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西の森探検隊 雑談

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 俺たちは、いつも通り歩きながら雑談をしている。
 敵出てこないかな。
 会話の途中で、コルドが突然言った。

「なぁ、今って、夜だよな!」

 まぁ、そうだな。
 21時前だから、がっつり夜だな。
 それがどうしたんだ?
 夕食後だし、確認取る必要もないぐらい夜だと思うけどな。

「もう21時前ってところだな」

 コルドは、やっぱりそうだよな的な顔をしていった。

「さっき気づいたんだけど、俺たちの視界って、夜にしてはかなり、明るいよな!」

 確かに、夜にしては明るすぎるな。
 昼と全く変わっていない。
 空を見上げれば夜空が見えるのに、前を見れば、木の葉っぱがきちんと緑に見える。
 そして、夜だとは思えないほど遠くまで見えている。
 なんでなんだろう?
 まぁ、ゲームだから、プレイしやすいようになっているってことなのかな?

「確かにそうね。現実の21時前って、街灯とか、部屋の明かりがないと真っ暗だわ」

 でもな、APOだし、何か理屈がある気がするんだよな。
 24時間、誰でもいつでもプレイできるようにっていう、ゲームとしての理由以外に、何らかの理屈があるんじゃないか?
 だって、木の葉っぱ1つ1つをここまで作り込んでいるゲームだぞ。町中を歩いているただのNPCと楽しく雑談ができるようなゲームだぞ。魔物のちょっとした個体差まで作り込んでいるようなゲームだぞ。
 何かしら、世界としての理屈が通っていてもいい気がする。

「何で、こんなに明るいんだろうな?!」

 俺は冗談半分で言った。

「APOには夜がないとかなんじゃないよな?」

「それはないと思うぞ! 『クランの町フラッグ』の監視塔で、太陽が沈んでいく様子を見たじゃないか!」

 確かに、あのとき太陽が沈んでいく様子を見て、町が暗くなったなとは思わなかったな。
 当然のように視界が変わらないから、何か疑うこともせず受け入れていたな。
 振り返ると、あそこで、疑問に思えたよな。
 俺は、コルドの言葉に深く頷きながら言った。

「確かにそうだな」

「ゲームだから、そこに理屈はないんじゃない?」

 考えるのが疲れたのか、ローズはそういう結論を出したみたいだ。
 コルドは、わくわくした目で言った。

「それもあり得ると思うけど、APOなら何か理屈を用意していそうじゃないか?!」

「そうね。APOなら理由を作っていそうね。まぁ、私もそう思うわ」

 俺たちはいつの間にか、全員が森の奥へと向かう足を止めて、楽しく話し込んでいた。
 会話に夢中で、誰も立ち止まったことに気づいていないみたいだ。

「初心者特典とか、プレイヤー特典かもしれないな!」

「どういうことだ?」

 コルドは自分の考えた仮説を楽しそうに説明しだした。

「メニューとかストレージって、プレイヤーだけが使えるツールだろ! それと同じように、ゲームをやりやすくするために、プレイヤーにだけ配布された特典の可能性があるな! もしくは、初心者の加護みたいに、ゲーム開始数日間、スタートダッシュのために付与される能力かもしれないな!」

 確かに、初心者の加護とか、最初に全く説明されていないけど、実装されていることってあるし、それと同じように夜目が特典として実装されているって言うのもあり得るな。

「あり得るな。スタートダッシュ用に付与だった場合、その付与が外れたら大混乱が起きそうだよな」

 夜型のプレイヤーから大ブーイングが来るのは想像に難くない。
 後は、真夜中に急に付与が外れたら、町に戻ってこれず、暗闇でひたすら魔物に攻撃され続けるみたいなことになりかねないな。

「その可能性もあるわね」

「もし付与なら、そうなるかもしれないな!」

 今度は、ローズが何か思いついたのか、自信満々に言った。

「隠しスキル説っていうのはどうかしら」

「どういうことだ?!」

「実は、プレイヤーは、最初から『夜目』スキルが、スキル欄には表示されないけれど手に入れているっていうのはどうかしら」

 はぁ、そうなったら、いろんな物をかくしスキルとして片付けることができるな。
 倒した魔物を解体して素材にしてくれるスキルとか、解体した素材を自動でストレージに入れてくれるスキルとか、隠しスキルというと説明しやすいことがいくつもあるな。
 そして、APOの雰囲気とも合っていて良い案だと思う。

