Alliance Possibility On-line~ロマンプレイのプレーヤーが多すぎる中で、普通にプレイしてたら最強になっていた~

百々 五十六

文字の大きさ
上 下
95 / 193

『クランの町フラッグ』観光 乗合馬車とログアウト

しおりを挟む
 俺たちは、下りの階段を眺めながら会話をしている。

「時間もないし降りますか……」

 みんな嫌そうな顔をしながら、階段を見つめている。
 まずローズが気持ちを切り替えたのか、声に嫌そうな気持ちが乗らなくなった。

「そうね。結局降りることになるんだしさっさと降りましょう」

 コルドも気合いを入れ直したのか、いつもの元気な声に戻っていた。

「降りるぞ!」

 そこで俺も気持ちを入れ替えた。
 上ったんだから階段は降りなきゃいけないよな。
 嫌がっていても階段を下りなくてよくなるわけではないんだし、ささっと降りるかぁ。
 そう思いながら、2人と話す。

「じゃあ、さっきと同じ順番で降りていくか」

「急ぎすぎて足を踏み外さないようにね」

「転げ降りた方が早そうだけどな!」

 転げ降りるのか。
 痛覚がなければ、やりたかったな。
 痛みと引き換えに使えるショトカみたいなものかな。
 まぁ、このゲームはある程度痛覚があるし、やりたくないな。
 転げ落ちたら、かなり痛そうだよな。

「コルドが、転げ落ちたら、前を歩く俺たち2人も巻き込まれて転げ落ちることになるから、絶対に止めろよ」

「めちゃくちゃ痛そうだから、止めた方が良いと思うわ」

「じゃあ、止めておく!」

 コルドは思いとどまってくれたみたいだ。
 これで、背後の安全は確保できたな。
 じゃあ、早速降りるか。
 話している時間ももったいないしな。
 後20分弱で、やりたいことが何個もあるんだから。

「まぁ、止まって話すのはこれぐらいにして、降りるぞ」

「後は、降りながら話しましょう」

「そうだな! じゃあ行くぞ!」

 俺たちは階段を下っていった。
 階段を下りる途中で、上る人とすれ違うみたいなイベントもなく、ただただ降りていった。
 降りながら雑談をしていたが、階段を下りることにある程度集中していたため、あまり内容は覚えていない。
 多分2人も覚えていないんじゃないかな?
 それぐらい薄い雑談をしていたことは覚えている。
 行きは5分ぐらいで上ったが、降りるのには6分強もかかった。
 ちょっとした差だが、めちゃくちゃ長く感じた。
 俺たちは、階段を降りきって、達成感の中話した。

「はぁ、やっと降りてきたな」

「上にいたときは、また来てもいいかなと思ってたけど、くだりも経験すると、もう良いかなって思うわね」

「そうだな! 階段の上り下りは、景色の良さを超えるぐらいの労力だな!」

 監視塔の表に立っているマルコさんの姿がうっすら見えた。
 まだ交代していないんだ。
 じゃあ、話しかけに行こう。

「あ、表にマルコさんがまだ居るみたいだし、話しかけに行こう」

「そうね、『乗合馬車』の場所とかを聞きに行きましょう」

「行こう!」

 俺たちは監視塔の表に立っているマルコさんに話しかけに行った。
 階段を降りきった俺たちの足取りは、かなり軽くなっていた。

「マルコさん、お勤めご苦労様です」
 マルコさんは、振り向いて俺たちを見た後にっこりとした笑顔で言った。

「あぁ、皆さん降りてきたんですね。展望台の景色はどうでしたか?」

 俺は、展望台で見た景色を思い出しながら、テンション高めに言った。

「絶景でした!」

「めちゃくちゃ良い景色でした!」

「感動しました!」

「それはよかったです。この時間帯だと、夕焼けとかも見れてかなり綺麗な景色ですよね。私も、勤務でたまに展望台に行くんですよ。任務そっちのけで見てしまうときもあるぐらい綺麗な景色ですよね。また来ようと思いましたか?」

 階段がなぁ。
 階段さえどうにかなればなぁ。
 エスカレーターとか。
 俺たちは、言いづらそうにしながら言った。

「良い景色だったんですけど、階段が……」

「景色には感動したんですけど、階段が……」

「労力と、景色が釣り合っていないと言いますか……」

 マルコさんは、やっぱりかという顔をした後、申し訳なさそうにしながら言った。

「あぁ、そうですよね。あの階段きついですよね。そもそも1段1段が大きめできついのに、長いですもんね。まぁ、住民の皆さんに開放しているのに、ここの展望台がいまいち人気がないのは、あの階段のせいだと言われています」

