毎日記念日小説

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7月26日 幽霊の日 開始前棄権二

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今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
AIはここを修正しないのだろうか?
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『怪しい洋館前』です。
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『大久保様』『桂様』『小坂様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『幽霊』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスが止み、光が包む。
幽霊かぁ。
夏だしなぁ。
俺はあんまりおっちは信じないんだけど、他のメンバーは大丈夫かなぁ?
大久保とか怖がりそうなイメージあるなぁ。
でも、大久保ってだいたいの場合でイメージとギャップがあるから、怖いのめっちゃ得意の可能性あるなぁ。
そうだとしたら、あのしゃべり方って怪談めっちゃ向いてそうな感じがする。
光が収まった。
いかにも出そうな洋館前のバス停脇のベンチに腰かけていた。
なんとなく肌寒い気がする。
絶対気のせいなのに。
『雑談部屋』は絶対に適温にしてくれているはずだから、気分の問題だからだろうけど。
幽霊とかまったく信じていない俺でこんなに雰囲気に充てられてるんだから、幽霊とかダメな人が来たら気絶しちゃうんじゃないだろうか。
あれ?おかしいなぁ。
4人、メンバーが決まってからここに送られているはずなのに、今ここにいるのは俺と大久保だけなのはなんでだろうか?
もしかして、棄権したのだろうか?
そんなことを考えていたらアナウンスが鳴った。
やっぱり棄権してたのかな?


”桂様の『雑談部屋』への参加棄権を確認しました。
理由は、シチュエーションが受け入れられない・話題が自分とあわない、とのことです。
雑談を行うメンバーが3人となってしまいました。
雑談を続行しますか?
はい/いいえ”

どうやら桂が棄権したらしい。
これって、ここにいる大久保と相談することはできるのだろうか?
頭の中でアナウンスに問いかけたらアナウンスが答えてくれた。

”大久保様と相談することは可能です。
ただし、相談することを大久保様に承認していただかなければなりません。
リクエストを送信しています。

返答を処理しております。

大久保様が、雑談の続行について、相談することを承認しました。
今からは、大久保様と相談をしていただいて構いません。”

ちゃんと手続きみたいなことをしないといけないんだぁ。ちょっと意外。
とりあえず大久保に話しかけた。
「大久保、雑談のメンバーが三人になっちゃったけどどうする?続行するか?」
大久保が一回深く深呼吸してから、自分のペースでこたえてくれた。
「私は、続けたい。三人でも、楽しく、お話しできる、と思う、から。でも、小坂君も、棄権する、なら、続行しない、方が、良いと、思う。それは、私と、一対一で、話す、となったら、田中君の、負担に、なっちゃう、から」
大久保が、珍しくネガティブなことを言ってるので、励ましながら、返答することにした。
「俺も、続行したいな。大久保と話すの楽しいし、一回でも多く『雑談部屋』を楽しみたいしさ。それと、もし二人だけになったら、続行しないっていう選択にも賛成だな。だけど、それは大久保とさしで話すのが負担だとかいうわけじゃなくて、多くの人とかかわるための設備が『雑談部屋』だから、その理念に反してるなって気がしちゃうからだ。だから、決して、大久保とさしで話すのが負担ってわけじゃないぞ。じゃあ、この方針で回答するけどいい?」
「うん。私も、それが、良いと、おもう」
大久保の表情が、少し明るくなった。
よかった。
うまく励ませたみたいだ。
それから、俺はさっき大久保と相談したとおりに投票した。
すると、再びアナウンスが鳴った。
”処理中

処理が完了しました。
投票の結果をお伝えします。
続行が二票。
無投票が一票で、今回の雑談は続行となりました。
投票にご協力ありがとうございました。”

小坂はどうやら投票しなかったみたいだ。
無投票の一票って、小坂だよな。
さすがに小坂だよな。
大久保じゃないよな。
まぁ、大丈夫でしょ。
もう何度目かもわからないアナウンスがなった。
”小坂様の『雑談部屋』への参加棄権を確認しました。
理由は、シチュエーションが受け入れられない・話題が自分とあわない、とのことです。
雑談を行うメンバーが2人となってしまいました。
雑談を続行しますか?
はい/いいえ”
さっきの大久保との相談の内容に従い、俺は素早く”いいえ”を選択。
アナウンスへの応答史上、一番テンポがよかっただろう。
そして再びアナウンスが鳴った。
”処理中

処理が完了しました。
満場一致で、雑談を終了します。
投票へのご協力ありがとうございました。”

ちょっとだけ間を置いて再びアナウンスが鳴った・



”5分14秒12が経過しました。投票の結果雑談の終了となったため、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



恐れることはおろかなことではありません。語るのを恐れること、訪れることを恐れること、これらは愚かな行いではありません。正しく恐れるのです。恐れる必要のあるものを恐れるのです。しかし、恐れるだけが人間ではないのです。勇ましさも持たなければいけないのです。
授業を恐れることなく、残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”


今日の終わりのアナウンス思想強めだったなぁ。
まぁ、こういうこともあるか。
今日はなんか大久保となんとなく仲良くなった気がする。
良い一日になるといいなぁ。


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