上 下
99 / 123

勧誘のすすめ

しおりを挟む
 勧誘か。
 3人バラバラで適当に勧誘したら、入った後に、クランに入ってくれた人から、言ってたことと実態が違うとか、それ、俺は聞いてないとか言われるんじゃないかな?
 ある程度、勧誘の仕方を決めておいた方が良いな。
 俺は、立ち上がって今すぐにでも勧誘に行こうとするコルドを呼び止めた。

「ちょっと待って」

 コルドは、1歩目を踏み出した姿勢のまま、顔をこっちに向けていった。

「オクツ、どうしたのよ勧誘に行くんじゃないの?」

 俺は、首をかしげるコルドに向かって、言った。

「勧誘で、どうやって誘うのかをある程度決めておいた方がいいと思うんだ。適当に誘って、誘ったときに行ったことと、俺たちの今後の活動が全然違ったら迷惑をかけるだろ?」

「それはそうね」

「それはそうだな!」

 俺が説明をすると2人は納得してくれた。
 2人とも賛成してくれたから、これで、勧誘の仕方の話し合いができるな。
 俺はウキウキしながら、言った。

「だから、どういうことを誘い文句で言うのか、相手が何か希望を出してきたときどうするのかとかを決めておいた方がいいと思うんだ」

「それなら決めるか!」

 ローズは、メニューウィンドウを眺めながら言った。

「勧誘する時間もあるし、7時15分ぐらいまでには決めたいわね」

 今は、7時ぐらいだから、15分か。
 余計な雑談とかをしなければ、15分で決まると思う。
 確かに、勧誘の時間が遅くなったり、早すぎたりすると相手方の迷惑にあるよな。
 相手方のこともちゃんと考えないとだめだな。
 というか、そもそも、勧誘する人たちは、今ログインしているのかな?
 気になったので、フレンドリストから、誰がログインをしているのかを確認した。
 天野さんと、クジョウ君以外はログインして居るみたいだ。
 多分、しばらくしたら2人もログインしてくるだろう。
 俺は、ウィンドウを見つつ言った。

「15分か。なんとかなると思うぞ」

「じゃあ、話し合いをしよう」

 そうして、勧誘の仕方の話し合いが始まった。
 まぁ、意見を出し合って、認識のすりあわせをするのがメインになりそうだけどな。
 俺はとりあえず第1の議題を放り投げた。

「まず何から話し合う? まぁ、とりあえず、とりあえずで決めた、クランの方針とかは伝えよう」

 俺が話している間に、立っていたコルドはベンチに座り直していた。
 コルドは、元気いっぱいに賛成の意見を言った。

「そうだな! そこまできっちり決めたわけじゃないから、勧誘した人たちが入った後に変わることもあるってことは言っておくべきだな!」

 ローズは、補足というか、付け加えるように言った。

「後は、クランの方針とかで言うと、ガチ攻略系とかではなく、エンジョイ総合系であることを強く強調した方が良いと思うわ」

 思ったよりもスムーズに話し合いが進んでいった。
 俺は、他に思いつかないから、他の人にパスをした。

「この2つは言うとして、クランの申請用紙に書いたようなことで、後は何かあるか?」

 コルドは、悩む仕草をした後に言った。

「後は何かあったかな?!」

 ローズもコルドと同じように悩む仕草をしたあとに言った。

「他はないんじゃないかしら」

 全員がパスをしたことで、この議題は完了した。
 俺は続いて他の議題を投げた。

「じゃあ、他に話し合うことは……あれか。誰か誘いたい人が居たら教えてくれとかはどうだ?」

「知り合いの知り合いを入れていくんだな! 組織が大きくなるのは大変そうだけどその分いろんな人と関われるのが楽しそうだな!」

 珍しくローズがはいはいと挙手をして言った。

「でも、入れる前に一応私たちを通してもらいましょう。その人が何かやらかしても、クランとしての責任問題になっちゃうんだし」

 確かに、俺たちと会わないような人を勧誘されても困るからな。
 ノルマとかを勝手につくられたりしたらたまったもんじゃないからな。
 新しい人を入れるのに消極的にはならないけど、慎重にはなった方が良いな。
 仮にクランのやらかしで、俺が責任を取らされてBANされたら、たまったもんじゃないもんな。
 そこは慎重に行こう。
 APOを長く続けていくためにも人間関係って大切だよな。
 それは、俺たちだけじゃなくて、入ってくれたメンバーとの相性も大切だよな。
 俺は思いついたことを言った。

「後は、今誘っているメンバーについても言っておいた方が良いかな」

「知り合いじゃない人たちもいるだろうけど、この人とは、やりたくないとか、この人がいるなら入るとかもあるかもしれないしな!」

「良いと思うわ」

 2人から賛同を得ることができた。
 だんだん、勧誘の仕方まとまってきたんじゃないかな?
 話し合いの前より言い勧誘ができる気がするな。

「後は何か、決めておくべきことはあるか?」

「勧誘した人が質問をしてきたら、どうすればいいのかを考えましょう」

 質問されたらか。
 どうしたもんかな?
 何でもかんでも共有していたら、他の勧誘にも支障が出るし、なにより1人じゃ何も決められない人のように思われてしまう。
 俺が頭を悩ませている間にコルドが言った。

