Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六

文字の大きさ
上 下
146 / 193

シルさん登場 あの人かな?

しおりを挟む
 俺達は、ギルドの入り口わき付近に布陣して、ギルドにはいってくる人たちを眺めた。
 シルさんらしき人を探すために、1人1人ギルドに入ってくる人を眺めていく。
 まぁ、そもそもシルさんがどういう姿をしているのかが分からないから、探してもどうにもならない気がするんだけどな。
 まぁ、暇だし探すだけ探したくなるよな。
 シルさんを探していると、ローズが俺達だけに分かるように指さしながら小声で言った。

「あの人かな?」

 俺はローズが指さした先を見た。
 そこには、1人のプレイヤーがいた。
 そのプレイヤーは背に斧を背負っていた。
 戦士とかそういう職業なのかな?
 装備も、前線でゴリゴリ前衛をするように防御力と機動性を挙げていそうな装備をしている。
 俺は、その人を軽く観察してからローズに小声で言った。

「あの人ではないんじゃない?」

 俺の言葉を聞いたローズは首をかしげながら言った。

「そう?」

 いや、そもそも、あの人斧持っちゃってるし。
 シルさんって確か、弓士だったよね。
 斧持っちゃってる時点で全然違うじゃん。
 それに装備の雰囲気も、ゴリゴリの戦士だよな。
 弓士の装備ではないと思う。
 もしかして、俺の見たプレイヤーとローズが指さしていたプレイヤーが違うのかな?
 その可能性もあるな。
 その可能性があるぐらい,全然違う人だな。
 ローズはそのまま首をかしげながら言った。

「なんとなくあの人な感じがしない?」

 1ミリもシルさん感がないな。
 シルさんってあんなにゴツい人ではないよな。
 本当に、見ている人を間違えてるのかな。
 そう心配になるぐらいには、シルさんには思えないな。
 あの人であってるのかな?
 見ている人が間違っていないかローズに確認しようとしたタイミングで、コルドがいつもよりも大分声量を落としてローズに言った。

「でも、あの人、斧を持ってるぞ。兄貴は弓使いだぞ」

 そうだよな。
 普通そう思うよな。
 俺は、コルドの話に心の中で激しく同意した。
 そして大きく何度も頷いた。
 コルドの言葉を聞いて、ローズも納得したのか、田鹿にと言う顔をしながら小声で言った。

「確かにそうだったわね」

 ローズは、その後続けて気の抜けた声で言った。

「じゃあ、あの人は違うかぁ」

 斧を持っている人だと言うことを否定していなかったと言うことは、俺が見ていた人とローズが指していた人はあっていたらしい。
 あの人を見て、なんでシルさんだと思ったんだろう。
 弓士という事前情報を完全に忘れていたのかもな。
 それもあるな。
 もしくはふざけているのかもな。
 その可能性もかなりあるな。
 ぼけを拾ってもらえず真顔で返された事を今、不満に思っているのかもしれないな。
 そうだったとしたら申し訳がないな。
 真剣に言っているとしたら目が腐っているのかもしれないな。
 そう思っていると今度は、コルドが指さしながら小声で言った。

「じゃあ、あの人じゃない?」

 コルドが指さした先を見る。
 そこには1人のプレイヤーがいた。
 そのプレイヤーは、きちんと弓を背負っていた。
 さっきのごつい感じの人とは違い、戦士感はなく、まっとうな弓士の雰囲気がある。
 装備も、弓士らしい装備をしている。
 種族が帰られるならエルフを選んでいそうな見た目をしている。
 そこまではよかったのだが、致命的にシルさんではない要素が1つあった。
 俺は、今見ている人を指さしながら、コルドに聞き返した。

「あの人か?」

 コルドは、俺の指先をたどっていくと、その先のプレイヤーを見ながら言った。

「そう、あの人」

 やっぱりあの人なのか。
 弓士的な雰囲気は良いんだが、シルさんではないと決定づける要素が1つある。
 もしかしてその要素をコルドはまだ分かっていないのかな?
 コルドが俺達の中では、一番目が良いんだし、さすがに気づいているはずなんだけどなぁ。
 そう思いながら、俺は一応コルドに理由を聞いた。

「何であの人なの?」

 すると、コルドは即答した。

「雰囲気」

 雰囲気ねぇ。
 まぁ、雰囲気は弓士って感じの雰囲気だなぁ。
 だけどねぇ、雰囲気だけではカバーしきれないぐらいには、シルさんではない要素があるんだよなぁ。
 俺は思わず言葉が、口からこぼれた。

