上 下
106 / 123

西の森探検隊 道中、雑談

しおりを挟む
 ギルドを出て、西の森へと向かいながら俺たちは雑談をしていた。
 俺は、歩きながら、隣を歩く2人に話を振る。

「前に行ったときは、西の森って何が出たっけ?」

 西の森って、前に1回行ったんだよな。
 あのときって何と戦ったっけ?
 2日ぐらい前の話だから、全然覚えてないな。
 確かボコボコにされたんだよな。
 それだけは覚えている。
 コルドが何かを思い出すしぐさをしながら言った

「森には3人で入ってないと思うぞ! 確か、前回は、南西辺りで、狩りをしたな! 南の魔物メインで、たまに森から出てきた奴を狩ったぐらいしか経験はないな! 森から南西に出てきた奴だと、鹿がほとんどで、ちょっとだけ、イノシシも居たな!」

 あれ?
 3人で行ったんじゃなかったっけ?
 ……あ!
 あれは、俺1人で突撃したんだっけ。
 忘れてた、忘れてた。
 3人で西の森に行ったのかと思ってた。
 あぁ、あれは1人の時だったか。
 あぁ、確かに合流前に行ったような気がする。
 俺たちがやったのは南西での狩りか。
 西寄りの草原で狩りをして、森から出てきた魔物をたまに狩ってたんだっけ。
 あぁ、確かにそうだった気がする。
 草原で鹿を囲んだ記憶がなんとなくある。
 ボスとかと戦ったわけではないから、かなり記憶が薄れているな。
 それにしても、よくそこまで詳しく覚えているな、コルド。
 どこで狩りをしたとかを覚えているのもすごいけど、出てきた魔物の種類も覚えているなんてさすがだな。
 コルドの記憶力には驚かされるな。
 ローズも感心した顔をして言った。

「よく覚えているわね」

 すごいよな。
 俺は絶対覚えてられないな。
 俺はあまり記憶に自信がある方じゃないから、コルドの記憶力は素直に尊敬できる。
 コルドは少し自慢げに言った。

「前のことを覚えているのもあるけど、攻略サイトとかも見てるから、ある程度魔物の生息域を覚えているんだよな!」

 そもそも攻略サイトとかに書いてあることを覚えている時点ですごいな。
 俺は、攻略サイトをそもそも使わないけど、使ったとしても大切な情報をきちんと覚えてられる気がしないな。
 えっと、南西に出る魔物は分かったけど、西の森には、どんな魔物がいるんだっけ?
 俺は改めてコルドに聞いた。

「森は3人で入ってなかったんだな。じゃあ、俺たちが今まで行ってた南西じゃなくて、がっつり西の森にはどんな魔物がいるんだ?」

 コルドは軽く思い出す仕草をした後に、言った。

「鹿がメインで、イノシシ系と、鳥系がいるらしいぞ! 後は、熊をちらっと見たっていう情報もあったぞ!」

 メインは、南西に出てくる奴らと変わらないんだな。
 熊か。
 現実だと絶対に勝てないけど、APOでなら倒せそうだな。
 まぁ、熊以外の鹿とか、イノシシ、鳥とかも、現実だと倒せないだろうけど。
 森の中でそいつらと戦うのか。
 鳥が天敵になりそうだな。
 木々の間を飛び回れたら厄介そうだな。
 それにしても、種類が多いな。
 南は、ウサギ系とオオカミ系、北側に至っては、ゴブリン系だけ。
 南北と比べると圧倒的に多いな。
 これはこれで楽しみだな。

「南北より魔物の種類が多いんだな」

「南は、オオカミとウサギ。北に至っては、装備違いのゴブリンしか出ないわ」

 メタいことを考えるなら、南北は初心者用に魔物の種類が制限されているとかなのかな?
 まぁ、ゲームを作ったことなんてないから、どんな意図で南北の魔物の種類が少ないのかなんて分からないけどな。
 まぁ、楽しいから別にどうだっていいけどな。

「ささっと次の町に行かせたいからそういう風になっているのかもな!」

 あぁ、それはあるな。
 東西にも行けるけど、基本的には南北に進んでほしいから、南北の敵を弱くしているとかありそうだな。
 南の草原の先には何もなさそうで、北の街道の先には町があったけど、東西の先それぞれには何があるのかな? それとも何もないのかな?
 それは気になるな。
 南北が弱いって言ったけど、そもそも、初日に突撃したからボコボコにされただけで、そんなに西の森の魔物が強くない説もあるな。
 成長してから全く行ってなかったしな。
 初日にちょっと行ったときに、西は強いというイメージが定着しちゃっただけなのかもな。
 でも、体感だと、鹿の単体より、ゴブリンの単体の方が弱かったと思うんだよな。
 頭の中で、鹿に謎の補正でも入っているのかな?
 それとも、ちゃんとゴブリンより鹿の方が強いのかな?
 ごちゃごちゃ頭間の中で考えていても分からないな。

