪れた。
いつもならだれかが空気を読んで話し始めるけれど、今日は何故か沈黙の時間が流れ始めてしまった。
いつもより重めの空気が流れている。
この沈黙が続くと話始められなくなると思って、しょうがないから、俺が話し始めた。
これは、空気を換えるのが大変そうだぞ。
「話題は『福神漬け』だって。皆ってカレーに福神漬けは、付け合わせとして食べる派?それとも食べない派?ちなみに、俺はあんまり食べないかな。小学生くらいでカレーと一緒に食べて、あんまり好みじゃなかった記憶があるから、今でもなんとなく避けちゃうんだよね」
とりあえずいっぱいしゃべったから、次の人が話しやすい空気が作れたかな?
こういうときって、なんかどこかで沈黙ができちゃうとその空気をめっちゃ引きずっちゃうこと、多いんだよなぁ。
今回は大丈夫かなぁ?ちょっと心配だな。
俺が悩んでいたら、そんな俺の不安なんて吹き飛ばすくらいの元気の良さで村山が話し出してくれた。
「僕は、食べる派だと思う。なんか良い感じのアクセントになると思うから、味的にも見た目的にも。僕にとっては、福神漬けはカレーの時にあることが当たり前だから、他所で福神漬けのないカレー食べると、ほんのちょっとだけ物足りないことがあるよ。でも、福神漬けがないとカレーが食べられないほど、福神漬け過激派ではないと思うよ。だから安心して!!」
テンションの高い村山は、身振り手振りで手をパタパタさせながら話した。
村山の雰囲気で完全に場の空気が変わった気がする。
楽しくお話しするムードになった気がする。
よかった、さっきまでの悪い予想が現実にならなくて。楽しく雑談できそうで良かった。
それにしてもこんなに簡単に雰囲気が変えられるなんて、さっきまでの俺の不安と配慮はなんだったんだろう。
まぁ、転ばぬ先の杖。
悪いことを想定していくことは悪いことじゃないよな!!
よし、せっかく村山が雰囲気をいい方向にしてくれたことだし、俺の気分も入れ替えていこう。
心の中でほおをぺしっとした。
俺が気合を入れている裏で、芦田が会話に参加していっていた。
「えぇ、私は、あんまり福神漬けは付けないかな。福神漬けが苦手とか、嫌いとか、何か過去にいやな思いをしたとかそういうのは全くないよ。両親があまり福神漬けを添える文化圏の人じゃなかったんだよね、えぇ。えぇ、私はそういう環境で育ってきたから、福神漬けをカレーを食べる時に欲したことはないんだよね。長々と言ってしまったけど、えぇ、短くまとめると、私は、福神漬けは、あれば食べるけど、なくても全く問題ないから普段は添えないかなって感じかな。一気にバババッと言ってしまってごめんね」
芦田がすごい饒舌に語っていた。あまり意識的に饒舌になったっていうより、言いたいことがいっぱいあったみたいな感じだった。
そこまで熱を入れるような話題だったんだ。
ちょっとだけ意外。
話した内容から考えてもそこまで主張するような内容じゃなかったように感じるけど、やっぱりカレーは日本人を熱くさせてしまうのかもしれないな。
もしかしたら、もっと日本のソウルフード的な話題になった時に芦田はめっちゃくちゃ饒舌になるのかもな。
最後にいつもちょっとだけはいるタイミングを逃しちゃう林が話し始めた。
「あのぅ、僕は、福神漬けあり派です。あのぅ、でも、おばあちゃんが作った福神漬けしか僕は食べれなくて。だから、他所で食べる時は福神漬けなしで食べてるんだよ。おばあちゃんの福神漬け以外の福神漬けって、僕にとっては違和感がすごくて」
林の少しスローテンポな話し方に反して、少し興奮気味な表情と声色で話していた。
顔が、フンスと言いそうなくらい気合が入っていた。
やっぱカレー談義ってすごいな。
みんなすごい気合が入っている。
食べ物って偉大だなぁ。
カレー談義のすごさに感心しているとアナウンスが鳴った。
もう約30分もたったったんだ。
完全に一つのテーマで走り切ったな。
普段なら、二つくらいのテーマを30分の中でやるけど、今回は、カレーの福神漬けのあるなしだけで乗り切ったな。
それにしても大丈夫かな?
福神漬けの話をちゃんと30分やったけど、それに合わせてカレーの話も30分やっちゃったけど。
さすがに大丈夫なんじゃないかな?
さすがに福神漬け単体だと、30分持たなかっただろうし。
”31分49秒85が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
育ちによって、環境によって、習慣や食の好みなどは人それぞれです。
でも、学校教育というのは皆に平等に与えられます。
だからそれは、強固なあるあるとなりえるのです。
違うことを面白がることが楽しいように、同じことを面白がることも楽しいのです。
同じ今を分かち合っている仲間と。今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスが止んだ。
教室に戻ってきた。
今日のアナウンスさんのまとめ良かったな。
今までで一番刺さった気がする。
まぁ、それは置いておいて、もう少し話したかったな。カレーの福神漬けについて。
まだもう一つくらい面白いことがあった気がする。
まぁ、去ったことを後悔しても仕方ないか。
次、同じようなことがあったらもっとできるように頑張ろう。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『良い感じの町定食屋』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『林様』『芦田様』『村山様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『福神漬け』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスがやんで、光に包まれた。
福神漬けかぁ…
うまくいくかな?
