毎日記念日小説

百々 五十六

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7月24日 劇画の日 寝落ち

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今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
やっぱりアナウンスが止んだ。
やはり、雑談部屋で一番無駄な時間なう。
うーん、なんかちょっと眠い気がする。
まぁ、いっか。
雑談してれば眠気も飛ぶでしょ。
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『スタジオ』
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『斎藤様』『佐藤様』『東様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『劇画』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスが止んだ。
そして俺を光が包みこんできた。
今日はなぜかその光がやけにあったかく、心地よく感じた。
すごく眠気を誘う温度をしていた。
光が止んだ。
転送先のスタジオは、自宅の一室という感じのセットではなく、ほとんど自然の草原と小高い丘みたいなところだった。
ここって、本当にスタジオなのだろうか。
騙されて連れてこられたのか、『雑談部屋』が間違えて俺をここに連れてきてしまったのか、俺には場違いの場所に感じた。
ぐるぐると考え事をしていると、不意に眠りを誘う心地よい風が、俺の頬を撫で、通り過ぎていった。
こんなリアルな風が出せるのだろうか?
本当にスタジオなのか一層疑ってしまう。
そして、その風を受けて、俺の意識は手放された。
ただでさえ眠い中で、眠りに最適な環境に連れてこられて、最後の思考力を振り絞っていろいろ考えていた。
その緊張の糸が、心地よい風で完全に切れてしまった。
『雑談部屋』なのに俺はそれからの三十分間、一切会話をした記憶がない。
というかそもそも記憶がない。
「……っぁ……………っぅ………………」
「………」
「…っ…」
「……ぇ………」
「…」
「……っ…」
「……ぉ」
「…」
何か耳元で何か言っているが、眠りの妨げとなるため、身体が何を言っているのかまで聞き取ろうとしない。
なんとなく、最後のアナウンスだけは聞こえた気がした。


”32分17秒26が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。


心地よい空間を届けるスタジオを体験していかがだったでしょうか。最高の環境から、環境の質は下がってしまいますが、集中して授業を受けてください。日頃の疲れを取った皆様ならできるはずです。今日も元気いっぱい、残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”


アナウンスが止んだ。
俺は、身体がいつもの堅い椅子の上にあることに気がついて、自然と目が覚めた。
30分だけしか寝てないとは思えないくらい、身体が軽い。
そして、眠気がない。
俺はロングスリーパーで一度寝るとある程度寝なきゃ全く眠気が取れない系の人だったはずなのに。
『雑談部屋』睡眠、これは流行るのかもしれない。
そして、こんなにも健康になることが、『雑談部屋』が人体にまで影響を及ぼせるのじゃないかという気がして、ちょっとだけ怖いなと直感的に思った。
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