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7月15日 中元
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今日もまた、白い空間に放り出された。
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
またこの間が空いた。
一気にアナウンスやっちゃえばいいのに。
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『夏のリビング』
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『篠原様』『桂様』『斎藤様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『中元』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスが止んだ。
今回は目を閉じなかった。
目を開けていても、光をまぶしく感じなかった。
光の中ぼんやりと見えるだんだんと作り替えられていく景色。
光が収まった。
目の前は、今まで見た誰の家でもないけれど、直感的に誰かの家のリビングだとわかった。
寒っ!!
ひとん家のリビングって妙に寒いんだよなぁ。
今回のメンバーは、全員L字のソファーに座っていた。
昨日の横並びより話しやすそう。
L字の短いほうに篠原が、折れ曲がるところに俺、長いほうに俺側から桂、斎藤と座った。
今回も俺が防波堤だ。
ちょっと座りづらいし、貧乏くじを引かされている気がする。
元気よく桂が話し始めた。
「中元??!!!!あれか?!!お中元てやつか?!!!」
珍しく桂がまともなことを言っている。
だいたいのことを間違って覚えている桂が。
だいぶ驚きつつ桂に返事をしながら会話に参加していく。
「そうだ、お前にしては珍しくあってるぞ。多分お前がイメージしてるのは、なんか素麺とかもらえるやつって感じだろ?まぁそれで、だいたいあってるぞ」
「よし!!!!初めて田中に褒められているぞ!!!!褒められるとめちゃくちゃ嬉しいな!!!!!」
桂はこぶしを握り締めて、ガッツポーズをすることで喜びを表現している。
桂が喜びに浸っている横で斎藤がちょっとした補足をしてくれた。
これで、斎藤も会話に参戦。
「中元は、もともと道教の習慣の一つらしいそうよ。それにいろいろなものが混ざって江戸時代に今の親類やお世話になった人に贈り物をするっていう形の風習に発展したそうよ」
よくそんな知識がスラスラ出てくるなぁ。
まぁ、たぶんだけど、ちょっとだけ質問とかするとすぐにぼろが出るんだろうけど。
「へぇ、斎藤さんって博識なんだね。お中元って家にはあんまり送られてこないけど、おじいちゃん家に行くと引くほどあるよね」
篠原は、めちゃくちゃ自然な流れで話題を手土産にふらっと会話に入ってきた。
「おじいちゃんおばあちゃんって、なんであんなに知り合いが多いんだろうな?自分たちがあの年代になった時にあの量のお中元がもらえるのって想像できないわ」
篠原の話しに瞬時に対応する俺、ちょっとかっこいい。
「社会に出ると、人間関係が広がるらしいわよ。薄く広くなるって父が言ってたわ。今はSNSの時代なんだし、案外おじいちゃんたちより広い人間関係ができてるか知れないわよ」
斎藤が軽く微笑むように言った。
「確かに、インターネットとかまともにない時代のおじいちゃんたちであれくらい広い人間関係があるんだから、俺たちの時にはすごいことになっているのかもね。ちょっと話題がそれちゃったから戻すけど、お中元ってやたら素麺貰うよね」
篠原が名司会者ばりにいいタイミングで話題を戻してくれた。
篠原に役職:司会者を入れてもいいんじゃないだろうか?
てか、あの役職って何なんだろう?
まだ一度も使われているのを見たことがない気がする。
定型文的な感じで実装されているだけで、システムとしてはまだできてないのかな?
「素麺って、良い素麺だと素麺だなぁって感じどまりだけど、まずいのは食ってらんねぇよって感じで、下に幅広いイメージがあるな」
役職の話しはいったん置いといて俺は会話に復帰した。
「そうかなぁ?私は木箱に入っているみたいな素麺すごくおいしく感じるわよ」
斎藤がちょっと首をひねりながら言った。
篠原も桂も首をひねっている。
桂、そんなに首をひねって大丈夫か?
あれ?もしかして俺だけが感じていることなんだろうか?
まぁ、別にそうでもいいけど、次からはあるあるとして言わないように気を付けよう。
久しぶりにあるあるを踏み外した気がする。
俺のあるあるが滑ったタイミングで、アナウンスが鳴った。
ありがたいような悔しいような。
”29分54秒63が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
人間関係は広さも大切ですが濃さも大切です。今ある人間関係に感謝して、今横にいる人を大切に、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスが止み、教室に戻った。
さっきまでキンキンに冷えた部屋にいたから、教室が、ちゃんと冷房が効いているのにちょっとだけ生ぬるく感じた。
やっぱ、あそこって冷えすぎだったよな?!
