毎日記念日小説

７月１６日 国土交通Day 体調不良の田中君

いつもの白い空間に放り出された。
しかし、いつもとは違うアナウンスが鳴った。
”『雑談部屋』参加希望者の肉体及び精神に異常性を検知。
『雑談部屋』に入ることを棄権し療養することを推奨いたします。”
俺が体調不良だって、よくわかったな。
しょうがない今日は、棄権するか。
棄権って初めてだなぁ。
てか、棄権ってどうやるんだろう？
この後保健室とか言った方が良いのかな？
再びアナウンスが鳴った。
”『田中様』軽度の微熱等風邪症状と寝不足による隈を検知しました。万全の状態じゃないとお見受けします。大事を取って『雑談部屋』への参加を棄権しますか？
判断の参考までに、今日の雑談のお題とシチュエーションを発表いたします。今日の雑談のお題は『国土交通』です。シチュエーションは『役所の応接室』です。”

”はい/いいえ”
アナウンスは、俺の目の前に選択肢を提示してきた。
寝不足と熱はなんとなく感じていたけど、これって軽度の風邪だったんだ。
なら、人に移しちゃいけねぇから、棄権するしかないかぁ。
それに、難しそうな話題だし万全の状態じゃなきゃ足を引っ張って空気を壊しちゃいそうだしなぁ。
あと、役所の応接室ってなんか、精神的に窮屈そうで気がめいりそうだし体調をより悪化させそう。
体調不良でだんだんとネガティブになっていく思考を断ち切り、メンバーに迷惑をかけないために、おれは”いいえ”を選んだ。
そしてまたアナウンスが鳴った。



”事前説明・選択空間において、４分４３秒４２が経過しました。様々な思考の途中かと思いますが、アナウンスに耳を傾けていただけると幸いです。今回は、体調不良という特例で、教室ではなく保健室の方に転送いたします。突然保健室に行ってしまっていいのかとお思いかと思います。ご安心下さい。教室の監督責任者および、保健室の監督責任者の方には事前にお伝えいたしますのでご安心ください。田中様は今回、棄権されましたが通例のためお話しさせていただきます。この場での話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。



人生において力を蓄える時間は必要です。大きく助走をすることで、人は前にそして高く飛ぶことができます。今日はその力をため込む日なのです。ですので、休養を恐れないでください。明日、未来の田中様がより良いご活躍をするために、今日の残りの時間は、英気を養う時間としてください。一刻も早い田中様の体調不良からの復活を心より願っております。
それでは保健室にお送りいたします。

おやすみなさいませ。”


まばゆい光が止んだ時、俺は保健室でベッドに横たわっていた。
ホテルなんかよりよほどパリパリのシーツで身を包み、見慣れないぽつぽつと穴が開いた天井を眺める。普段なら絶対に寝れないような環境だけれど、体調不良のせいかだんだんと瞼が下りてくる。
このまま寝てしまっても、目を覚ますときには、誰かが迎えに来てくれているはず。謎の寺院が俺を安心させて夢の世界にいざなった。