カレーの話から広がる気がしないんだけどなぁ。
最近渋い話題が多いなぁ。
その前は、難しい話題が結構あったけど、渋いほうもやりやすくはないからなぁ。
何となく不安を抱きながら、光が収まった。
沈黙の時間が訪れた。
いつもならだれかが空気を読んで話し始めるけれど、今日は何故か沈黙の時間が流れ始めてしまった。
いつもより重めの空気が流れている。
この沈黙が続くと話始められなくなると思って、しょうがないから、俺が話し始めた。
これは、空気を換えるのが大変そうだぞ。
「話題は『福神漬け』だって。皆ってカレーに福神漬けは、付け合わせとして食べる派?それとも食べない派?ちなみに、俺はあんまり食べないかな。小学生くらいでカレーと一緒に食べて、あんまり好みじゃなかった記憶があるから、今でもなんとなく避けちゃうんだよね」
とりあえずいっぱいしゃべったから、次の人が話しやすい空気が作れたかな?
こういうときって、なんかどこかで沈黙ができちゃうとその空気をめっちゃ引きずっちゃうこと、多いんだよなぁ。
今回は大丈夫かなぁ?ちょっと心配だな。
俺が悩んでいたら、そんな俺の不安なんて吹き飛ばすくらいの元気の良さで村山が話し出してくれた。
「僕は、食べる派だと思う。なんか良い感じのアクセントになると思うから、味的にも見た目的にも。僕にとっては、福神漬けはカレーの時にあることが当たり前だから、他所で福神漬けのないカレー食べると、ほんのちょっとだけ物足りないことがあるよ。でも、福神漬けがないとカレーが食べられないほど、福神漬け過激派ではないと思うよ。だから安心して!!」
テンションの高い村山は、身振り手振りで手をパタパタさせながら話した。
村山の雰囲気で完全に場の空気が変わった気がする。
楽しくお話しするムードになった気がする。
よかった、さっきまでの悪い予想が現実にならなくて。楽しく雑談できそうで良かった。
それにしてもこんなに簡単に雰囲気が変えられるなんて、さっきまでの俺の不安と配慮はなんだったんだろう。
まぁ、転ばぬ先の杖。
悪いことを想定していくことは悪いことじゃないよな!!
よし、せっかく村山が雰囲気をいい方向にしてくれたことだし、俺の気分も入れ替えていこう。
心の中でほおをぺしっとした。
俺が気合を入れている裏で、芦田が会話に参加していっていた。
「えぇ、私は、あんまり福神漬けは付けないかな。福神漬けが苦手とか、嫌いとか、何か過去にいやな思いをしたとかそういうのは全くないよ。両親があまり福神漬けを添える文化圏の人じゃなかったんだよね、えぇ。えぇ、私はそういう環境で育ってきたから、福神漬けをカレーを食べる時に欲したことはないんだよね。長々と言ってしまったけど、えぇ、短くまとめると、私は、福神漬けは、あれば食べるけど、なくても全く問題ないから普段は添えないかなって感じかな。一気にバババッと言ってしまってごめんね」
芦田がすごい饒舌に語っていた。あまり意識的に饒舌になったっていうより、言いたいことがいっぱいあったみたいな感じだった。
そこまで熱を入れるような話題だったんだ。
ちょっとだけ意外。
話した内容から考えてもそこまで主張するような内容じゃなかったように感じるけど、やっぱりカレーは日本人を熱くさせてしまうのかもしれないな。
もしかしたら、もっと日本のソウルフード的な話題になった時に芦田はめっちゃくちゃ饒舌になるのかもな。
最後にいつもちょっとだけはいるタイミングを逃しちゃう林が話し始めた。
「あのぅ、僕は、福神漬けあり派です。あのぅ、でも、おばあちゃんが作った福神漬けしか僕は食べれなくて。だから、他所で食べる時は福神漬けなしで食べてるんだよ。おばあちゃんの福神漬け以外の福神漬けって、僕にとっては違和感がすごくて」
林の少しスローテンポな話し方に反して、少し興奮気味な表情と声色で話していた。
顔が、フンスと言いそうなくらい気合が入っていた。
やっぱカレー談義ってすごいな。
みんなすごい気合が入っている。
食べ物って偉大だなぁ。
カレー談義のすごさに感心しているとアナウンスが鳴った。
もう約30分もたったったんだ。
完全に一つのテーマで走り切ったな。
普段なら、二つくらいのテーマを30分の中でやるけど、今回は、カレーの福神漬けのあるなしだけで乗り切ったな。
それにしても大丈夫かな?
福神漬けの話をちゃんと30分やったけど、それに合わせてカレーの話も30分やっちゃったけど。
さすがに大丈夫なんじゃないかな?
さすがに福神漬け単体だと、30分持たなかっただろうし。
”31分49秒85が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
育ちによって、環境によって、習慣や食の好みなどは人それぞれです。
でも、学校教育というのは皆に平等に与えられます。
だからそれは、強固なあるあるとなりえるのです。
違うことを面白がることが楽しいように、同じことを面白がることも楽しいのです。
同じ今を分かち合っている仲間と。今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスが止んだ。
教室に戻ってきた。
今日のアナウンスさんのまとめ良かったな。
今までで一番刺さった気がする。
まぁ、それは置いておいて、もう少し話したかったな。カレーの福神漬けについて。
まだもう一つくらい面白いことがあった気がする。
まぁ、去ったことを後悔しても仕方ないか。
次、同じようなことがあったらもっとできるように頑張ろう。
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お読みいただきありがとうございます。よろしければ、いいね、エール、お気に入り登録よろしくお願いします!!!!
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