そしてどこからともなくアナウンスが鳴った。
”シチュエーションの設定、人物選択、話題選択が終了しました。
これより雑談を始めます。”
またこの間が空いた。
一気にアナウンスやっちゃえばいいのに。
再びアナウンスが鳴った。
”雑談所要時間は30分、盛り上がり等により自動で延長や短縮を行います。
シチュエーションは、『夏のリビング』
雑談に参加するメンバーは、『田中様』『篠原様』『桂様』『斎藤様』です。
決まった役職、役割等はございません。ご気軽に参加してください。
それでは雑談を始めさせていただきます。
今回の話題は『中元』です。
それでは楽しい雑談の時間をお過ごしください。”
アナウンスが止んだ。
今回は目を閉じなかった。
目を開けていても、光をまぶしく感じなかった。
光の中ぼんやりと見えるだんだんと作り替えられていく景色。
光が収まった。
目の前は、今まで見た誰の家でもないけれど、直感的に誰かの家のリビングだとわかった。
寒っ!!
ひとん家のリビングって妙に寒いんだよなぁ。
今回のメンバーは、全員L字のソファーに座っていた。
昨日の横並びより話しやすそう。
L字の短いほうに篠原が、折れ曲がるところに俺、長いほうに俺側から桂、斎藤と座った。
今回も俺が防波堤だ。
ちょっと座りづらいし、貧乏くじを引かされている気がする。
元気よく桂が話し始めた。
「中元??!!!!あれか?!!お中元てやつか?!!!」
珍しく桂がまともなことを言っている。
だいたいのことを間違って覚えている桂が。
だいぶ驚きつつ桂に返事をしながら会話に参加していく。
「そうだ、お前にしては珍しくあってるぞ。多分お前がイメージしてるのは、なんか素麺とかもらえるやつって感じだろ?まぁそれで、だいたいあってるぞ」
「よし!!!!初めて田中に褒められているぞ!!!!褒められるとめちゃくちゃ嬉しいな!!!!!」
桂はこぶしを握り締めて、ガッツポーズをすることで喜びを表現している。
桂が喜びに浸っている横で斎藤がちょっとした補足をしてくれた。
これで、斎藤も会話に参戦。
「中元は、もともと道教の習慣の一つらしいそうよ。それにいろいろなものが混ざって江戸時代に今の親類やお世話になった人に贈り物をするっていう形の風習に発展したそうよ」
よくそんな知識がスラスラ出てくるなぁ。
まぁ、たぶんだけど、ちょっとだけ質問とかするとすぐにぼろが出るんだろうけど。
「へぇ、斎藤さんって博識なんだね。お中元って家にはあんまり送られてこないけど、おじいちゃん家に行くと引くほどあるよね」
篠原は、めちゃくちゃ自然な流れで話題を手土産にふらっと会話に入ってきた。
「おじいちゃんおばあちゃんって、なんであんなに知り合いが多いんだろうな?自分たちがあの年代になった時にあの量のお中元がもらえるのって想像できないわ」
篠原の話しに瞬時に対応する俺、ちょっとかっこいい。
「社会に出ると、人間関係が広がるらしいわよ。薄く広くなるって父が言ってたわ。今はSNSの時代なんだし、案外おじいちゃんたちより広い人間関係ができてるか知れないわよ」
斎藤が軽く微笑むように言った。
「確かに、インターネットとかまともにない時代のおじいちゃんたちであれくらい広い人間関係があるんだから、俺たちの時にはすごいことになっているのかもね。ちょっと話題がそれちゃったから戻すけど、お中元ってやたら素麺貰うよね」
篠原が名司会者ばりにいいタイミングで話題を戻してくれた。
篠原に役職:司会者を入れてもいいんじゃないだろうか?
てか、あの役職って何なんだろう?
まだ一度も使われているのを見たことがない気がする。
定型文的な感じで実装されているだけで、システムとしてはまだできてないのかな?
「素麺って、良い素麺だと素麺だなぁって感じどまりだけど、まずいのは食ってらんねぇよって感じで、下に幅広いイメージがあるな」
役職の話しはいったん置いといて俺は会話に復帰した。
「そうかなぁ?私は木箱に入っているみたいな素麺すごくおいしく感じるわよ」
斎藤がちょっと首をひねりながら言った。
篠原も桂も首をひねっている。
桂、そんなに首をひねって大丈夫か?
あれ?もしかして俺だけが感じていることなんだろうか?
まぁ、別にそうでもいいけど、次からはあるあるとして言わないように気を付けよう。
久しぶりにあるあるを踏み外した気がする。
俺のあるあるが滑ったタイミングで、アナウンスが鳴った。
ありがたいような悔しいような。
”29分54秒63が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。
人間関係は広さも大切ですが濃さも大切です。今ある人間関係に感謝して、今横にいる人を大切に、今日の残りの時間も頑張ってください。
それでは教室にお送りいたします。
それでは良い学校生活を”
アナウンスが止み、教室に戻った。
さっきまでキンキンに冷えた部屋にいたから、教室が、ちゃんと冷房が効いているのにちょっとだけ生ぬるく感じた。
やっぱ、あそこって冷えすぎだったよな?!
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