「それは面白いな」

「納得感があるな」

 2人が面白い案を出してきたから、俺も対抗して案を出してみることにした。

「他には、種族的な特性なんじゃないか?」

「それってどういうことだ?!」

 コルドが興味津々という顔で、俺の案に食いついてきた。

「ファンタジー作品とかでよくある、エルフなら魔法が得意で、ドワーフなら鍛冶が得意、みたいな感じで、人間に夜目が利くっていう特性を付与しているんじゃないか?」

「それ、ありそうね」

「もしそうだとすると、今後種族を変えられるイベントとかが出てきそうだよな」

 俺なら獣人かな。
 ケモ耳とかつけてみたいな。
 ゲームじゃなきゃ恥ずかしくてつけないし。

「それは楽しみね。できるなら、エルフとか、魔女とかそういう種族にしてみたいわ」

 魔女かエルフか。
 ローズに似合うんじゃないかな。

「そうなったら、俺は獣人的な種族になってみたいな」

「じゃあ、俺はドワーフかな!」

 そうなるとコルドはドワーフの戦士か。
 ドワーフの戦士と聞くと、斧とかで戦いそうなイメージだな。
 それから少し、種族を変えられるならどんな種族にして、どんなプレイングをするのかでも上がった。
 本題からそれているような気がするけど、楽しいから別に良いんじゃないかな。
 しばらくして、種族の話が落ち着いてきた頃、ローズが言った。

「夜に関することで1つ思いついたんだけど、少し良いかしら?」

「何だ?!」

「実は、魔物も夜は眠っているんじゃない?」

 魔物も眠っている?
 どういうことなんだろう?

「どういうこと?」

「私たちって日が落ちてからこの西の森に入ったじゃない。西の森に入ってからの、魔物との遭遇率が今までより低すぎると思うの。最初は、この森の特性なのかと思っていたんだけど、夜の話になったじゃない。そのときに、もしかしたら夜だから魔物達が寝ていて、狩りのために移動をしていないから、遭遇率が低いんじゃないかって思ったのよ」

 あぁ、確かに森に入ってからの魔物との遭遇率はあまり高くないよな。
 いつもなら雑談しながら向かってきた魔物を適当に倒すスタイルだけど、森に入ってからは、敵を探して動き回っているな。

「一瞬で敵が倒れていたからそういうものかと思っていたけど、鳥が木の枝に留まっていたり、鹿が近づいても動かなかったり、寝ていると思うとより納得できることが何個かあるな!」

 確かにそれもあるな。
 鹿とか、鳥とか、一撃で倒したからあまり違和感がなかったけど、奇襲とはいえ、俺たちが近づいたときにもうちょっと戦闘態勢とかを取ってもよかったよな。

「もしかしたら、夜の方が狩りがしやすいのか?」

「トレインみたいなのをつくってまとめて倒すのはあまり向いていないけど、1対1には向いているんじゃない?」

「今まで、昼夜で魔物の動きが変わるなんて全く気づかなかったな」

 コルドが首をひねりながら言った。

「昨日の夜に戦ったゴブリン達は、普通に動いていたな! たぶん、昨日の夜に北の街道に行ったときのゴブリンは、見張りとかを立てていたんじゃないか?!」

 コルドは言っているうちに、自分で解決できたのか、自問自答みたいな形になった。

「ゴブリンならそれぐらいのこと、しそうだな」

「あくまで仮説だから、確定な訳ではないわ。ただ、この森に木々が多いから敵に視認されにくいだけかもしれないし」

 まぁ、確かに実証されたわけではないからな。
 1匹1匹が強い代わりに、遭遇率が低いだけのマップかもしれないしな。
 仮説がこの森で立証されたとしても、この森だけ、夜に魔物が寝るって言う可能性もあるしな。

「敵のモーションを知るのと一緒に、それもなんとなく調べてみよう!」

「そうだな。面白そうだしやるか」

「良いわね」

 そう言って俺たちは再び歩き出した。
 自然と歩き出したため俺たちが立ち止まって話し込んでいたことを誰も気づいていないんじゃないかな。

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