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クラン勧誘 説明、時間は考えずに

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 俺は、3人に向けてのクランの説明を始めた。
 俺は、3人の顔を見ながら話し出した。

「何か聞きたいことがあったら、その場ですぐに言ってください」

「「「はーい」」」

 3人は、声をそろえて、生徒のような返事をした。
 ササキさんもこういうノリに乗ってくるんだな。
 少し意外だな。
 まさか、ササキさんが一番ノリノリで手を上げながら言うとは思わなかった。
 俺は少し驚きながら、説明を開始した。

「まず、俺たちのクランの名前は、”『最古の』クラン『ファースト』”です」

 俺は、ここまで言って、一息入れた。
 すると、俺が一息入れたタイミングで、ダイアさんが手をピンと伸ばしながら言った。

「『最古の』って何? 自称?」

 仕草は生徒っぽいのに、口調が完全にダイアさんのまんまだから、少し違和感があるな。
 まぁ、それはそれで面白いからいいか。
 俺は、ダイアさんからの質問に答えた。

「クランに対して『最古の』っていう称号をもらったんです」

 今度は、ササキさんが手を上げず、ただつぶやくようにして言った。

「そんなのあるんだな。β版にあったか?」

 ササキさんのつぶやきに、クジョウ君が返事をした。

「なかったと思います」

「なかったと思うわ」

 へぇ、β版には、クラン用の称号ってなかったんだ。
 もしかしたら見つかってないのかもしれないな。
 その可能性もありそうだな。
 APOならやりかねないな。

「へぇ、β版になかった仕様なんですね」

「まぁ、β版だと、『始まりの町』で、クランを組めたしな」

 ちょっと話が脇にそれすぎたから、俺は軌道修正をしなきゃな。
 3人同時に勧誘しているからと言って、無駄にしゃくを取っていいというわけではないからな。
 3人と話しているのは楽しすぎるから、つい話が長くなってしまうな。
 天野さんの勧誘とか、いろいろやりたいことはあるし、少し、巻きを意識して話そう。
 俺は、頭の片隅に「巻き」の2文字を入れながら、話を本題の説明に戻した。

「説明を再開しますね。メンバーは今のところ、俺と、コルドと、ローズです。ダイアさんとクジョウ君は、2人を知らないと思います。2人は、俺の幼なじみで、コルドが戦士、ローズが魔術師をやってます」

 そこで俺は一度話を区切った。
 俺が話を区切ったタイミングで3人は感想を言った。

「まぁ、そのメンバーだろうなと思ってたぞ」

「幼なじみでやっているんだね」

「一緒にゲームができる幼なじみがいて羨ましいです」

 俺が一区切りしたら、3人が感想言う流れになった気がする。
 まぁ、3人の反応を見ながら話すことができるから、そっちの方が有意義なのかな?
 この流れは、長くなりそうだな。
 かなりコルドとローズを待たせることになりそうだな。
 でも、感想を挟みつつ話すから、説明が長くなっちゃうのは仕方がないよね。
 それに、3人も同時に勧誘をしているんだから、3倍の時間を使っても文句を言われないよね。
 遅いとか言われないよね。
 コルドとローズと合流したときの言い訳を考えながら、俺は次の説明に移った。

「今勧誘しているのは、皆さん、3人と、天野さんという料理人の方、けんけんぱさんという鍛冶士の方、ミヤネさんという細工師の方、後は第2陣で始める俺の妹と、ローズの妹です」