 まぁ、階段のせいだよなぁ。
 それしかないよな。
 もっと良い階段の形もあると思うんだけどなぁ。
 言ってもどうしようもないけどという表情で、ローズが言った。

「あのらせん階段は、壁沿いに上っていくタイプじゃなくて、柱を中心にコンパクトに回るタイプなんですか? 壁沿いタイプならもうちょっと楽しんで上れたと思います」

「つくったときの建築家がそうしたとしか言えないですね。まぁ、今のタイプの利点は場所を取らないという点だけですけどね」

「そうなんですね」

 これ以上この話をしても、しんみりした感じにしかならなさそうだったので、俺は早々に話題を変えた。
 というか、こっちの方が本題だ。

「マルコさん。『乗合馬車』に乗れる場所って分かりますか?」

 マルコさんは、北の大通りを挟んで反対側の建物を指しながら言った

「あぁ、それならこの監視塔から、通りを挟んで反対側の門の脇にありますよ。他にも、東西南北の門の脇にそれぞれありますが、どこも料金やかかる時間、行ける場所にたいした差はありませんよ」

 俺は、教えてもらった建物を指さしながら言った。

「そうなんですね。じゃあ、行ってみます。あそこですよね?」

「そうです。そこです」

「監視塔には、上る気力が湧いたらまた来ようと思います」

「またのお越しをお待ちしています。他の監視塔の展望台から見た町の景色もいいのでそちらもおすすめです。どこの展望台も人はあまり居ないと思いますよ」

「それではじゃあ」

「行ってらっしゃい」

 俺たちは、マルコさんに見送られながら、乗合馬車の乗り場に向かった。
 徒歩一分もしないうちに、教えてもらった乗合馬車の乗り場に着いた。
 俺は、受付のような場所に座っているおっちゃんに話しかけた。

「乗合馬車の乗り場ってここで合っていますか?」

 おっちゃんは少し無愛想に言った。

「あってるよ」

 俺は、続けておっちゃんに聞いた。

「『始まりの町』までの料金っていくらですか?」

 今度は、普通に答えてくれた。
 さっきとの差はなんだろう?

「『始まりの町』なら、5200Gだね」

 足りないな。
 がっつり足りないな。
 俺は、1000Gも持っていないからな。
 誇れるようなことじゃないがな。
 俺は、申し訳なく思いながら、2人に正直に言った。

「あぁ、俺足りないわ」

「じゃあ、今度は俺が貸すぞ! 明日はおごりになるんだしな」

 コルドがそう言ってくれた。
 俺は、全力でコルドに感謝をした。
 ありがてぇ。
 ありがてぇよ。

「ありがとうコルド」

 俺が、感謝をしている間に、ローズがおっちゃんに向かって言った。

「じゃあ、『始まりの町』まで、3人分ください」

 ローズとコルドが、おっちゃんに料金を支払った。
 おっちゃんは、お金を受け取った後、6番と旗のついている馬車を指さしていった。

「はい。まいどあり。そこの6番の馬車に乗ってね」

 あの馬車に乗れば良いのか。
 そういえば、どれぐらいの時間がかかるものなのか聞いていなかったな。
 歩きよりどれぐらい早いものなのかな?

「『始まりの町』までどれぐらいの時間がかかりますか?」

「『始まりの町』行きは、今からだと、5分後に出て、20分後にはつくぞ」

 ということは、15分で着くのか。
 歩きの倍以上のスピードだな。
 これは重宝しそうだな。

「そうなんですね」

「行きの時間に遅れないように乗りな」

「分かりました」

 そう言って、俺たちは、6番の馬車に向かった。
 俺たちは6番の馬車に乗り込むと言った。

「じゃあ、時間だし、ログアウトするか」

「そうね」

「そうだな」

「じゃあ、夕食後、『始まりの町』で」

 馬車の中で、俺たちは、ログアウトした。
 これで、次ログインしたときには、『始まりの町』についているはずだ。


しおりを挟む
「いいね」「お気に入り登録」「しおり」などもお願いします!感想も書いていただけると嬉しいです。
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~

夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。 多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』 一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。 主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!! 小説家になろうからの転載です。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...