「雰囲気かぁ」

 本当に気づいてないのかな。
 そんなことあり得るのかな?
 俺は、少し気合いを入れて、コルドに聞いた。

「でもあの人って、女じゃない?」

 そう、コルドがあの人シルさんかもしれないと言った人は、明らかに女なのである。
 女のアバターをしているのである。
 確か、APOでは性別の変更ができないようになっていたはずだ。
 ネカマとかができないようになっている。
 だから、現実世界で、コルドの兄貴である、シルさんが、女になることはできないのだ。
 コルドは、今気づいたのかとても驚いていた。
 今気づいたのか。
 鈍いにもほどがあるだろ。
 よく、あの人を男の人だと思ってたな。
 明らかに女の人だろ。
 俺は、軽くあきれていると、驚きが収まっていないコルドが、声色から驚きを漏らしながら言った。

「確かに女だな。兄貴は男だから違うな」

 まさか、コルドが指さした人が女の人だと気づいていなかったとは。
 コルド、恐ろしい子。
 そして、ローズも同じように驚いている。
 ということは、ローズもあの人を男だと思っていたと言うことなのか?
 そんなことあり得るのか?
 そこまで遠くを通った人ではないぞ。
 そんなに見間違うくらい男の人に見える要素があったか?
 ローズは同性なんだから気づいてやれよ。
 心の中でそう思ってしまった。
 ローズもコルドと同じく、驚きが声色から漏れながら言った。

「あ、よく見るとそうね。装備と髪型から男かと思ったわ」

 よく見なくても女の人だろ。
 確かに、中性っぽい感じの髪型と、すらっとした中性っぽい装備だけど、さすがに気づくでしょ。
 こいつらも目はどうなってるんだ?
 俺は心の中でツッコんだ。
 俺は驚きから、入ってくる人からシルさんを探す作業を一時中断して、2人の方に体を向けた。
 これは、シルさんを探している場合じゃないんじゃない?
 そう思うぐらいに、2人があの人を男だと思ったことに関して驚いた。
 だって明らかに、男っぽくない丸みのあるシルエットをしているんだよ。
 もしかして、俺の方がおかしいのかな?
 あの人を初見で女の人だと気づいてしまう俺の方がおかしいのかなと思えてきた。
 こちらが少数派だと、ついそう思ってしまうけど、明らかに女の人だよな。
 俺は、自分に同意を求めた。
 俺は、冷静さを装いながら言った。

「APOって性別の変更はできなかったはずだから、あの人ではないだろうね」

 2人はあぁ確かにと言う顔をした。
 ローズは、驚きが良い感じに収まったのか、納得という顔で言った。

「確かにそうね」

 コルドもうんうんと頷いている。
 2人の中では驚きが引いたみたいだけど、俺の中ではまだ真剣に驚いている。
 そして全力で考察をしている。
 どこをどう見れば、どこをどう見落とせば、あの人を男だと思うのかを頭を高速回転しながら考える。
 こんなこと考えてても無駄だなと気づいたタイミングで、コルドが言った。

「じゃあ、あの人と違うな」

 俺は、体をギルドの入り口の方に向け直して、シルさん探しを再開した。
 未だに軽くさっきの衝撃が残っているけれど、それを気にせずシルさんを探していく。
 もしかしてさっきのもボケだったのかもしれないな。
 コルドのボケにローズが乗っかっていったのかもしれないな。
 それだとしたら、ちゃんと突っ込めなくて申し訳ないな。
 そうか。
 ボケの可能性があるのか。
 その可能性は忘れていたな。
 でも、あのタイミングでコルドがぼけるとは考えにくいんだよなぁ。
 もう終わったことだし、余計なことを考えるのはこれぐらいにしようかな。
 俺は、全力でシルさんを探し始めた。
 シルさんみたいな人いないかなぁ。
 シルさん本人もいないかなぁ。
 いつ来るんだろう?
 メッセージが帰ってきたときぐらいがちょうど町に帰ってきたぐらいと言っていたから、もうそろそろ、ギルドにはいってくるはずなんだけどなぁ。
 もしかしてどこかに寄り道でもしているのかな。
 もしくは、集合場所を間違えているのかな?
 伝え間違いかな? もしくは、集中していてコルドの返信を見ていないのかもな。
 シルさんならどれも十分にあり得るな。
 俺は、なんとなくシルさんっぽい人を見つけて、2人に聞こうとすると、俺より早くシルさんっぽい人を見つけたコルドが指さしながら言った。

「あの人が兄貴じゃないか?」




しおりを挟む
「いいね」「お気に入り登録」「しおり」などもお願いします!感想も書いていただけると嬉しいです。
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...