 俺が話を区切ったタイミングで、やっぱり3人が感想を言った。
 もはやお決まりになってきたな。
 俺は次話すことを考えながら、3人の感想を聞いた。

「生産職ばっかだな」

「戦闘職の知り合いがいないので」

「合同で依頼を受けたりしてないのね」

 俺も話に交ざりたいと思ったので、良いタイミングで話に交ざってみた。

「合同でやらなくても、大抵の敵は倒せたので」

「それは頼もしいですね」

「まぁ、もう『ビックボスゴブリン』を倒しているんだしな」

「それなら、今のところ自分たちより強い人たちと組めないわね。それなら納得ね」

 俺が話に混ざった結果、今までの感想タイムの倍ぐらいの時間がかかった。
 正直、もう頭の片隅に入れていた「巻き」の2文字は、頭のどこにも居なかった。
 楽しかったら良いじゃないか。
 いっぱい話したら良いじゃないか。
 コルドもローズも、楽しくいっぱいおしゃべりしているんだろうから、俺が時間を気にしたり、「巻き」を意識したりしなくてもいいんじゃないか?
 そう開き直ったので、俺はこれから3人との会話を余計なことを考えず、全力で楽しみだした

「うちのクランは、ガチの攻略クランではなく、エンジョイクラン。自分たちが最大限楽しむためのクランです。だからといって全く攻略をしないというわけではないです。主軸を自分たちが楽しいことをすることに置いているだけです」

「ガチ勢のクランじゃなくてほっとしました」

「おまえ達らしいな」

「ゲームなんだし、楽しむ方に主軸を置くのは大賛成ね」

 一つ一つを短めに話してテンポよく説明をしていった。
 説明していたら俺が会話に入りづらいから、早く説明を終えてみんなと楽しくおしゃべりすることを考えつつ話をした。

「うちのクランは、総合クランを目指します。戦闘クランや、生産クランみたいな感じに特化はしません。戦闘職から生産職まで幅広い人が居た方が楽しそうなので」

「総合クランか。素材とかを手に入れやすそうだな」

「楽しそうね」

 3人もだんだんと言うことがなくなってきたのか、どんどんテンポが上がっていった。
 まぁ、突っ込みづらいところだしな。

「クランのルールとかは、勧誘が終わって新しく人が入ってから、その人立ち込みで話し合って決めたいと思っています」

「まだそこは決まっていないのね」

「まぁ、作ってから半日も経ってないんだからそんなもんだろ」

 そういえば、このクランをつくってから半日も経っていないのか。
 クランをつくってから、この約半日で、観光したり、拠点を眺めたり、『始まりの町』に帰ってくるなどいろんなことをしたな。
 長い半日だな。
 APOを始めてから、1日がすごく長いんだよな。
 小学校の時並に長いんだよな。
 でも、一瞬で時間が溶けるんだよな。
 これは一体どういうことなのかな?
 この2つが両立することなんてあるのかな?

「ルール決めに僕たちも参加できるんですね」

 俺は最後の説明をした。
 これで最後で合っているよね。
 何か抜けてそうだな。
 まぁ、何が抜けているのか気づいてから追加で説明すれば良いか。
 たぶん説明した後も楽しく雑談をするんだろうから。
 そのときまでに思い出せば良いか。

「後は、クランの加入に関するお話です。クランに入れるときには、必ず私かコルド、ローズに話を通すようにしてください。クランが大きくなっていくことはうれしいのですが、楽しくAPOができるようなメンバーにしたいので。今のところ一般募集はしない方向です。勧誘とか推薦だけでやっていこうと思っています」

 最後だから、長くなっちゃったな。
 まぁ、締めって感じで良いんじゃないかな?
 一言よりも良いと思う。

「3人に話を通せば良いんだな」

「一般募集をしないのね。身内だけの方が、結束力が上がるから好きよ」

「誰かの知り合いの方が安心できますね」

 3人の感想を聞き終わった俺は説明が終わったと3人に伝えた。

「説明は、これぐらいですかね」

 3人は、背筋をピンッと伸ばして、優等生みたいな姿勢で俺の話を聞いていた。
 その姿勢を、説明が終わりだと言った瞬間に崩した。
 良い姿勢って大変だよね。
 姿勢を維持しているだけで疲れるよな。
 おふざけの生徒役ロールプレイでよく頑張ったな。
 俺は普通に感心した。
 あ、そうだ。説明の後にはあれを言わなきゃだよな。
 説明の締めと言ったらこれだよな。

「説明を聞いて、何か聞きたいことはありますか?」

 俺はそう言って、3人を見回した。


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