「それはあり得るな。北のゴブリンの方が、単体だと鹿とかよりも弱かった気がする」

「まぁ、でも群れるとゴブリンの方が圧倒的に強いわね」

 それはそうだな。
 群れたゴブリンは、『ビッグラビット』並に強いからな。
 あの強さは異常だな。
 ゴブリンの強さは乗算なんじゃないかな?

「前回俺が1人で西の森に入ったときは、地形の悪さと敵の強さ、そして自分のレベルがまだまだ低かったせいもあってボコボコにされたな」

 あれは、俺がAPOに慣れてなくて、弱すぎただけなのか。
 それとも、西の森の魔物が強いのかどっちなんだろうな。

「そういえば、オクツは西の森経験者だったわね」

「西の森を満喫する前にボコボコにされたけどな」

「それって、まだ初日だったからだろ?! 今なら逆にボコボコにできるんじゃないか?!」

「そうだといいな」

 本当にそうだといいな。
 そうであってほしいな。
 ローズが少し笑いながら言った。

「さすがに、『ビックボスゴブリン』よりも強い敵は出てこないんじゃない」

 ボスより強い個体が同じ町周辺のフィールドに出てきちゃったら、それがボスじゃん。
 序盤のボスより、終盤の雑魚の方が強いっていうのはあると思うけど、序盤のボスより、序盤の雑魚が強かったらゲームとして成り立たないんじゃないかな?

「北のボスである『ビックボスゴブリン』よりも強い敵が、西の森に出てくるのって意味分からないよな」

 そろそろ西の門が見えてきてもいいんじゃないかな?
 ギルドから出て数分経ったし、そろそろだと思うんだよな。
 ちなみに西の森は、西の門から出て徒歩5分ぐらいの場所にある。

「南北にボスがいたってことは、東西のフィールドにもボスがいるんじゃないか?!」

「確かに、そっちの方が綺麗ね」

 ボスか。
 南が『ビッグラビット』で、北が『ビッグボスゴブリン』。
 東西に出るとなると、同じようにデカい奴だろうな。
 どんな奴がボスになるんだろう?

「森のボスと、山のボスか。居るとしたら、どんなのが出るんだろう?」

「森のボス……熊とかかしら。山のボス……ゴーレムとかかしら」

「そうだったら、面白そうだな」

 俺たちは雑談をしながら、西の門を出た。
 西の門を出てからもまっすぐ西に向かい、西の森を目指す。
 西の森楽しみだな。
 何かこの2日で変わってたりしないかな。
 まぁ、変わっていたとしても、2日前のことをあまり覚えていないから、変わっていない要素も全て新鮮に受け取るだろうけど。

「東西南北にボスがいるとしたら、東西南北の全部のボスを最速で制覇できたら、かっこよくない?!」

「それはかっこいいな。そもそも東西にもボスがいるのか?」

「いるかどうかは分からないけど、とりあえず、西の森で探してみよう!」

「いいぞ」

「楽しそうね。いいわ、やりましょう」

 それからしばらく雑談をしながら進んでいった。
 西の森のボスの想像の話で大変盛り上がった。
 しばらくして、森が見えてきた。
 森の入り口の少し手前で俺たちは一度足を止めた。
 そこでローズが言った。

「これからは、本格的に森に入るからちょっと気を引き締めよう」

「なんか独特の雰囲気があるな!」

「ただの森とは違う雰囲気がするよな」

「どこから敵が出てくるのかしらね」

 町中でおしゃべりをするような時間という意識から、戦闘の時間という意識に切り替えた。
 西の森はどうなっているかな?







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ファーマー生活はじめました!〜ゲーム1おいしい野菜を目指します〜

毎日のお味噌汁
ファンタジー
 農園系ゲームとハウジング系ゲームが好きな主人公がオープンワールドのVRMMOを始めたらどっぷり生産沼にハマっちゃった。  もう!ゲームは動かなくても冒険できるから素晴らしいんですよ?仮想空間でも動かないに越したことはないんです!!そんな主人公の意識低め省エネ生産ライフ。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

処理中です...