毎日記念日小説

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7月3日 アイスクリームの日

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”これより雑談を始めます。雑談の所要時間は30分、役職等はございません。
それでは始めさせていただきます。

今日の雑談の話題は『ソフトクリーム』です。

楽しい雑談の時間をお過ごしください。”

アナウンスが終わるとともに、女子特有の高い声で五十嵐が話し始めた。
「アイスクリームだって。皆何が好き?うちは全然ミント!」
元気のいい声だな。ちょっとだけ頭に刺さるぐらい声が高いけど。
五十嵐が話してから間髪入れずに中川が話し始めた。
「あたしは、やっぱいちごかな。やっぱ、ちょっと酸っぱいのがいい」
「わかるー」
「私はぁ…チョコレートですかね、はい。甘いのがすごくおいしいです、はい」
「それも全然分かる」
ぽんぽんとテンポよく関さんも会話に入っていった。
ヤバい。俺だけうまく会話に入れていない。
やっぱり、今日は女子ばっかりだから無意識のうちに緊張しているのかもしれない。
昨日の男子だけも珍しかったけど、今日の女子三人の中に俺だけ男子が入ることの方がもっと珍しいな。
『雑談部屋』のコンセプトとして確か、クラスメイトの意外性と充実した楽しい雑談時間を、というものがあったはずだ。だから、基本的には話しやすいメンバーになる。
しかし、全員男子とかだと話しやすくて良いのだけれど、クラスメイトの意外性が見えないのでなかなか起こりづらい。それ以上に、異性三人の中に入るなんてことは、基本的にはあり得ない。なぜなら、めちゃくちゃ話しづらいからだ。
今だって、女子たちはいつ話題を振ろうかと気を使っているのがわかる。
話題が『アイスクリーム』だから女子っぽいというのは分かるのだが、なんでこの話題で私が選ばれたのだろう?
そんなことを考えていると、ますます俺は孤立してしまっている。
女子たち三人は、こっちに気を配りつつも三人だけでアイスクリームについて盛り上がっていた。
ちょっとだけ悲しくなる。
自分だけ話に入れないというのは、異性ばかりの集まりだとしても悲しい。
どうやらその悲しさが表情にでも出てしまったらしい。
関が一瞬聖母みたいな地合いのこもった表情になり、その後決意の表情に変わった。
関が俺に意を決して俺に話しかけてきた。
「田中君は、アイスクリームならどのフレーバーが好きなの?」
あぁ、話しかけてくれた。
すごく嬉しい。
いつもちょっとだけ引っ込み思案な関が俺を気遣って話しかけてくれた。
思わずおぎゃってしまいたくなるくらいうれしかった。
関が話しかけてくれたことで他の二人も、俺の方を向いた。
「確かに、たなかっちの好み全然気になる」
「確かに」
さっきまではぶられ気味だったのに、一気に中心になってしまった。
女子の前だからか、ちょっとだけ緊張しながら答えた。
「俺は、柑橘系とか、すっぱかったり、すっきりするようなものが好きだぞ」
ちょっとだけ細切れ感のある話し方になってしまったが、まぁ妥協点だろう。


それから少しづつアイスブレイクができてきた。
最初は、俺の話し方も相手の返事も、皆初心なの?ってくらいぎこちなかった。
だけれど話していくうちの緊張感も解けて、普通に盛り上がった。
異性三人を前にして感じていた圧は、だんだんと感じなくなった気がした。
それもあってだんだんと盛り上がってきた。
昨日の男子だけの盛り上がりとまではいわないけれど、雑談としては十分大成功の域まで盛り上がることができた。
しかしそんな時間も永遠には続かない。
なんとなく俺のターンが回ってきたタイミングで、アナウンスが流れた。



”30分が経過しました。お話の途中かと思いますが、教室の方に転送いたします。話し足りないかと思いますが、この話題はこの場限りといたしますようよろしくお願いします。教室で同じ話題をしたとしても特に罰則等はございませんが、ご協力よろしくお願いいたします。それと同じように、教室での話題をこの場に持ち込まないようよろしくお願いいたします。このアナウンスの内容を何度もお聞きになっていると思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。


それでは良い学校生活を”


久しぶりにちゃんと女子と雑談した気がする。
今までは、女子がいても一人の人と話したぐらいの感覚だったけれど、今日は明確に女子と話したと感じた。
小学校ぶりにちゃんと話したなぁ。
なんとなく話さないとか避けるとかが重なって、今まであまりちゃんと同世代の異性と話してなかったなぁ。
まぁ、雑談部屋がない時に話しかけに行く勇気は今でもないけど。

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