「どの程度の質問から、3人で共有して決める?!」

 俺はぽつりとつぶやいた。

「クランの方針とか、重大なこと以外は、基本的に個人の判断に任せるでいいんじゃないか?」

「そうだな! 俺たち、もう10数年も一緒に居るんだし、何か重大な感覚の違いはないはずだよな!」

「じゃあ、重大なこと以外は、個人の判断に任せるってことね。個人の判断で、共有しても良いのよね」

 難航すると思った質問への対応があっさりと決まってしまった。
 もうちょっと案を出すのに悩むと思ったんだけどな。
 まぁ、迅速に決まって悪いことはないか。
 俺は気を取り直して次の話題を振った。

「後は、入るか入らないかの答えはその場でもらわなくても良いよな」

「他の知り合いとの兼ね合いとかもあるだろうしな! ぐいぐい行くというよりは、よかったら、来ませんか? ぐらいのテンションで良いと思うぞ!」

「それでいいと思うわ。勧誘する相手も、私たちも、みんなが楽しくやっていけることが大切よね」

 対案が出ない話し合いはかなりスムーズでいいな。
 2人もスムーズに話し合いを終わらせるように何か意識してるみたいだな。
 適度に自己主張をする話し合いは、スムーズで良いなと思いながら、最後の話題を振る。

「勧誘が終わったらどうする?」

「ギルドで、ストレージにある素材たちを依頼で捌いていくってのはどうだ?!」

 素材捌きか。
 俺は換喩する人がいっぱい居るし、また2人に素材捌きで置いて行かれそうだな。
 レノ素材だけがどんどん溜まっちゃいそうだな。
 どうしよう。

「良いと思うわ」

 あ、2人に素材捌きを頼めば良いのか。
 その手があった。
 良いこと思いついたぞ。
 また、2人に借りができちゃうけど、頼んでみるか。
 貸しとか、借りなんて、10数年一緒に居たら大量にあるんだし、今更1つの借りにこだわることもないかな?
 借金とかでもないんだから。

「じゃあ、俺が一番人数を受け持つし、遅くなると思うから、2人に、俺の持っている素材たちを託すわ」

「ある程度の規模の素材のやりとりって、依頼以外でできるんだっけ?!」

「クランの中でなら、大丈夫なはずよ」

「それなら、預かっておくぞ! オクツの分も捌いて現金に換えておくぞ」

 2人ともノリノリでOKをしてくれた。
 これで、金欠から脱することができそうだな。
 お金が入ったら何を買おうかな?
 またガチャを回しに行こうかな。

「おう! 頼んだ」

「じゃあ、勧誘に行きましょう」

 ローズがそう言ったのに合わせて、ローズとコルドは立ち上がった。
 俺は立ち上がった2人を見て言った。

「じゃあ、まずメッセージでアポを取らなきゃな」

 2人は驚いた顔をしていった。

「「あ! そうだった!」」








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

ファーマー生活はじめました!〜ゲーム1おいしい野菜を目指します〜

毎日のお味噌汁
ファンタジー
 農園系ゲームとハウジング系ゲームが好きな主人公がオープンワールドのVRMMOを始めたらどっぷり生産沼にハマっちゃった。  もう!ゲームは動かなくても冒険できるから素晴らしいんですよ?仮想空間でも動かないに越したことはないんです!!そんな主人公の意識低め省エネ生産ライフ。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

EPIC
SF
日本国の戦闘団、護衛隊群、そして戦闘機と飛行場基地。続々異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 大規模な演習の最中に異常現象に巻き込まれ、未知なる世界へと飛ばされてしまった、日本国陸隊の有事官〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟と、各職種混成の約1個中隊。 そこは、剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する世界であった。 そんな世界で手探りでの調査に乗り出した日本国隊。時に異世界の人々と交流し、時に救い、時には脅威となる存在と苛烈な戦いを繰り広げ、潜り抜けて来た。 そんな彼らの元へ、陸隊の戦闘団。海隊の護衛艦船。航空隊の戦闘機から果ては航空基地までもが、続々と転移合流して来る。 そしてそれを狙い図ったかのように、異世界の各地で不穏な動きが見え始める。 果たして日本国隊は、そして異世界はいかなる道をたどるのか。 未知なる地で、日本国隊と、未知なる力が激突する―― 注意事項(1 当お話は第2部となります。ですがここから読み始めても差して支障は無いかと思います、きっと、たぶん、メイビー。 注意事項(2 このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 注意事項(3 部隊単位で続々転移して来る形式の転移物となります。 注意事項(4 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。かなりなんでも有りです。 注意事項(5 小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

処理中です...